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28/120

2-8 第1ラウンド



世界ランク7位のオーストラリア戦。

いきなりの山場だ。


日本のスターティングはこんな感じ。


川村(172)PG

鉢山(203)PF

渡山(206)SF

ホーキンス(208)C/PF

獅子川(183)SG


まさかのスターティング入りである。

ジャクソン監督、奇策に出たな。


緊張の中、ティップオフ。

試合はディフェンスからスタートとなる。

私はオーストラリアのPGとマッチアップした。


うーん。なんだろ。

サイズはあるけど、ウチのPGよりスピードは格下だ。

なんかイケるかも。


隙をみて素早くドリブルをスチール。

そのまま単独速攻でまずはいつものご挨拶だ。


フリースローレーンからのMJダンクを決めた。


アリーナは怒涛の叫びに包まれた。

うん、かっこいいデビューだぜぃ!


その後も攻撃的なディフェンスで相手の攻撃起点を機能不全に追い込む。


苦し紛れの稚拙な攻撃を防ぐのは容易く、NBAコンビを中心に、支配権は日本が握り続けた。


結果は―――まさかの圧勝だった。


日本 121-62 オーストラリア


獅子川 47得点(3p9/10)12AST 11REB


ラインの遥か外から撃ち込む私のスリーが相手のディフェンスを撹乱した。


広がりきったスペースを日本のオフェンスがかき回し、ほぼダブルスコアでの完勝となった。


戦前の予想を覆す完全勝利に、日本は大いに沸いたのだった。


そしてここから破竹の快進撃が始まる。

初戦の快勝に乗る日本は、2戦目も圧勝。


日本 144-48 スウェーデン

獅子川 51得点(3p11/13)10AST 10REB


そのまま勢いにのり、ついには世界ランク3位のドイツも下す大金星をあげた。

これには世界が衝撃を受けた。


日本 101-92 ドイツ

獅子川 56得点(3p 6/7)14AST 12REB


私のスリーを防ごうとボックスワンでマークされるも、ならばとばかりにドライブでディフェンスを置き去りに5対4のシチュエーションで有利に攻撃を繰り返した。


日本の快進撃に世界が驚く。

日本国内はお祭り騒ぎとなり、アリーナは常に超満員、テレビ放送も高視聴を連発したのだった。


―――――――


「ねえかっこよすぎだよ!/シシはヒーローだぞ」


「どんな歓声よりふたりの応援が嬉しいよ」


「聴こえてるの?/聴こえてるのか?」


「当たり前だ。どこで観てるかもすぐわかるぞ。

点を獲ったら必ず指を差してるだろ」


「あれはやっぱりそうなのか!/うれしいなぁ!」


「でもここはロッカールームだからね。みんな着替えられないからそろそろ外に行こうか」


ふたりはキャーと叫んで飛び出していった。


「いつもすみません!」


「仲がいいよね」

「あんな美人みたことないぞ」

「羨ましい」

「高校生のくせに許せんぞ」

「そうだそうだ」

「ユルセナイね!」


そこへ升川さんがやってくる。

「シシ、インタビューだ」


先に宿舎に戻るみんなに挨拶を済ませて廊下に出る。

普通の選手は試合後にコートサイドで行われるインタビューで終わりにするが、私は取材依頼があれば可能な限りそれを受けてもらうようにお願いしている。


シャワーと着替えを済ませてから改めて隣の控室で取材を受ける。

これが最近のいつものパターンとなっている。


それこそが日本代表を応援する本来の私の仕事だと思っているからだ。

もちろん、55歳の元職業がマスコミだということもある。


「お待たせしました!」


似たような話しかできないけれど、求めてくれるなら協力は惜しまない。


今日もたくさんのメディアが待っていてくれた。

ひと通りの質問に答えたあと、囲み取材は終了。

残りは特別な取材を受けることにしている。


今日はなんとACEとアオイのインタビュー企画だった。


「あー、久しぶりだな!」

「「「「?」」」」


机の下で田城社長に足を蹴られる。


やばい、そうだった!

オレいま17歳の獅子川ショウだった。

息子設定だよ。


「ごめんなさい、親父からいつもみなさんのことを聞いてたのでうっかりでした。はじめまして。父がいつもお世話になってます」


「そういうことかー」

「あ、お父さんに言っておいてね! オレたちの写真集をプロデュースしてくれることになってるんだよ」

「そうだ。まだ撮影日も決まってないんだよ」


「お待たせするなんて逆ですよね、すみません。私がこんな感じでかき回しちゃってるんで親父もバタバタで。このあとすぐに伝えておきます」


「え! シシさん来てるの? どこにいるの? 会いたい! アオイ、お父さんのファンなんだよ。もうずっと会えてないんだ!」


「え?」


「コイツわりとガチだよ」 

「いつもシシさんシシさん言ってるもんな」

「なんだっけ、娘になるんだっけ?」  


「違う! お嫁さんだよ」


「へ?」


「アオイ18だろ。何歳差だよ」

「37歳差だよ。トリプルスコアは今年までだよ」

「即答ヤバいだろ」

「ちゃんと数えてるから」

「ね、ヤバいでしょ」

「シシさんには恩があるんだ。一生かけて返すって決めてるからね。娘は嫌だ。妻しかない」


田城社長を見ると腹を抱えて笑っている。

あなた知ってましたね。


「あー、親父は今日は来てません。あの、伝えておきますね。写真集のことは」


「なんだそうなのかあ。残念。ねえ、アオイの気持ちも伝えておいてね。あとアオイのことはママって呼んでいいからね」


飲み物を吹き出した。


「息子のことはなんて呼べばいいのかなあ。ひとつ年下だよね。そもそもキミもシシだからややこしいよね。下の名前も漢字かカタカナの違いしかないしさ。芸名にしたらよかったのに」


それは確かに。

苦し紛れに進めたからそうなっちゃったんだよな。


「そうなんですよね。親父適当なんで」


「まあ、無難にシシくんかショウくんだろうな。よろしくね!」


さすがに田城社長が助け舟を出してくれた。


「そろそろ仕事のトーク始めてくれ。全然使えない話しかしてないぞ」  


ようやく仕事に戻った。

それからはまともな会話になる。


ACEとアオイが試合観戦するのを密着したバラエティーらしい。

試合後の特別対談で締める企画だとのこと。


最後におねだりされて、ユニフォームとリストバンド、ボールにサインをして収録は終わった。


アオイが近づいてきて耳打ちする。


「ねえねえ、ショウくん。あの美人さんは噂の彼女だよね。ママに紹介してよ」


「はい?」


すると呼んでないのにふたりがやってくる。

女神の地獄耳だ。


「ショウの妻の木花です/咲那だ。シシの嫁だ」

「いや、彼女だから」


「木花……咲那さんだね。よろしくね! 結婚したらアオイの娘になるね」


「させないけどね/阻止だ阻止」


「えー、なんでー? お父さんはアオイのだよ」


「私のだ/あげないから」


「あなたはショウくんでしょ! アオイはお父さんと結婚するんだからいいじゃんか」


もうめちゃくちゃだ。

噛み合ってないけどややこしすぎる。


「オレと親父の取り合いとかわけわかんないですから。ほらそろそろ失礼するよ。ACEもアオイもわざわざ応援ありがとうございました! 2次ラウンドもがんばりますね! エイエイ、オー!」


女神を抱えて逃げるように控室を後にしたのだった。

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