第十二話 妹の元へ
「ただいま!」
「おかえりなさい、ベクタ!無事に帰ってきてくれて何よりよ!」
「大きくなったなぁ~。流石俺の息子だぁ」
家に入ると、両親が出迎えてくれた。
「あら、後ろにいる女の子達は?お友達?」
「うん!俺の新しい仲間!」
「お邪魔しま~す……何だか暖かい雰囲気のお家ね~……」
「人間にしては大きな家じゃのう。田舎じゃから土地が余っておるのか?」
「アリサ、ぺグリル。二人はリビングで待ってて。俺、妹の部屋に行ってくるから」
「分かったわ」
「うむ。久しぶりの再会を楽しんでくるが良いぞ、我が主よ」
玄関を開けてすぐ、俺は走ってメリアの元へ向かう。
アリサとぺグリルも家の中に入れ、とりあえずはリビングで両親と共に待っていてもらうことにした。
「メリア!ただいま!体調は大丈夫か!?」
「おかえり、お兄、ちゃん……ゲホッ、ゲホッ!ごめんね、お出迎え、できなく、て……ゲホッ!」
扉の奥にいたのは、俺に良く似た黒髪黒目の可愛らしい女の子、メリア・グラウス。
メリアの病気は出発前よりもさらに進行しているようであり、まともにベッドから動くことさえできないようだ。
「メリア!俺、見つけたんだよ!エリクサー!」
「エリクサー?エリクサーって、お薬の……?」
「ああ!効果は実証済みだから、飲んで!」
「え……?わ、分かった。お兄ちゃんが、言うなら……間違いない、よね、ゲホッ!」
俺は袋からエリクサーが入った瓶を取り出し、中身をメリアの口に注ぐ。
「……どう?」
何とかこれで治って欲しい。
治らなければいよいよ本当に手詰まりであると、走る緊張に押し潰されそうになりながら待っていた、その時だった。
「ゲホッ、ゲホッ、が、がはあっ!」
「メリア!」
メリアの口から、血の混じった痰が出る。
それと同時に、メリアは見違えたかのように元気を取り戻し、ベッドから立ち上がり、走りながら飛び跳ね始めた。
「……元気がどんどん湧いてくる……!お兄ちゃん!もう咳も出ないよ、すごい……!本当にエリクサー、取ってきてくれたんだね……!」
「よ、良かった……!良かったぁ……!」
全身に込められていた力が抜け、俺はその場で崩れ落ちるように安堵の息を漏らす。
「お兄ちゃん、ありがとう!メリア、お兄ちゃんのおかげで元気になれたよ!また、これで一緒に遊べるねっ!ちゅっ!」
メリアは俺の元へ突っ込んできて、そのまま背中を抱き寄せ、俺の頬にキスをした。
「メリア……!ああ、本当に良かった……」
俺がメリアを抱きしめ返し、頭を撫でていると、両親とアリサ、ペグリルも部屋の前へやってくる。
「すげぇなぁ……。驚いたぞ、まさか本当に治っちまうとは……」
「メリアぁ!良かったわねぇ!お兄ちゃんのおかげよ!」
「この子がベクタの妹さんね。元気になって良かったわ」
「ふふん、ずっと泉を守っていた甲斐があったのう」
「アリサ、ありがとう。一緒に、エリクサー探しに付き合ってくれて!」
「いいのよ、大切な仲間の妹さんに関わることことだもの」
「ペグリルも、ありがとう。エリクサーを持ち帰らせてくれて」
「礼を言われることでは無いぞ、我が主人よ。妾は昔の主人の命令をこなしておっただけじゃ。じゃが、嬉しいものじゃな。こうして妾の仕事が、人の役に立っている所を見るのは」
「父さんと母さんも、ありがとう。メリアのこと、気にかけてくれて」
「当然じゃない!可愛い娘だもの」
「お前もメリアも、大切な俺達の子だ。見捨てる訳無ぇだろぉ?」
「……皆、ありがとう。今日はメリアの復活を祝って……パーティでもしようか」
「さんせーい!お兄ちゃん大好きー!」
「良いわね。私、食材買って来るわね!」
「妾もついて行ってやろう。主人を持つこともじゃが、宴も久しぶりじゃからな」
こうして、俺達は近所の人達も集め、妹の完治を祝うパーティを催した。
自由に身体を動かして笑うメリアの顔は久しぶりに見た。
「ねぇねぇお兄ちゃん!」
「何?」
「動くって……楽しいね!」
「……ああ、そうだね!」
この日は宴が終わるまで、ずっと動き回るメリアに付き合っていた。
体力が落ちているためか、途中で何度もヨロケかけていたが、それでもメリアは何時間も動くことをやめなかった。
その後、俺は久しぶりに自室で眠った。
アリサとぺグリルはリビングに客人用の布団を敷き、そこで眠ったらしい。
そして、一週間後。
これまでの冒険について全てを話した俺達は、そして再び冒険の旅に出る。
「じゃあ、俺達はまた冒険に行ってくるよ」
「行ってらっしゃい。無理はしないのよ!」
「元気でなぁ!またいつでも帰ってこいよ!」
しかし両親に見送られ、家を出ようとしたその時。
「お兄ちゃん、私も一緒に、冒険に行きたい!」
ずっと寝ているものだと思っていたメリアが、すっかり準備を整え、キンモクセイの杖を携えて、一緒に着いて来ようとしていた。
「メリア!?いや、そんなこと言われても……大丈夫?」
「大丈夫!病気で寝てる時に、魔術の勉強してたから!ほら、私のレベル、見て!」
そう言って、メリアは自らのステータスを開示する。
レベルは……2403!?
ここ数年、ずっとベッドで寝ていたとは思えないレベルだ。
「メリア、どこでこんなにレベルを……?」
「ちょっと体調がマシな日は、ずっと魔術のお勉強してたから……そのおかげだと思う!」
「メリアはずっと言ってたのよ。『元気になったらお兄ちゃんと一緒に冒険するんだ』って。そう簡単にやられちゃわないよう、やるからには本気で準備しなさいって言って、魔導書を多めに買い与えたら……すっかり一人前の魔術師になっちゃって」
母さんはそう言っているが、これでは一人前どころの騒ぎではない。
もうすっかり、立派も立派な魔術師である。
「ね、良いでしょ?お願~い……」
「ああ……うん……。ねえ、アリサ。ぺグリル。……良いかな?」
「良いわよ!よろしくね、メリアちゃん!」
「妾はぺグリル。ベクタの飼い犬じゃ。よろしく頼むぞ」
「うんっ!よろしく!アリサさん、ぺグリルちゃん!」
こうして、俺達は新たにメリアを加え、四人で新たなパーティを組み、冒険を始めた。
目的は未定だが、ずっと家から出られなかったメリアのために、このラシア王国を旅してみるのも良いかもしれない。
俺達はまず、王国西部に位置する「メクジラ湖」、及びそれを囲むように建造された街、「メクジラ町」へと向かうことにした。




