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ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第十一章 String of Spider!
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バトルスタート

選手の待合室に来た神癒奈達だが、まず目にしたのはロクな戦闘力を持ち合わせてない者ばかりと言う事だった。力強い人ばかりかと予想してたら全く違っていて、老いた老人から若い子供までいた。


「驚きました、こんな人だらけだなんて…」

「市民権の獲得、それと、アーティファクトの獲得にヤケになった人たちの集まりでしょう。市民権だけならともかく…アーティファクトも関わるとなると、誰でも執着するのが目に浮かびます」


ふむ…と考え込むエイルを不思議そうに神癒奈は見る。


「そんなにそのアーティファクトって凄いんですか?」

「持てば裏路地の王の一角にもなれますし、売れば生涯苦労しない程の金を手にすることが出来ます」


そう言ってると、コロシアム会場の方から歓声が聞こえてきた。


『レディース&ジェントルマン! 熱き戦いを求めるコロシアムへようこそ! 本日もここには沢山の挑戦者があつまってるぜ! 勝てば都市の市民権を得られる究極のデスゲーム、それに加えて、今はなんと! 手に入れた者はあらゆる生物の覇者になれるアーティファクト、百獣の王冠がついてくる! さぁ、亜人の勇者たちよ、このコロシアムで勝ち残るのだ!』


司会のアナウンスと共に、会場への扉が開かれ、スタッフが試合を行う亜人を連れて行く。


「神癒奈さん、わかってると思いますけど戦闘で強力な能力の使用は正体が明かされるので課長から禁止されてます、それを踏まえてもなのですが、この大会では対戦者の殺害も許可されてます、気を抜くがないように」

「はい!」


そうして暫く待つ。そんな中で、何度も選手が会場から行ったり来たりしていたが、選手ごとに勝って喜ぶ者や敗北して怪我をした者、死んだ者が行き来していた。

そして、神癒奈たちの出番がやってくる


「いよいよ私たちの番ですね」

「はい…ここからは四課としてではなく、ファイターとしての姿でいきますよ」


2人は入場ゲートを通り、会場に入る。

会場には大量の観客が押し寄せていて、神癒奈達のことを見ていた。

正面を見れば、自分たちの相手となる選手が歩いてきた。


『さぁ、次の試合は、初の挑戦者、狐の亜人フォクシルとアラクネのラクネールの2人と、このコロシアムで知らぬ者はいないトップファイター、ヤークトベアーの試合だぁ!』


自分たちの相手は不幸にもこのコロシアムの最強の選手らしい、ギザギザの刃が並べられた大剣を持った巨大なクマの亜人が歩いてきた。


「はんっ、俺の相手はこんなチビか? しかも初出場ときた、いい顔してるなぁ、今からその可愛い顔をぐちゃぐちゃにしてやるよ」


ぶんっと大剣が振られ、ヤークトベアーが構える。


「いけーっ! ヤークトベアー! 今日も刺激的な試合を見せてくれー!」

「殺せ! 相手が泣き叫ぶ姿を見せて倒れる姿が見てーんだー!」


観客からは完全に向こうを応援する声が上がっていた。その声にヤークトベアーはニヤリと笑う。

するとここで、神癒奈達の耳に仕込まれた通信機に伝達が入ってきた。


『おはようございますお二方』

「その声、フィアネリスさん?」

『ええ、あなたの忠実な僕、フィアネリスでございます、試合をするにあたって対戦相手のデータがわかりましたので連絡をと』


通信機を通してフィアネリスの声が聞こえる、どうやら会場の天窓から覗いているらしく、全知の力を働かせて対戦者の能力を探っていたようだ。


『相手選手のヤークトベアーについて調べたのですが、全身全てが改造されておりますね、もはやサイボーグかというレベルで、皮膚には斬撃や刺突、エレメント系の攻撃が通らない高耐久合成皮膚が、筋肉には衝撃をものともせず、なおかつ筋力を限界以上に高める筋繊維爆発ステロイドが、神経系は反応速度を高める高パルス人口神経が使われております、どれも裏路地で受けられる改造施術のものです』


データが視覚内に出て共有されるが、そこに映るのは全身のデータが真っ赤に染まったヤークトベアーのデータだった。


『成る程、彼はどうやらこのコロシアムお抱えの選手なようですね、んで、これまで優勝者がいなかったのは彼の存在があるからだと思われます。ここまであからさまなマッチポンプ、初めて見ますね』

