ミズガルズハイウェイ'
神癒奈達はアーティファクトである百獣の王冠を永戸のバイクに乗せ、裏路地を爆走し、表通りに出る
そこまでは順調だったが、車の音が聞こえ、背後を見ると、裏路地の荒くれ者達の車やバイクがこちらを追いかけていた。
『なんと言うことでしょう! 今回の参加者のフォクシルとラクネールはイストリアの兵士だったようです! こうなってしまえばルールは無用、これよりエクストラマッチを開催します! 奴らを肉片になるまで捻り潰し、王冠を得た者が勝者になります!』
ヘリで追って来た司会がそう言うと荒くれ者達が叫びながら神癒奈達に迫る
「何か対抗策はないんですか⁉︎」
「バックのケースの中に君たちの装備を格納してある。急いで着替えて戦闘体勢を取るんだ」
言われてパカっとケースを開けばそこには神癒奈の制服と刀とエイルの装甲戦闘装備があった。
すぐに元の服装に着替えて2人は準備を整えると、神癒奈はエイルに乗って、彼女達は装甲車から道路に降りてローラーダッシュで走り出す。
「民間人に被害は出させるなよ!」
「了解しました!」
神癒奈はいつでも刀を振れる構えを取り、エイルは両手に装備された計四連装のマシンガンと前肢のチェーンガンを構える。
直後、それら全てを一斉に撃ち始めた。
「えへへ……圧倒的な火力で敵を倒す時が一番心地いいですね…!」
追ってきている相手は車やバイクばかりだが、エイルの圧倒的弾幕の前では水を含んだティッシュペーパーの如く一瞬でズタズタになった。
しかし荒くれ者達もやられるだけではない、後方からロケットランチャーを持った奴が出てくると、それを神癒奈達にむけて撃った。
「神癒奈さんっ!」
「任せてください!」
くるりとエイルが反転し、神癒奈が刀を構える。次の瞬間、彼女は刀、夜廻桜で飛んできたロケットランチャーの弾頭をバラバラに切り刻んだ。
爆発が起きずに弾頭がごろごろと地面を転がっていき、神癒奈が狐火を飛ばすとそれに着火して爆発し、荒くれ者達の車が一部吹っ飛んだ。
「フィーネ! 援護射撃!」
『了解しました!』
空から見ていたフィアネリスが道路スレスレに低空飛行すると、脚部ケースから爆雷を落とし、敵の車が通りかかったところで起爆させる。
そのまま、エイルと合わせるように光子バルカンで敵の集団を一掃していく。
だが、徐々に、ジリジリと敵の車がこっちの車に近づいてくるのが分かった。
「なんか装甲車に武器はないんすか⁉︎」
「残念ながらこの装甲車に備え付けの銃はない! 各々の能力で対処するんだ!」
「ってことはこの車なんもできないポンコツってわけ⁉︎」
「そういうことだ!」
桐枝とリオーネがそれぞれギャーギャー叫ぶがライも運転で忙しい、そこで、飛んできた弾丸が後ろの窓ガラスにピシリと命中した。
「ひぃいいいっ⁉︎ お慈悲ーーーっ!」
「スピードはこれ以上上がんないの⁉︎」
「無理だな! 最前列の永戸の盾になるのが私達の役目だからだ!」
装甲車に先程から射撃がベコベコと飛んでくる、中には貫通力の高い対装甲弾もあるのか、平気で装甲車の壁を抜いてくる弾もあった。
「ちょっとニンゲン! 泡吹いてないでなんか考えなさいよ!」
「ウチの名前は桐枝っす……」
あわわわと口から泡を吐く桐枝を泣きながらリオーネは引っ叩く。
はっと意識を取り戻した桐枝は転がっていた神癒奈が持ってた折れた普通の刀を手に取った。
「こ、これ持ってヤケクソすればいいんすよね…?」
