5話 スライムちゃんは妖精でした?
本日もよろしくお願いします!
スライムちゃんの出してくるお湯を使ってカップ麺を作って食べたり、固形の栄養補給食を食べたりして消費したカロリーの補給と休憩を行う。
自分でも思った以上にお腹が空いていたのか、食べ始めると一気に食が進みいつの間にか一山ほどもあった食料がなくなってしまっていた。
「ふぅ~味はともかくとして満足満足!眼鏡ちゃん、カロリー量って大丈夫そう?」
『……はい、この量であれば問題ありません。しかし、<食の加護>のスキルは思った以上に燃費が悪いので10%以上の出力を出すと一気にカロリー消費が上がりますのでご注意を。一応まだ食料はありますが、気を付けてくださいね?』
「了解っ!できる限り節約していくよ。それじゃあ、宝箱を開けて次の階層に行こうか。ちょっと時間かかっちゃったしね」
綿毛羊を倒したことで、この部屋には二つの宝箱が出現していた。
一つは黒い金属質な宝箱で、大きさ的にはボクの腰ぐらいの大きさがある。
もう一つは赤い宝箱。前にビックスライムを倒した時にも赤い宝箱が出たけど、それよりもシンプルなデザインになっている気がする。
どちらの大きさも以前緑光ダンジョンで眼鏡ちゃんとか早着替えの指輪とかを手に入れたときに出現したものとほぼ同じ大きさだった気がする。
少し気になったことがあり宝箱周辺、主に綿毛羊が消えた場所のあたりを見回してみる。
でも、目的のものが見当たらない。
「あれ?ボスモンスターってドロップアイテムはないの?」
『いえ、ちゃんとありますよ?ボスモンスターの場合はドロップアイテムは宝箱の中に出現します。ですので、綿毛羊のドロップアイテムは二つの宝箱のどちらかに入っています』
「でも前にビックスライムを倒した時は宝箱の他にスライムゼリーが落ちてたよね?」
『あの時はまだダンジョンのシステムが世界に定着していなかったために起こった一種のバグですね。そもそもダンジョンの発生に人を巻き込んでしまうことが不測の事態ですからね。まあ、気にするほどのことでもありません』
ふむ。とにかくあれは例外だったってことなんだろう。
細かいところを聞いても眼鏡ちゃんなら答えてくれるんだろうけど、どうせ理解できないだろうから確かに気にしてもしょうがない。
「よし!宝箱開けていこうか!……それじゃあ、黒い方から開けていこうかな?」
二個ある宝箱黒い方を先に開けてみる事にする。
もちろん宝箱に鍵がかかっているなんていうことなく、すんなりと開けることができた。
そういえば、宝箱って映画とかで見るとトラップとかが仕掛けられていそうなものだけどそういうのはないのかな?
あとで眼鏡ちゃんに聞いてみよう。
黒い宝箱の中に入っていたのは試験官のような瓶が5本だった。
取り出してみると、空の瓶ではなく中には液体が入っている。見た目は青色で、かき氷のブルーハワイのシロップに近いかもしれない。
あれほど濃い色ではないけれど、薄めたらこんな感じになるんじゃないかな?
「眼鏡ちゃん、鑑定お願い」
『諾です。
鑑定開始……完了。鑑定結果表示します』
鑑定は一瞬で終わると、簡単に鑑定結果が表示される。ボクが見てもどうせ難しいところは分からないから組成とかそういう専門的な情報は映っていない。
「ええっと……ポーション、でいいのかな?回復薬?」
『はい、名称としてはポーションが正しいです。効果としてはそこに書かれている通り回復薬、即効性の高い傷薬です。外傷、内傷に限らず怪我を直すことができます。病気などは無理ですね。また、品質が低いため効果もさほど大きなものではありません。せいぜいかすり傷を治す程度でしょう』
「ふむふむ……ポーションね。それじゃあかすり傷とかだったらこれをかければすぐに治っちゃうってこと?」
『その通りです。以前スライムちゃんの使った回復魔法と同じようなものだとお考え下さい。と言っても効果は比べるべくもありませんが』
「……(そうは言っても、自力での回復手段のない龍希にはちょうどいいわね。それに、魔法だとどうしても魔力を消費することになるからダンジョン探索とかの長期戦には重宝するはずよ)」
『それもそうですね。では私の収納に保管しておきますね』
「よろしく。それじゃあ、残った赤い方も開けていこうかな」
ポーションを宝箱ごと眼鏡ちゃんが閉まってくれる。
残ったのは赤い宝箱。
「そういえばさ、眼鏡ちゃんが入っていたのも赤い宝箱だったよね。そんなに前のことでもないはずなのにちょっと懐かしいや」
言っても、まだあれから1週間も経っていないのだ。普段のボクだったら1週間何てあっという間だ~とか言うんだろうけどね。
もしかしたら眼鏡ちゃんみたいな子との出会いがまたあるんじゃないかと思うとドキドキしてくる。
蓋を開ける。
感触はすごく軽い。誰にでも開けられるようにっていう配慮なのかな?
