4話 羊の毛って実はべたべたするらしいですよ?
本日もよろしくお願いします!
扉の先は開けた空間だった。
広さは大体学校の教室の2倍ぐらいの広さで、いくらか横に広くなっているようだ。正面を見ると、向う側には扉がもう一つあり恐らくあれが下に続いているんだろう。
そして、この部屋の中央にはこの部屋の主がいた。
「あれは……でっかい羊?」
「……(そうね、今回の相手は羊型の魔物のようね)」
『解析結果でます……あれは綿毛羊という魔物ですね。ボスモンスターのため通常よりも大きくなっているようですが。特徴は高い耐久力と衝撃を吸収してしまう毛、それから常に身にまとっているあの電撃ですね』
「電撃……?」
綿毛羊の大きさは大体入ってきた扉を潜れるか潜れないかぐらいの大きさで、よく見てみると確かに毛の表面というか体中がビリビリしている気がする。
触ったらすごく痺れそう。
『あの電撃は綿毛羊が持つ繊細な毛が関係しています。一本一本がとても細く繊維が細かいため、それが擦れて電気が発生しているようです』
「……なんかすごく戦いづらそうな相手だよね。そもそも触れなくない?」
「……(それは戦い方次第よ。というよりも今回は龍希が上手く力を使えるかどうかによるでしょうけどね)」
「それって――」
スライムちゃんの言ったことの続きを聞こうとすると、綿毛羊に動きがあった。
ようやくこちらの存在に気が付いたのか、視線が完全にこっちにロックオンされている。すると、突然背中の部分の毛が伸びたかと思うとその先端の方が強い光を放つようになっていく。
「あ、あれやばくない!?どうする!?」
『どうやら体中の電気を伸ばした毛の先端に集めているようですね。どんどんエネルギーが上昇しています。直撃したらかなり不味いですね』
「冷静に分析してる場合なの!?やばそうなのは見れば分かるよ!?」
「……(下手によけてあの電撃の余波を食らうよりも防いだほうがよさそうね。二人とも私の後ろに来なさい。急いでね!)」
「う、うん!」
スライムちゃんに言われた通りにすぐにスライムちゃんの後ろに回る。
すると、スライムちゃんの前に大きな水の壁が出現した。しっかりとボクの体全体を隠すぐらいに大きいサイズの水の壁だ。
その構築が終わるのと、綿毛羊が電気を放出してきたのはほぼ同時であった。
水の壁の透明度が高かったので向う側の様子がよく見える。
綿毛羊の放った電気は球体のようになってこちらに迫ってくる。
「スライムちゃん電気に水って――」
「……(大丈夫よ。安心して見てなさい)」
「……っ!!」
電気の球が水の壁に衝突すると、ピカッと強い光を発した。思わず目を背けてしまったが、体への衝撃は来ない。
「……?」
「……(言ったでしょ?大丈夫だって)」
「……どういうこと?」
『スライムちゃんの作った水の壁の水は、不純なものが全く含まれていない純水です。純水は電気を通しません。つまりスライムちゃんが作った純水の壁は電撃を通さなかったわけです』
「へぇ~知らなかったよ。すごいね、スライムちゃん!」
「……(そんなことはいいから早く戦闘準備しなさい!相手は待ってくれないわよ!)」
「りょ、了解っ!」
さっきの攻撃で水の壁は消えてしまっている。綿毛羊が体に纏っていた電気は最初に比べれば弱くなっているが、徐々にその強さも戻ってきている気がする。
『再充填の時間は10秒ほどかかるようですね』
「……(それじゃあよく聞きなさい。龍希が<食の加護>のスキルを使っているときにいつも全身に白いオーラみたいなのを纏っているでしょう?)」
自分の体を見ると、確かに今も白い靄みたいなのを纏っている。
「……(それは体が外とからの衝撃で傷つかないように発動しているものよ。今は無意識で発動しているものだけれど、それを意識的に発動するようにするのよ。そうすれば、電気だろうが高温だろうが低温だろうが攻撃できるようになる)」
「……なるほど?」
「……(はぁ……とりあえずその白いオーラを自分で動かしてみなさい)」
「う、うん。やってみる!」
この白い靄を動かすことをイメージして力を込めてみる。
しかし、ほとんど動く気配がない。ちょこっとだけ全身に纏っている靄が濃くなっている気がするが、凄く遅い。
「ふんぬ~~!!」
「……(最初ならそれぐらいかしらね?そのままのペースでいいから右手のオーラだけを濃くするように意識しなさい。それまでの時間は私が稼ぐから)」
すると、スライムちゃんは私の前に先程と同じ水の壁を展開させると壁の前に出て2本の触手を伸ばし始める。
2本の触手を綿毛羊を挟むようにして左右に展開させると、そこから水の球体を出現させる。
