2-7 代表入り
応援企画は本気のテストだった。
私は日本代表に入ることになった。
「ようこそシシ!」
「今は背負ってるものが日の丸だからな。勝てるなら誰が活躍してもいいんだよ」
「シシがリーグにきたら容赦しないけどな!」
「そうそう、メシの種だからな! その時はイジメてやるからな!」
みんな底抜けに明るく迎えてくれた。
これがともに日の丸を背負うということか。
私の代表入りはすぐに発表され、翌日はその記者会見となった。
出席は私のほかに連盟から升川理事、ジャクソン監督、鉢山選手、渡山選手だ。
――あの動画がきっかけですか?
「はい、その通りです。急遽合宿に参加してもらい、その実力を見て監督と即決しました」
――あの動画はフェイクじゃないのかという意見もありましたが。
「それくらいインパクトがあったのは事実ですね。でもリアルな獅子川選手のフィジカルはあれ以上でした」
――獅子川さんはタレントです。話題づくりという点もありますか?
「実際、昨日までは応援キャラクターとしての契約をお願いしていましたからね。ですが本物でした。彼は日本の、いや世界のバスケの常識を変えるプレーヤーです」
――監督はどうですか? 代表発表直前の招集、それも現役高校生で現役タレントというのは前代未聞のことですよね。
『私はタレントとしての彼を知りません。シンプルにバスケットマンとしての興味だけで合宿への参加要請をしてもらうように頼み込みました』
――プレーヤーとしての評価は?
『アメージングのひとことにつきます。彼は世界に衝撃を与えるでしょう』
――鉢山さん、渡山さんは?
「本物だよ。とんでもない逸材だ」
「あっち(NBA)でも通用するどころじゃないと思いますよ」
NBAでプレイする日本最強コンビのコメントに会場がざわめく。
――獅子川さん、どうですか?
「いや、リップサービスだと思ってます。ふたりともガタイの割にとても優しいので」
笑いが起きる。
「昨日だけでも学ぶことが多かったです。彼らは本気で日本バスケの未来を考えていました。そのことにとても感銘を受けました。少しでもその役に立てるならとお引き受けしました」
「では午後の練習もありますので会見はこのあたりで。昨日、当初の企画意図で日本代表の合宿に密着したドキュメンタリーを撮影していました。そちらはこのあとノーカットで連盟のサイトで公開することにしました。ご希望の方には全ての素材をお渡しします。このあと私に申し入れください」
こうして会見は終了。
昼休憩を挟んで午後はそのまま公開練習となった。
メディアにほんの少しだけ残っていた疑念はそこで完全に晴れた。
正確無比な3pシュートはラインの遥か遠くから鮮やかにリングを射抜いていく。
跳べば頭どころか軽く胸元までリングに届くほどの高さに舞い上がる。
バスケの専門家こそが逆に目を疑うようなプレーが次々と目の前で繰り広げられる。
素人でもその凄まじさは理解できた。
プロリーグが発足したとて、これまでその競技人口の割にはそこまでの盛り上がりがなかったバスケットボールが、噂のシシの参加で一気に世の中の話題をさらった。
ドキュメンタリーは国営放送で再編されて放送され、その異次元のプレーとともに、代表への合流シーンは日本中に感動を巻き起こした。
私たちは練習を重ねていく。
そして4年に一度のバスケワールドカップが始まった。
―――――――
第1ラウンド、日本はEグループ。
会場は地元沖縄でホーム開催。
なんとしても第2ラウンドへ進みたい。
ドイツ(3位)
フィンランド(20位)
日本(21位)
オーストラリア(7位)
ここから上位2チームが第2ラウンドへ進める。
ぶっちゃけ、日本にとっては死のリーグとも言える組み合わせだ。
日本の初戦はオーストラリア。
ランキング的にはかなりの上位だが世界ランク3位のドイツがいるグループで第2ラウンドへ進むには絶対に倒さなければいけない相手だ。
苦戦は必至だがなんとか食らいつく!
だが、世界を驚かせる日本の快進撃はここから始まるのだった。