「倒す手段はないのですか?」

『あなたの能力なら瞬殺できますよ、ですがそれだと怪しまれますし……正面から倒すしかなさそうですね』

「そんな適当な…」


フィアネリスの話を聞いて、改めて神癒奈はヤークトベアーと向き合う。


「作戦会議は終わりかぁ? じゃあ始めようぜ、心昂る試合をよぉ!」


うおおおおお! と観客の歓声が響き、同時にヤークトベアーが突進してきた。まずは肩慣らしにと神癒奈も正面から突進する。


「捻り潰してやる!」


巨大な大剣が横振りで振られるが、神癒奈はそれを宙に飛び上がることで回避、首筋に刀を突き立てた。

だが、刀は刺さらず、硬い皮膚に弾かれてしまう。神癒奈はすぐさま飛び降りて距離をとった。


「ならばこれは…!」


エイルが蜘蛛の糸であちこちに糸を張り、その糸をスライドしながら飛び込んでロングソードを振り下ろした。

だがこれも弾かれる。鋭い切断も重い質量攻撃も通用しない、分厚い皮膚と筋肉の鎧、これは骨が折れそうだと神癒奈は思った。


「効かねぇなぁ、お前らのへなちょこ攻撃は、次はこっちが行くぜ!」


ヤークトベアーが大剣をかざすと、稲妻が剣に走り会場が光で眩しくなる。そして剣が振り下ろされれば、稲妻が地面を走り、神癒奈達を襲った。


「危ない!」


エイルが神癒奈を抱えて素早く空中に飛んで身を引く。下を見れば地面が帯電していた。引かなければ危なかっただろう


「へっよけたか……お前達が初めてだぜ? 俺の電撃を避けたのは」

『奴は体内の人工神経に流れる電流を過剰に発生させることで、剣や地面を帯電させているようです、ですが、一度使えばリチャージまで時間がかかります』


施術を受ければそんな荒唐無稽なことまでできるのかと神癒奈は思ったが、ここで、電流と聞いて何か思い浮かんだ。


「電流を過剰に……っ! それです!」

『何か突破口が開けましたか?』

「はい! 一か八か、やってみる価値がありそうです!」


電気の流れが止まり、神癒奈達は再び地面に降りて攻撃を開始する。2対1ならばと2人は正面と背中で攻撃を加え続けるが、ダメージは入らない、でもこれでいい、次の雷撃に向かわせられれば。


「じれってぇなぁ!」

「んぐっ⁉︎」


ヤークトベアーが神癒奈を掴み、飛び上がるとそのまま地面に投げつけた。地面に叩きつけられかけるが空中でくるりと回転するとしっかりと地面に着地する。


「てめぇに教えてやるよ、このコロシアムの怖さってやつをよぉ!」


そう言うとヤークトベアーは大剣に稲妻を宿し、帯電させ、神癒奈に向けて真っ直ぐ剣を突き下ろしながら落ちてきた。


「神癒奈さん!」

「今ですっ!」


すると神癒奈も刀をヤークトベアーの方に向けて構え、飛び上がった。2人はそのままぶつかり合うかと思いきや、神癒奈が空中で避け、帯電した大剣に刀を立て、走らせた。


「何⁉︎ 俺の雷撃剣が⁉︎」

「っ!」


地面に落ちたヤークトベアーが、自身の雷が消えたことに気づき、神癒奈の方を見る。

宙を舞う神癒奈の刀からは、先程の雷撃が帯電されていた。


(加速の力で電流の力を最大限に高めて!)


「…獲った!」


神癒奈が天井を蹴ると強力な雷を纏った刀でヤークトベアーの頭部を切り付けた。

瞬間、ヤークトベアーの体内に人工神経でも耐えきれないほどの電流が流れ、彼は電流で痺れ、意識を失う。そのまま鼻から血を垂れ流すと、ズドンと地面に崩れ落ちた。


『これは……な、ななななんと言うことでしょう! 初出場のフォクシル選手、無敵のヤークトベアーを打ち倒したぁ! これは衝撃です! あの無敗のヤークトベアーが小さな狐に倒れるとは!』


司会も、観客も、誰もが驚いた。ここまであからさまなマッチポンプの試合を、打ち砕く選手が現れたのだから。


「へぇ、やるじゃない。能力の使用を直接攻撃ではなく敵の攻撃に対するカウンターで使用するだなんて」


貴賓席のリオーネはそう呟く。面白いものが見れたと微笑んだ。


「すごいです、神癒奈さん」

「えへへ、してやりました」


エイルとハイタッチすると、神癒奈達2人は観客がざわめく中控え室に戻った。

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