足腰ガクガクながら桐枝は折れた刀に光を宿す、それを見たリオーネとライは「それだっ!」と叫んだ。
「トンネルを出るぞ!」
トンネルを出ると開けた都市の道路を走る。
「拡散波動砲!」
「ボルテックスキャノン、TYPE3…!」
フィアネリスとエイルが同時に砲撃を行い、車をまた吹き飛ばしていく、だが、その隙間をすり抜けて、敵のバイクが永戸の方へ向かっていった。
「不味い! 永戸先輩!」
「っ!」
バイクに乗った荒くれ者が剣を構えたのを見て、永戸はガンブレード持って振り下ろされた剣を防ぐ。
だが反対からもバイクは来ていた。
「ちぃっ!」
永戸はすぐにブレーキのレバーを引き、後ろに下がる、同時に、すぐそこに見えた別の裏路地の道路に向けてバイクでするりと入っていった。
「永戸!」
『このまま先の道路に出る! そこで落ち合うぞ!』
装甲車の通れない道を、永戸と神癒奈を乗せたエイルがスイスイと通っていく。その後ろを敵のバイクも追いかけてくるが、エイルが射撃を行うことで撃退できていた。
一方通常の道路の方では四課のトラックが大変なことになっていた。フィアネリスが今防いでこそいるが、車の後ろは弾痕でべこべこ、所々穴が空いてる始末だ。
「このままではトラックがやられる…!」
「そ、そうはさせないっす!」
怖気づいた声が聞こえ、フィアネリスが振り返ると、そこには、装甲車のルーフの上に立つ桐枝が見えた。
「…は?」
「空が青いぜ……」
汗ダラダラで立っている桐枝を見てフィアネリスは察してトラックのある位置から避けた。
「おりゃぁあああああ!!!」
桐枝が折れた刀を振り下ろすと、強力な光の刃が地を割き、その先にあるあらゆる敵車両をかち割った。
偶然一般車両が通ってなかった為被害は敵車両だけで済んだが、こんな事をやれば始末書確定の事だろう、桐枝はバラバラになった刀を捨て、頭を押さえながら車の中に戻る。
しかし今ので敵は大量にやれた。迫る車両も少なくなっている。
暫く走ると永戸達が裏路地から出てきた、合わせて装甲車組もそれについていく。
「前!!」
「っ!」
正面を見れば巨大なトレーラーが道を塞いでいた。しかもよりによってそれは一般人のトレーラーだ、巻き込むわけにはいかない。
永戸は慌ててハンドルを切り、別の道を通る、だが、その先にもトレーラーがあった。よく見るとトレーラーのトラックの人には、銃が突きつけられてるのが見えた。
「誘導されてる…! フィーネ、このまま行けば俺たちはどこに辿り着く!」
「都立の公園です!」
「……仕方ない、そこで応戦だ! 課長とコリーが来るまでなんとか持たせるぞ!」
相手の思惑のままにバイクを走らせていき、四課のメンバーは公園にたどり着いた。
公園の中で車両を止めるが、彼らの周りを囲むように荒くれ者達の車が止まった。そこからゾロゾロと人が出てくる。そんな中で永戸達はそれぞれ武器を持って車を降り、戦う体勢を取る。
『さぁ! 後がないぞチャレンジャー達、いや、裏路地に来た異端者達、果たしてこの戦いを生き残るのはどちらか⁉︎』
司会がヘリの中でそう言うと、ドスンっ…と何かが強く足踏む音が聞こえた。遠くからやってきたのは先ほど倒したヤークトベアーだった。
「よくも、俺様をコケにしてくれたな、てめぇらまとめてズタズタにしてやる…!」
あの後再改造が何かされたのか、身体中の筋肉が盛り上がり、熱を帯びた状態で彼は現れ、四課の前に立ち塞がる。
「ここが正念場だ、生き残るぞ!」
『応!』
裏路地の荒くれ者たちに向かって、永戸達は駆け出した。




