11話 高鳴る胸に
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ルビー達が秋田ダンジョンの最後の攻略を行っている頃、龍希は夏休み明けの始業式に出席していた――
「――今世界はダンジョンというものが出現し大変な事になってしまっています。皆さんくれぐれも安全に気を付けた生活をおくってください。詳しいことはそれぞれ教室に戻ってから担任の先生から説明がありますが――」
長くもなく、かといって短くもない校長先生の話も終わり始業式は終了。それぞれ自分のクラスに戻ってのミーティングとなった。
ボクの通うこの高校は、この街の名前の付いた『緑光高校』という。
部活動が強いとか、進学校であるとかの特徴もない一般的な普通の高校。あえて挙げるとすれば珍しい部活動がちょっと多いことかな?
1~3年生のそれぞれの学年は4クラスまであり、ボクは1年4組に所属している。
「始業式でも言われた通り、この学校の近くにもダンジョンが出現している」
先生のその言葉でクラスがざわつく。
この学校の近くと言えば、緑光ダンジョンのことだと思う。ちょっと前にボクが攻略したダンジョンだ。
先生は特にそれに構うことなく説明を続けていく。
「国の方でもダンジョンが出現した地域についての対策マニュアルみたいなものが緊急で配布されていて、さっき配ったのがそれだ。ただ、突貫で作ったこともあってさすがに完全という訳ではない。ということでうちの学校でもそれを補うようにマニュアルを作ってみた。それが2枚目のプリントだ」
先ほど配布された何枚かのプリントを見比べる。
国が作った方も学校が作った方も言っていることはどちらも『ダンジョンには近づくな』ということだった。
「まあ、それさえ守っておけば絶対安全なんてことは言えないけどな。いざとなったら自分の身を守れるのは自分だけだからな。基本的には危険には近寄らない様にして、自分の身は自分で守ること。いいな?」
そこで一人の生徒がちょっとワクワクしたような様子で立ち上がり、手を挙げて質問をする。
「せんせーい。ダンジョンに民間人が入れるようになるとかって言う噂があるんですけど、何か知ってますかー?」
その話を聞いてそういえばと思い出す。
前に日高さんが民間人にもダンジョンが入れる時が来るとか言っていたなぁ。
「俺からは何とも言えんな。ただ、もしそういう話が出てきたとしても未成年をダンジョンに入れるようなことはないとは思うがな。もちろんうちの学校だけじゃなくて世間的に、な」
先生の返答に質問をした生徒ががっかりとした様子で席に座る。
……真面目に考えれば当然のことだよね。
心のどこかでダンジョンが民間に開放されれば自分も入れるような気がしていたけれど、普通そんな危ないところに行くのって未成年じゃ無理だよね。遊園地なんかのアトラクションとはわけが違うんだもん。
ボクの場合身長の関係もあって乗れなかったアトラクションもあったけどねっ!
一応お母さんたちにはその時が来たらダンジョンに行く許可は貰っているし、坂井さんや日高さんにも入る許可は貰っているしもしかしたら入れるかもしれない。
まあその時はクラスの皆には内緒になると思うけど。
「まあ、とにかく危険なことはするなよ?他に質問のあるやつはいるか?なければ今日はこれで終わりにするぞ?……ないみたいだな。それじゃあ日直。号令」
今日は始業式だけなので授業はない。式が終わってしまえば後は明日からの予定とかが書いてあるプリントを貰って帰るだけ。
教室でのミーティングも終わって徐々に人も帰っていき、教室にいる人の人数もまばらになってくる。
「龍希ぃ~!」
教室に千夏が入ってくる。
千夏はお隣のクラスだけど、夏休み前から特に用事もないときは一緒に帰っている。
千夏が来るまでお喋りに付き合ってもらっていたクラスメイトに別れを告げ、教室から出ていく。
と言っても特にどこかに行くとかの用事もないので真っすぐに家路につく。
「そういえば今日は眼鏡つけてないんだね」
「え?ああ……今日はちょっとね」
「?まあおしゃれで眼鏡を付けるのって結構勇気いるかもしれないしね~」
……そういう訳ではないんだけどね。
それはともかく2人はいつ帰ってくるかなぁ?