最初は小さかったその水球は徐々に大きさを増していき、綿毛羊を中に閉じ込めるように広がっていく。そして左右の球体がくっつくと完全に水の球体の中に綿毛羊を閉じ込めていた。
「……(水の牢獄ってところかしらね?)」
「すごいっ!スライムちゃんすごいよ、すごいよ!」
「……(はいはい、いいからあなたは自分の方に集中なさい。あれでもいつまでも閉じ込めていられるわけじゃないんだからね?眼鏡ちゃん、あとどれぐらいで破られそう?)」
話している間にも綿毛羊は中から出ようと、電気を放出したり体当たりをしたりを繰り返している。
『そうですね、ざっと1分ぐらいでしょうか』
「……(と、言うことよ。あまり時間はないんだからしっかりしなさい)」
「よし、頑張るからね!」
少しづつ慣れてきたのと、右手にだけを意識しているからか最初よりは濃くなるペースが上がってきている。
集中して靄の推移をみていると、途中から濃くなるのではなく厚さが増すようになってきているのに気が付いた。
「……(それぐらいが今の限界かしらね。まあそれぐらいのオーラがあれば十分かしらね。龍希!そろそろいいわよ!)」
「え……う、うん!」
「……(それじゃあ後はこれまでの戦闘と同じように戦ってみなさい。電撃の影響は受けないないはずよ)」
綿毛羊が水の牢獄を破って出てくる。
閉じ込められたことを怒っているのか、さっきまでよりもボク達に向けてくる視線に敵意が増している気がする。
すると、今度は毛を複数伸ばしてその先端すべてに最初に放ってきた電撃を作っている。
「……(……龍希、ちょっとこっち来なさい)」
「うん?どうしたの?」
スライムちゃんの傍に行くと全身にうっすらと膜が張られる。
「……(それは水の膜よ。それがあれば、一回ならあの電撃を防げるわ。今回は時間がないからオーラを右手だけ強化したけど、全身に纏うのは今後の課題にしましょう。眼鏡ちゃんんも弾道予測だけは手伝ってあげてて。龍希の超直感じゃまだ難しいでしょうから)」
『分かりました。マスターのサポートはお任せください』
「それじゃあ行ってくるね!」
ボク達の前に張ってあった水の壁が解除されるのを確認して綿毛羊に向かて走り出す。
相手も対抗して電撃を複数放ってくる。
『マスター弾道予測が出ました。この予測線にぶつからない様に避けてください!』
視界にそれぞれの電撃に対応した直線が表示される。その直線のラインに入らないように右に左にと動いていく。
「よっほっ!」
『上出来ですマスター。次もしっかり避けてくださいね、次弾きますよ!』
「えっ!?再充填には10秒かかるって言ってなかったっけ!?」
『どうやら強化系のスキルを使用したようですね。先程よりも出力の限界値が上昇しています』
「な、る、ほ、どっ!」
会話している間にも次の電撃を放ってきたが、表示された弾道予測に従って避けていく。
少しづつ接近していき、やっと綿毛羊まで目前のところにやってくる。
「よし、それじゃあ狙うべきところは……そこ!」
超直感が反応したのは右わき腹のあたりだった。
すぐさまそちら側に回り込む。
その時、綿毛羊が全身から電撃を放出した。
「きゃあっ!」
衝撃によって吹き飛ばされる。
なんとか体勢を立て直すと、水の膜が消失していることに気が付く。さっきの電撃を防ぐために使ってしまったようだ。
『マスターご無事ですか!』
「うん、大丈夫。だけどさっきみたいなのがあると、迂闊に近づけないね。どうしよう……」
『……ここはスライムちゃんの協力が必要そうですね。わざわざ近づいていくのも手間なので私の念話の機能を使いましょう。スライムちゃん、応答願います』
『……――繋がってるわよ。さっきの攻撃大丈夫だった?』
「うん、スライムちゃんの水の膜のおかげでなんとか」
『ならよかったわ。それで、ちょっと厄介そうな感じなのね?何か手はあるの?』
『それに関しては私から。あの全方向への電気の放出はどうやら複数回は使えないようですね。それに加え放った後は電撃の出力が一時的に下がるようですね。今は回復してしまっていますが、おそらく5秒は全く電気が使えなくなるようですね』
確かに綿毛羊は、さっきの攻撃を打った後電気が凄く小さくなっていた。
『あと一回あの攻撃をだせば、しばらくは電撃が使えなくなるはずです。ただ、スライムちゃんの水の膜を付けるだけでは電撃は防げても衝撃で吹き飛ばされて5秒の間に間に合いません。そこで、スライムちゃんには水の膜を、マスターには体重の制限の解除をしてもらえれば万事解決です』
「ああ、なるほど。ボクが重くなればいいのか」
