第十三話 四人パーティ
カルオラ村を出て三日後のこと。
アリサのランクに合わせられ、Aランクパーティとして出発した俺達の元に、何の因縁か、とある出会いが訪れた。
「あれ?ベクタ?」
「フェルドール?何でこんなところに」
偶然にも、元パーティリーダーにして勇者のフェルドールとすれ違ったのだ。
「どうしたの、ベクタ。今の人……知り合いかしら?」
「ああ。俺を前のパーティから追放した張本人」
フェルドールは俺の肩を叩いて、やけに馴れ馴れしく接してくる。
「何をしてるんだい、ベクタ。こんなところで」
俺をクビにして新しい前衛を雇ったなどと言っていたハズだが……何故か今はたった一人でトボトボと力無く歩いている。
一体、何があったのだろうか。
「偶然すれ違っただけだよ。仲間は?どうしたの?」
「それが……パーティからお前を抜いたは良いものの、お前が作ってくれていたパワードスーツを装着した状態に身体が慣れていたせいで、いざ戦闘になったら、思ったように身体が動かなくてね」
「そういえば、愛用してくれてたもんね。俺のパワードスーツ」
「ああ……。オレ達は思っていたよりも、お前のパワードスーツに頼っていたみたいだ」
「はあ」
「皆、ボロボロにやられてしまって……パーティは解散したんだ」
「そりゃあご愁傷様だね」
「ベクタ。君さえ良ければ……オレを、君のパーティに入れてくれないか?」
「え?嫌だけど普通に」
一方的にクビを宣告しておいて、そんな都合の良い話があるものか。
「え?……さっきすれ違った時に見たけど、君は四人パーティだったよね」
「うん」
「じゃあ五人パーティで……」
「いや、別に人数が多いからダメっていう訳じゃないよ」
「だったら何で」
「俺はもう、前のパーティメンバーには見切りをつけたんだよ。君に首を言い渡された時点でね」
「そ、そんな……」
「だから、さよなら」
袖を掴むベクタを振り払い、俺は道の先で待っていてくれているメリア達の元へ向かう。
「……待てよ、ベクタ。オレは絶対に、魔王を倒さなきゃならない……。だから、君を諦める訳にはいかないんだよ!」
「随分と調子の良いことを言うね。クビにしてきたのは、フェルドール。お前なのに」
「パーティに入れてくれないのなら……力づくで従わせるのみだ!」
「やれるもんならやってみろ!【ラン……」
「その必要は無いわ」
剣を構え、こちらへ飛びかかって来るフェルドールの前に立ちはだかるは、アリサ・ヘルフェンハット。
「君は……アリサ・ヘルフェンハットだね。噂は聞いているよ。新進気鋭の剣士だって」
「そう。勇者様にそう思って頂けているのは光栄ね」
「だったら、今すぐそこをどいてくれないかい?オレはベクタに用があるんだよ」
「お断りするわ。ベクタはもう、私達の仲間だから」
アリサはフェルドールの剣を払い除け、構えを取り直す。
「君、ベクタの仲間なら知っていると思うけど、ベクタは近接戦闘が苦手なんだよ。君はそんなベクタを背に、庇いながら戦うことになる。それに、オレは勇者だ。剣の腕でも、純粋な力でも、負ける気はしない。分かったら、さっさと後ろに下がりなよ」
「嫌だと言っているでしょう?お話の通じない人にも、勇者様が務まっているという事実が嘆かわしいわね」
「テメェ……。いいだろう。君がその気なら、オレにだって考えがある。喰らえ!【ゴルドスラッシュ】!」
フェルドールは、構えている剣に黄金色の光を纏い、アリサに突撃する。
「【シルヴァスラッシュ】!」
アリサは「シルヴァスラッシュ」で「ゴルドスラッシュ」を受けるが、やはり鍔迫り合いには押されているようであり、何とか再び剣を払い除け、宙返りで後ろへ身を引いた。
「ほら、やっぱりこうなるんだよ。これが実力差っていうものだ。オレのレベルは9999。レベル3000やそこらの君に、負ける訳が無い。さっきの攻撃だって、手加減してあげてたんだよ」
「実力は確かなようね。でも……貴方には致命的な欠点がある」
「へぇ。聞かせてもらおうじゃん」
「それは……貴方を助けてくれる仲間がいないことよ」
「【ギガロビーム】!」
アリサの啖呵を合図に、後方から太い魔力のビームが放たれる。
おそらくはメリアのものだ。
「うぉ……!」
予想外の攻撃を受け、そのまま近くの木の幹まで吹き飛ばされるフェルドール。
メリアとフェルドールのレベルは7000以上離れているが、不意打ちともなれば、全く意に介さないという訳にもいかなかったようであり、フェルドールは受け身をとった。
「不届者が!喰らえ!」
「がはぁっ!」
そして、ぺグリルの蹴りがフェルドールの腹部に直撃する。
そのままフェルドールは意識を失い、倒れてしまった。
ベクタには弱点があった。
それは、魔術にめっぽう弱いことだ。
勇者として、近接戦闘力は他の追随を許さないほどに強力、それは間違いない。
しかし近接戦闘に夢中になるがあまり、後方からの魔術には防御体勢さえ取ることができず、そのままやられてしまうことも珍しくなかった。
そしてフェルドールにとって、中遠距離を得意とするメリアは天敵とも言える存在。
ステータスに出ない部分における弱さが、如実に出た結果と言えるだろう。
「ありがとう、皆。怪我は無い?」
「だいじょーぶ!」
「ええ、無傷よ!」
「大丈夫じゃ。心配ありがとうな」
「ねえお兄ちゃん。この人にトドメ刺さなくて良いの?」
妹の口から爆弾発言が飛び出した。
どうしちゃったんだ、メリア。
「いや、大丈夫だよ。少なくとも、こいつが目を覚ます頃には、俺達はもう遠くに行ってるハズだし」
「そっかぁ。お兄ちゃんがそう言うなら仕方ないか」
「物騒だなあ」
「お兄ちゃんを傷つけようする奴は、お兄ちゃんが許しても、私が許さないから。次、また同じようなことをしてきたら……今度こそ、トドメを刺させてもらうからね」
「ヤダこの子怖い」
俺が冒険している間に、メリアは悪い意味でもたくましく育ってしまったようなのであった。




