究極の二択を前に、俺は……
突然の初恋イベントの乱入。
その事実に俺がひどく動揺していると。
「という訳だから、私の気持ちは本物だ。国民が見守る結婚式で熱いベーゼを交わし、俺の子を産んでくれ!」
心配はいらない、必ず幸せにするよ!
そう言って、王子は俺に向かって両腕を大きく広げてくる。
両手の拘束が解かれて俺的にはちょっと嬉しいけど、コレは何か?
「この胸に飛び込んでこい」的なやつなのか?!
ぇ、無理無理無理!
というか。
(結局俺の希望の光、ものの見事に消えてんじゃん! ちょっとくらい俺の気持ちに配慮して感情の逃げ道用意しといてよ、神!)
隠キャの俺だよ?
メンタルだって弱ミソに決まってんじゃん!
っていうか。
(俺、もしかしなくても今、究極の二択を迫れれてない?)
生理的な拒絶を跳ね除けて『シンデレラ』に忠実にあるべきか。
それとも、例え戻れない可能性があるとしても自分の心に素直になるべきか。
そんな二択に。
前者を選べば、元の世界には戻れるが少なからず俺の心が犠牲になる。
ついでに俺の初キッスも犠牲になる。
そして何より、せっかく芽生えた初恋ともおさらばだ。
後者を選べば、元の世界には戻れない。
俺は一生、周りから女扱いされるという苦行を強いられる事になる。
初恋の彼女の側に居られるけど、女に見えてるなら結局俺の初恋も実らないだろう。
(え、ちょっと待って。この二択、どっちも待遇悪すぎない?)
ひどいもんだ。
どうしてこんな、ハッピーエンドの姿が見えない究極の二択を強いるなんて鬼畜ができる。
心の中で頭を抱えながら、俺は辺りに視線を彷徨わせた。
もしかしたら、無意識の内に誰かに助けを求めたのかもしれない。
視線の先には、自分の胸に俺が飛び込んでくるのを待っているキラキラ笑顔の王子と、憮然とした表情の従者。
おそらく俺を王子の妃にする事で得られる金銭的マージンの皮算用でもしているのだろう、ニヤリ顔の継母。
ただただ驚いた表情の義姉。
そして。
(あれ、何でそんな顔……)
不安そうな表情のオネエサマが、そこには居た。
先ほどの反応があるから、一瞬「俺が王子の妃になったら自分が成れない。それを悲しんでいるのかも」とも思ったが、どうもそんな感じじゃない。
その顔は、俺が継母にドレスを仕上げる様に言われた時のソレと、とてもよく似ていて。
(え、もしかして俺のこと心配してくれてるの?)
そう思えば、何だか胸の痛みとくすぐったさが同時に押し寄せてくる。
しかし不思議な事に、そのどちらもが決して不快ではない。
(……何でそう可愛いかなぁ)
はぁとため息を吐きながら、俺は思う。
そんなの見ちゃったら、俺にはもう選択肢が一つしかないじゃないか。
ええぃ、ままよ!
「……取り敢えず『お友達から』っていう事で、どうでしょう?」
……ゴメンナサイ、日和りました。
ほらね、やっぱり俺にヒロインは無理だったじゃん。