今のボクの体重を測ってみても50㎏もないぐらいだろう。病院で測った時は500kg近い体重があったのになぜ今はこんなに軽くなっているのか。
それは<食の加護>の効果である。
ボクが動く分には体への負担という意味では全く問題ないのだが、あんなバカみたいない体重だと周りへの影響が酷いことになるのだ。
例えば、少し走っただけで地面が凹むぐらい。
そこで眼鏡ちゃんが<食の加護>で体重が操作できるということを教えてくれたので、普段はスキルを得る前と同じぐらいの体重にするようにしていたのだ。
『そういえば、体重も制限してたわね。ダンジョンだったら最初から解除しておいても、むしろ攻撃力が上がってよかったかもしれないか』
『そういうことです。という訳で、改めて行ってみましょうか』
「了解っ!まずはスライムちゃんのところに戻った方がいいかな?」
『いいえ、そこにいなさい』
そこでスライムちゃんからの念話がいったん途切れると、向うからすごい勢いで触手が伸びてきた。
ボクの目の前でとまると、水の膜を張って戻っていった。
『これで大丈夫でしょう?』
「うん!ありがとうスライムちゃん!」
『それでは、マスターの体重制限を解除しますよ。一瞬違和感があるでしょうが、すぐに消えますのでそうしたら先程と同じようにやりますよ』
「よしこい!」
言われたように一瞬体に違和感があったがすぐにそれもなくなった。
特に体が重くなったような気はしないが、これで大丈夫なようだ。
そして再び視界に映る弾道予測に従って、電撃を避けながら綿毛羊に近づいていく。
右によけ、左によけ、時にはジャンプして避けたりもした。
やっと綿毛羊の前にたどり着く。
『マスター電撃きます!しっかり踏ん張ってくださいね!』
さっきと同じように右側に回り込むと、再びあの電撃が放たれる。
衝撃がやってきて、吹き飛ばされそうになるがなんとかその場に踏みとどまる。
「よしっ!」
『さすがですマスター!あとは一気にやっちゃってください!』
「任せて!」
右手にオーラが集まっているのを確認しつつ、超直感が反応する場所に狙いを定める。
「おっらぁっ!!」
ズドォォン、と低い音が広間に木霊する。
綿毛羊の動きが完全に止まり、ゆっくりとその体が崩れ落ちる。
光の粒となって消えていくその姿を見てようやく倒したという実感がわいてきた。
『お疲れ様です、マスター。最後の一撃はばっちり綿毛羊の急所を捕らえた攻撃でしたね』
「ふぅ~~何とか倒せたよ。ありがとう眼鏡ちゃん」
光となって完全に消えてしまった綿毛羊とその場に新たに出現した二つの宝箱を眺めながら大きく息を吐いた。
「……(よくやったわね、龍希。現状では最高の結果よ!)」
「うん、スライムちゃんもありがとうね。これで最初の階層は突破だね!」
いつの間にかこっちに来ていたスライムちゃんともねぎらい合う。
全15階層のこのユニークダンジョンで、1つの階層が5階層分にあたるから攻略する階層は実質3階層。
つまり、これであと2階層だ。
『これであとは2階層分ですが、次の階層に行くまでに少し休憩していきましょう。マスターのカロリーエネルギーも底が見え始めています。ここで補給もしていかないさらに難易度の上がる次の階層からは厳しくなるでしょうしね』
「了解ぃーって言っても食べ物なんて持っていないよ?どうするの?」
『お任せください』
眼鏡ちゃんがそう言うと、目の前に魔法陣のようなもんが出現し、その中からカップ麺やカロリーメ〇トなどの栄養補給食料が出現した。
積みあがった食料たちで軽く一山できている。
「……眼鏡ちゃん、これどっから持ってきたの!?」
『以前自衛隊の基地に滞在していた時に分けてもらっていた食料です。こういうこともあろうかと収納しておきました』
「そっか、あとでお礼を言っておかないとね……あれ、あのときってまだボクのスキルについて知らなかった時だよね?なんで食料なんて?」
『最初に私を装着したときにマスターのあらゆるデータは計測していましたので、その時点でスキルなどの能力も知っていました。ですので、今回みたいなことがあるかもしてれないと備えていたのです』
「なるほどね、あの時からもうそんなこと考えてたんだ。さすが眼鏡ちゃんだね」
「……(どうりで基地に居るときにやたら食料をもらっていると思ったわ)
『まあ備えあれば憂いなしと言いますからね』
ということで、ひとまず食料補給をしつつ休憩することになった。
ちょっと休もう!
いかがでしたでしょうか?
戦闘描写を書くのがどうにも苦手で頑張っていきたいところです……
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