第二十話 邪気を放つもの
オオクリ山、中腹。
俺達は途中で休憩し、一息ついてから再び山を登ることになった。
「疲れたわね……」
「中々に、ハードだよね、この山、ゲホッゲホッ」
「ぜぇ、はぁ、ひゅー、ひゅー……」
「何じゃ、三人揃って。情けないのう」
一人元気なペグリルを除いて、俺達はかなり疲れていた。
道中には巨大な岩で構成された壁のような道や、道端を普通に歩いているオークなど、様々な障害に阻まれ、中腹に着いた頃にはすっかり疲労が溜まってしまったのだ。
アリサはまだマシなように見えるが、俺とメリアは息も絶え絶えといった具合である。
「何だよあの壁みたいな岩、あり得ん」
「途中で諦めようかと、思ったよ……ぜぇ、ぜぇ」
「や~れやれじゃ。ホレ、行くぞ」
「「ひぇ~」」
俺達は休憩を終え、再び山を登り始める。
それから四時間後。
やっと頂上付近まで到達した俺達は、この高度にポツンと立つ屋敷を発見した。
「こんなところにお屋敷があったなんて……」
「ぜーったい何かあるよ。ね、お兄ちゃん」
「見るからに怪しいね」
パッと見、豪華な洋風建築といった様子の建物だったが、よくよく観察してみると、ところどころがツギハギといった様子である。
邪気を放っている存在がいると言われていた位置もこの辺りであり、この建物の中に何か悪しき者がいる可能性は高い。
俺達はこれまたよく見るとツギハギな門を開き、庭へ侵入する。
すると罠のつもりなのか、地面から現れたのは人型の動く骨、通称「スケルトン」。
「コココ……カカ……」
「【シルヴァスラッシュ】!」
「ハァッ!」
「【ギガロビーム】!」
「コカララ、カラ……」
しかし、それは俺以外の三人によってあっという間に蹴散らされて、あっという間にただの粉々に砕け散った骨になってしまった。
スケルトン達を倒し、いよいよ屋敷の中へ。
そこには何体かの人型トカゲがいたが、これも特に苦戦することなく、ぺグリルが全員殴り飛ばして死体の山を生成して終わった。
流石に伝説の魔物と言うべきか、近接戦闘で彼女を上回る者はそう多くないだろう。
「ふぅ。どれ、先に進もうぞ」
「ええ。ありがとう、ぺグリルちゃん」
「礼には及ばん。仲間と主人のためじゃからな」
ペグリルを先頭に、俺達は屋敷の奥にある広間へ突入する。
広間へ繋がる扉の奥では、一人の魔術師と思しき男が、俺達を待っていたかのように玉座に座ってこちらを見ていた。
「ようこそ、我が屋敷へ。招かれざるお客様」
「外で魔物を放し飼いにしていたみたいですが……あなたは何なんですか?」
「私は『アルミナト』の幹部をやっている者ですよ」
「ある……みなと?」
「人が魔王軍と呼ぶ者達ですよ」
「ああ、魔王軍ってそういう名前なんですね」
「はい。そしてあの魔物達は私の部下です。彼らの気配が突然消えたのでね、あなた方が殺したということは分かっていますよ」
やけに丁寧な口調で喋る、自称、魔王軍の者。
どうせ戦うことにはなるのだろうが、ここは少し喋ってみて、引き出せそうな情報を引き出してみるとしよう。
「だって襲ってくるんですもん」
「はぁ。これだから人間は」
「あなたは人間じゃないんですか?」
「ええ、私は魔物です。インキュバス、という種族はご存知ですか?」
「男サキュバスみたいな……」
「そう、それです。ところで、あなた達は何者ですか?見たところ、冒険者のようですが」
「俺達はこの辺に邪気を放っている存在がいると聞いて、調べに来た冒険者ですよ。その正体は、どうやらあなたみたいですけど」
「そうですか、私の邪気が……これは迂闊でしたね」
「何かするつもりだったんですか?」
「はい。私は今、魔力を溜めている最中なのですよ。この近くにある村……オオクリ村を、我が手中に収めるべく、ビームを放とうと思いまして」
「何でそんなことを?」
「……おそらく敵であろうあなた方に喋るのは気乗りしませんが、良いでしょう。冥土の土産に教えてあげます」
「よろしくお願いします」
「オオクリ村は、お米の生産が盛んだそうですね。そこを私達が抑えることで、主食の一つである米を周囲に行き渡らせないようにして、人間の活力を奪おうかと思いまして」
「結構、地道に攻めるタイプなんですね。魔王軍って言うくらいなので、てっきりところ構わず暴れて人間界を侵略するものだと思ってました」
「いえいえ。私達は、これでも軍隊ですから。野良の魔物達と違って、貴方達の言う『魔王軍』に属する魔物は、そういった戦略的な面も求められるのですよ」
「へー。……でも、俺達はオオクリ村を守る必要があるので……戦わなきゃいけませんね」
「そういうことになりますね。よいしょっと」
そう言ってインキュバスは立ち上がり、玉座に立てかけていた杖を手に取る。
「皆、行くよ。【パワードスーツ】!」
俺は四人分のパワードスーツを作り、パーティ全員でそれを装備する。
「ああ、申し遅れました。私の名前は『ベルディア』。この情報も冥土へのお土産に追加させて頂きます」
「冥土に行くつもりはありませんけど、覚えておきますね!【ランガル】!」
この一言を宣戦布告とし、俺はランガルを生成。
全長18メートルのランガルは、天井を突き破って立ち上がる。
そしてコックピットへ乗り込むと同時に、アリサ、ぺグリルはベルディアの元へ突撃し、メリアは後方で呪文を唱え始めるのであった。




