ゴーレム使いのさようなら
所はラシア王国、西部。
「ごめんなんだけど……パーティを、抜けて欲しい」
とある洞窟を抜け、冒険者が集う酒場へ戻り言われたのは、この言葉。
今まで、魔王を倒すべく活動してきた四人パーティ。
皆で頑張って、地道な依頼をこなすところからスタートし、一部の実力者しか名乗ることを許されない「Sランク」まで到達した、翌日のことだった。
「……へ?何で?今まで皆で頑張ってきたじゃないか……ここにきて俺を外す意味って……?」
「もう、オレ達に《《パワードスーツ》》も、《《ゴーレム》》も必要無いんだよ。オレ達……もう、強くなったから」
「は……?」
俺はパーティの後衛として、パーティメンバーにパワードスーツを作ったり、得意のゴーレムを製作したりして、戦闘をサポートしていた。
しかし、これではまるで、「自分達は強くなったから、俺のサポートはいらない」と言われているようであった。
「だから、前衛を増やそうと思うんだ。だから、後衛のベクタには、パーティを抜けて欲しくて」
「な、ならさあ、五人でパーティを続ければ……」
「それなんだけど……意味のあるパーティメンバーを残しておくならともかく、もう使わない力を持ってる人を残しておく意味って、あると思う?」
「……な、何だよ、まるで俺が要らないみたいな……」
「そうだよ」
耳を疑うような言葉。
もう俺の力は必要無いから出て行けということだろうか。
事実として、「そうだよ」というリーダー、「フェルドール・グルディア」の言葉には、そういう意味が含まれていた。
「……ひ、酷いじゃないか……。酷いじゃないか!あんまりだ!俺、皆と一緒に魔王を倒して、魔王城に隠されてる魔法の泉からエリクサーを持って……《《メリア》》の元へ帰るって……そのつもりで、今まで頑張ってきたのに!」
この「メリア」というのは、俺の妹だ。
去年から難病にかかり、医者に手は尽くしてもらったものの、万能薬と言われる秘宝、「エリクサー」無しでは治らないと診断された。
そしてエリクサーというのは、決まって人間が簡単には踏破できないと言われる領域、或いは未開と言われているの領域にしか無い。
もっとも、それは先人が生活圏におけるエリクサーが湧き出る泉を漁り尽くしてしまったからなのだが……だからと言って、このままメリアを放っておく訳にもいかない。
だから俺は、地元でも名の知れた冒険者であるフェルドールのパーティに、自らゴーレム魔術の実力を示し、加入したというのに。
ここにきてお払い箱とは、何とも納得し難い話である。
「ごめん。でも、オレ達もオレ達で、本気で魔王を倒したいと思ってるからさ。レベル9999にもなって、『ストーンゴーレム』と『パワードスーツ』しか使えないゴーレム使いはいらないんだ」
「確かにスキルは少ないけど……でも……!」
俺の《《スキル》》、「ストーンゴーレム」は、一般的な成人男性と比較した三倍程度の体積を持つゴーレムを生成する魔術だ。
また「パワードスーツ」は、装着する人間の身体に合わせて生成することで、装着した人間の身体能力を向上させる鎧を作る魔術である。
スキルの数こそ少ないものの、ある時は「ストーンゴーレム」で巨大な魔物とも戦える盾を生み出し、またある時は「パワードスーツ」で、パーティの力を底上げしてきたハズだ。
それでも足りないと言うのだろうか、この男は。
「……今まで、オレ達に付き合ってくれてありがとう。感謝はしてる」
「なら……!」
「でもハッキリ言って、新しい前衛に比べれば、君は弱い。弱い冒険者は、オレ達勇者パーティには要らないんだよ」
「そんな……!」
「だから、ごめん。手切れ金として、今回の依頼で受け取った報酬は全部君にあげるよ。……さようなら、ベクタ」
「そんな、そんな……!こんな金なんてあったって、メリアは助からないのに……!クソッ!クソッ!パワードスーツ無しで戦って、どうなったって知らないよ!」
「ああ。君の知らないところで、オレ達はきっと魔王を倒してみせるさ」
目の前に置かれたのは、金貨が二十枚は入っているであろう布の袋。
しかし、目の前から姿を消してしまったフェルドールは、もう戻ってこない。
もう、妹を助けることはできないのか。
あまりのショックに意識を失ったと思われた、その時であった。
「ベクタ・グラウス……。まだ諦めてはなりませんよ。妹さんの命を、救いたいのでしょう?」
「だ、誰ですか、こんな時に……!」
目を開けると、俺は真っ暗な空間に座り込んでいた。