そんな何気ない雑談をしていると、いつもの分かれ道に到着する。
ここから家の方向が変わるので千夏を分かれて、家に帰る。
その後は特に何事もなく最近メキメキと腕が上がってきたローズの料理を食べて、明日の準備をして寝る。
翌朝、学校にいく準備をしていると家に電話がかかってきた。
電話の相手は日高さんで、それによるとお願いしていたダンジョン攻略の話が片付いたので今日中にルビーとアインが帰ってくるという知らせだった。
水月や朝陽もそれを聞いて朝から姉妹三人で学校をサボタージュしようとか話していたら、お母さんが笑っているけど笑えない顔で「ずる休みなんて許さん」みたいな威圧感を出してきたので渋々行くことにした。
登校したはいいものの、授業中も「もう帰ってきているかな?」と考えてしまいそわそわして集中できなかった。そんな感じで夏休み明け2日目の学校が終わると、今日はボクのクラスよりも早くミーティングが終わり待っていてくれた千夏に先に帰ることを告げ、ダッシュで家に向かう。
もちろん全力ではないけどね。そうしたらコンクリートの地面何て割れちゃうし、目立ってしょうがないからね。
途中で同じく帰る途中だった水月と朝陽がいたので拾って帰る。
今の私なら二人を抱えての全力疾走だってお手のできるのだ。そのうえで朝陽の足よりも速いって言うんだからスキルの力って言うのは本当に凄いと思う。
家の近くに来ると、家の前に見覚えのある車が止まっているのが見えた。自衛隊の基地とかの移動手段で見かける迷彩柄の小型トラックだ。
はやる気持ちを抑えながら玄関の前で二人を下ろして家の中に入る。すると、リビングの方から複数人が談笑する声が聞こえてくる。
リビングの扉をバンッと開くと、机を囲んでお母さん、日高さん、斎藤さん。そして机の上にはすっごく見覚えのあるピンク色の水まんじゅうとその頭で輝く赤縁の眼鏡がいた。
「……(あら、龍希。久しぶりね、おかえりなさい)」
『おかえりなさいマスター。私達も無事に帰還しましたよ』
「っ……2人ともおかえりなさい!!」
そのまま部屋の中に入ろうとしたらお母さんに手ぐらい洗って来なさいと怒られた。妹達はちゃっかり済ませていてボクと入れ違いに部屋の中に入っていた。
すぐに洗面台に行き手洗いうがいを済ませてリビングに戻る。
するとルビーは朝陽が、アインは水月が確保していた。
アインについては日高さんたちが相談に来る前に家族全員に使用許可を出していたのでボクでなくても使うことが出来る。もちろん全部が全部を使用可能という訳ではないけれど。特に水月は使えるようになって凄く興奮していたからね。
「では龍希さんも来たことですし、今回の遠征の結果の話をさせていただきます」
斎藤さんが話を切り出した。
ルビー達が行ってきたダンジョン、秋田ダンジョンと言うそうだけどそこの攻略は無に完了したらしい。目的の<ダンジョン操作書>も無事に手に入り、今も検証をしているとのこと。
そう報告が終わると、今度は二人を派遣した報酬の話となった。
ボクはこれと言って指定はしていなかったのだけれど、アインがいつの間にか魔石で払って欲しいと言っていたらしい。本人たちだ欲しいならと、ボクも特に反対はしなかったんだけど、そこで斎藤さんが追加の報酬を支払いたいと言ってきた。
何でも、ダンジョン内での二人の活躍が思った以上だったらしく報酬が魔石だけでは申し訳ないとのことだった。これに本人たちは特に希望がないらしくボク達に丸投げ。
お母さんと顔を見合わせてみるもボク達もこれと言って思いつかないし、どこまで要求していいのか分からない。
最終的にお母さんもボクに丸投げしてきて、悩んだ結果――
「ダンジョンに民間人が入れるようになる仕組みができるって話って本当なんですか?」
この質問をすることにした。昨日クラスメイトが先生にしていた質問と、それに対する先生の返答を話す。
すると、まずそういう仕組みができるかについては「本当」であった。前に日高さんが言っていた通り今のその話が進行中らしい。
そして学生が入ることが出来るのかについて。これは多分無理。先生の言っていた通り未成年は入ることが出来ない方向で話が進んでいる。
ただ、ここで待ったをかけたのがボクの存在らしい。
「ボクがなんで……?」
「ほら、かなり特殊な例ではあったけど龍希ちゃんて最速でダンジョン攻略しちゃったでしょう?」
日高さんが言うには、ろくに戦えない成年よりも稀有なスキルを持った人材の方がいいのではないかということらしい。
まだ国民の全員のスキルを把握しているわけではなく、中にはボクみたいに強力なスキルを持ってるかもしれない人がいるかもしれないという考えだ。
「だから、未成年が『探索者』の資格を取るときの基準は通常よりもかなり高く設定してしまおうという話があるのよ」
「……なるほど?」
「まあとにかく上も半年後に来るダンジョンからの魔物の放出に対して優秀な人材は欲しいってことよ。それこそ一人でダンジョンの攻略が出来ちゃうぐらい優秀な人をね」
そう言って視線をボクの方に向けてくる。それに倣って自然とみんなの視線もこっちを向く。「これでいいかな?」と聞いてくる斎藤さんに「ありがとうございます」と返す。
とりあえずボクにも『探索者』っていうのになるチャンスはあるってことでいいんだよね。
ボクが一人で納得していると、斎藤さんは出されていたお茶を一気に飲んで姿勢を正し、改めてボクに正対する。
その雰囲気に自然とボクもお母さんも背筋が伸びる感じがした。
「今日はルビー殿達をお返しに来るだけが用件ではないのです。重ね重ねのお願いになってしまって本当に申し訳ありませんが――」
斎藤さんが続けていった言葉を聞いたボクは胸が「ドクンッ」と高鳴ったのが分かった。もしかしたらボクがここ最近、いや緑光ダンジョンから帰ってきてからずっと待っていた言葉なのかもしれない。
「――『探索者』の活動をしてみてはいただけないでしょうか?」
停滞していた何かが、ようやく動き出したそんな気がした。
いかがでしたでしょうか?
こっちが完結していない現状ので申し訳ありませんが、新作の投稿も始めました!苦手な世界観の克服とこんな話を書いてみたいという欲求を抑えきれなかった結果このようなことになってしまいました……
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