9-⑮ 地脈
地脈センサーの指す方角へ突き進む。
道など無視して壁をぶち破りながら、最短距離で地脈へと辿り着いた。
そこは巨大な地下空間、異世界の鍾乳洞だ。
周りは岩肌になっており、崖には滝が流れていて大きな川に注ぎ込んでいる。
薄暗いが不思議とぼんやり全体が見えている。
「どこにも入り口なんてないよな」
「ないわね/ないな」
「ダンジョンから隔離された場所のようだな」
「攻略ルート自体がガセだねー♪」
「卑怯な奴らでござるな」
つくづくたちの悪いダンジョンだ。
センサーによれば地脈は地下からこのエリアだけ持ち上がったような構造になっているようだ。
神眼で見渡してもここには何もなかった。
つまりこのダンジョンには人工装置はない。
最終決戦は――ツバメ世界だ。
「よし、では戻ってここを閉じるとするか」
私たちはダンジョンコアのあった場所へと戻ることにした。
―――――――
さて懸念はふたつ。
コアを破壊するときにどんなモンスターが出てくるか。
ま、これは心配していない。
一緒にいるのはあのガラだ。そこに木花咲那にクマ吉と神僕たちが加わった。
どんなモンスターでもなんとでもなるだろう。
問題はその後のコアの破壊だ。
前回はひとりだけ異世界に飛ばされた。
なんとなく想像がつくのは私を分断してあわよくば異世界のダンジョンで仕留めようという作戦だった感じだな。
もともとは元の世界にいた邪魔な私を狙ってたわけだしその可能性が高い。
今頃は私が不在となった世界へモンスターたちが侵攻しているのかもしれない。
ダンジョンが閉じたとて異世界との通路であることにかわりはないらしいからな。
でもあっちはツバメ世界のフル装備で備えている。
実際に初撃のスタンピードは瞬殺できていたし。
木花咲那が抜けたとはいえ、代わりに神獣ガルーダが加わった最強ファミリーもいるし、魔狼ちゃん軍団にクマちゃん軍団もいる。
どんなモンスターが来たとしても対処できるはずだ。
不安はない。
敵の本拠地が異世界ではなくツバメ世界であることが確定したからには、私が同じように飛ばされるとしてもそれはツバメ世界に違いない。
よし。やるか。
ガラに目線を送り、祭壇へ近づく。
コアが大きく膨らみ、モンスターが大量に湧き出した。
湧き出したモンスターはベヒモスの群れ。
それも亜種が混ざっているようだ。
「ベヒモスなんて普通は単体のレジェンドクラスだろうに! 群れてんじゃねえよ!」
「ふはは! こうでなくてはな!」
ナックルを打ち鳴らしながらガラは嬉しそうに群れに飛び込んでいく。
いやもうビョーキだろ。
魔法は封印。
花田くんの如意棒を手に私も構えを取る。
「木花、咲那、守りは大丈夫だよな?」
「大丈夫だよショウ/シシ、心配しないで行ってこい」
「クマ吉、クマちゃんたち。木花と咲那を頼んだぞ」
「任されたでごさるよ。行くぞ皆の者たち!」
神僕となったブラッドベアたちが咆哮をあげる。
さていくか。
私は如意棒に雷撃を纏わせる。
「いっけーーーーー!」
一振りでベヒモスを粉砕、余波で周りの数匹も感電死したようだ。
「よし! 雷は使えるな!」
周りのベヒモスを倒しながら後ろを見ると、木花と咲那も防御に徹しながら女神の怒りを放ち、次々とベヒモスを殲滅している。
クマ吉と神僕たちも無双状態だ。
うん、大丈夫だな。
結局、ものの数分でベヒモスたちを撃破した。
ガラは物足りなさそうな顔だな。
ベヒモスの群れで満足しないとかヤバいからな。
宝箱には杖が入っていた。
神眼鑑定すると「波動の杖」とある。
放った魔法を倍の威力に自動増幅するらしい。
すごいな。
「なあ、どうでもいいけど敵の作ったトラップダンジョンなのになんでちゃんとした宝箱が貰えるんだ?」
「ダンジョンには必ずボスモンスターと宝箱をセットされるんだよー♪」
「強い魔物を置けばその分ハイリターンってことだよ/ベヒモスの群れなんて普通は倒せないだろ」
「へえ、いろいろ縛りがあるんだな」
まあどうあれありがたいことだ。
この杖は田城社長にプレゼントだな。
とりあえずコピーしつつその旨のメモをつけてマジックボックスに入れておいた。
「トラップはどこまでできるんだ? いきなり全然別の世界に飛ばされるとかは?」
「それはないよ/同じ世界か、無理しても隣の世界までだ」
「異次元に閉じ込められるなんてのは普通なら完全に詰みだろうけどな」
「シシなら簡単に脱出しちゃうもんね♪」
「とんでもないやつだな」
さていよいよだな。
不測の事態に備えてナビィとクマ吉は強制収納。
女神は抱いて、やむなくガラとは手をつないでおく。
「よし、いいぞガラ」
「おりゃ!」
ダンジョンコアが粉砕される。
と同時に薄暗かった鍾乳洞が明るく変化する。
どうやら今回は強制転移は仕掛けられてなかったようだ。
「よかった。なんのトラップもなかったな」
「残りはツバメ世界だけだから飛ばす意味もないってことだろ」
「抱っこ得だ!/そうだな!」
うーんやはりかわいい。
さっきまでは暗くて分からなかったが、天井からは薄いブルーのつららが幾千もシャンデリアのように振り下がっており、また壁にも一面、さまざまな色の鉱石が光り輝いている。
なんと美しい光景だろう。
とりあえず写メを撮っておいた。
木花咲那も撮っておく。あとでポスターにしよう。
祭壇の奥に扉が出現している。
ツバメ世界への扉だろう。
さあいよいよ最終決戦だ!