中に入っていたのは、子羊だった。
いや、正確には羊をデフォルメした感な見た目の羊のぬいぐるみだった。持ち上げてみると、手触りがすごくいい。ずっと抱きしめていたいぐらいだ。
丸い黒い目といい、ふわふわの手触りといい、ぴょこんと額から飛び出た角なんかもかわいい。
「なにこれすっごくかわいいんだけど!?……でもなんで宝箱からぬいぐるみ?」
『鑑定開始します。
鑑定開始……完了。鑑定結果表示します』
――――――――――――――――――――
<羊のぬいぐるみ>
綿毛羊の毛からできており、非常に手触りがよく洗濯などによっても損なわれることがなく丈夫である。魔道具であり、魔力を流すことによって動作する。
流された魔力を変換して綿菓子を生み出すことができる。また、綿毛羊の毛を生成することも可能。
――――――――――――――――――――
「……つまりいつでも綿菓子が食べられるっこと?」
『魔力を流せば流した分だけ食べられますよ。まあ、ウールを作ることも可能なんですが……あまり興味がないようですね』
「いやぁ~ウール何てあっても使わないし?服で出てくるならまだしも、糸のままで出されてもね?」
「……(ちょっと魔力流してみてもいいかしら?)」
「うんっ!やってみて、やってみてっ!」
「……(それじゃあ……)」
スライムちゃんんがぬいぐるみに触れる。
すると、ぬいぐるみがうっすらと青く光りだす。
そしてその光が口元の集まっていくと、さっきまでは閉じていた口がぱかっと開きもくもくっと綿菓子を吐き出し始めた。
「うっわ!?なにこれ!?ビジュアルがひどい……」
『まあ分かってはいましたが、実際に見てみるとなかなかにシュールですね』
「……(……私もこんな感じとは思わなかったわ)」
とりあえず手で受け止めているが、どんどんあふれてくる。
「スライムちゃん、ストップストップ!そろそろ止めて!」
「……(はいはいっと)」
出てきた綿菓子は光った時と同じうっすらと青みがかっている。
ちぎって一口食べる。
……ソーダ味だ。
『どうやら流れた魔力によって味が変わるようです。スライムちゃんの場合だとソーダ味だったみたいですね……これは、なかなか面白いです』
「つまりいろんな人に魔力を流してもらえばその都度違う味が楽しめると……確かに面白い!」
眼鏡ちゃんの話を聞きながらも綿菓子を食べ切ってしまう。
普通に美味しかった。縁日とかで食べたのよりは断然美味しい気がする。何というか、甘すぎないというかソーダっぽくすっきりとした味わいだ。
『どうやら綿毛羊のレアドロップのようですね。ボスモンスターだったので性能なんかも段違いのようですが。まあ、マスターにはピッタリのアイテムですね。スライムちゃん、流した魔力はどれぐらいでしたか?』
「……(そうね……一番簡単な魔法一回分も使っていないから大した量ではないわよ)」
『燃費はいいようですね。それではこれも収納しておきましょう』
「ええっ、もうちょっと食べちゃダメ?」
『マスターが食べ始めたらきりがないでしょう?それにスライムちゃんの魔力がもったいないです。ほら、そんなこと言ってないで次の階層に行きますよ!』
「……(地上に戻ってからのお楽しみね。行くわよ)」
「うぅ、分かったよ」
しぶしぶ綿菓子を断念し、入ってきたのとは逆側にある次の階層に続いているであろう扉の前にやってくる。
扉を開けてみると、光が漏れてくる。
中には階段はなく、光っている魔法陣が二つあるだけだった。
緑色に光っている魔法陣と、黄色く光っている光っている魔法陣の二つだ。
「あれ?階段じゃないんだ……」
『緑光ダンジョンから帰ってくるの時にマスターも使いましたよね?あれと同じものです。勘違いしていらっしゃるようですが、ダンジョンの階層間の移動は基本的にこのような転移魔法陣が使用されます。むしろマスターの体験したスロープのようなものが例外なのです』
「そうだったんだ。てっきり階段があるのかと思ってたんだけど、全然違ったんだね。それで、どっちに入ればいいの?」
『緑色の方に入ればこのまま外に出ることができます。黄色い方に入れば次の階層に。出口は緑色ってかんじですね。どうしますか?このまま帰ることもできますよ?』
そういわれるとちょっと帰りたくなるから不思議だ。
ちゃんと攻略していこうと思っていたのに、いざ出口が目の前にあるとその誘惑に負けそうになる。
……でも――
「うん、やっぱり次に行くよ」
『……そうですか。それでは行きましょう』
「……(あと2階層ね。とっとと終わらせて帰るわよ、龍希!)」
「うんっ、そうだね!」
三人で黄色い方の魔法陣に入る。
すると、何回か経験したように一瞬で視界が切り替わる。
気が付いた時にはさっきまでの魔法陣が光る小部屋ではなく、森林っぽい感じ景色が目前に広がっていた。
さっきの階層よりも強い木々の匂いとを感じて一見森林浴ができそうな感じの森ではあるのだが、どういう訳かそういった気が一切しない。
きっと、魔物という自分に害を加えてくる相手が潜んでいるということが本能的に分かっているんだろう。これも超直感の効果なのかな?
そして、さっき気付いたのだがダンジョンに入ってから一切の風を感じない。いくら個々の風景が開けていて外の景色に見ようともここがダンジョンという閉鎖された空間であることは間違いないようだ。
超直感をスキルを通じてあっちこっちからボク達を窺っている気配を感じる。
その中に今にも襲ってきそうな気配が一つ。
「スライムちゃん、眼鏡ちゃん。さっきからこっちに凄い敵意をぶつけてるのがいるよね?」
「……(いるわね……よっぽど好戦的なのかしら)」
『距離は2時の方向に100mほどです……動きましたね。真っすぐこっちに向かってきています』
「……うん、何とか掴めてるよ。ちょっと強そうだね出力上げないといけなさそうかな?」
「……(まって龍希。こいつの相手は私にさせて頂戴。)」
「えっ……うん、いいけど……?」
「……(ありがとう。念のため警戒はしておいてね)」
超直感によって何となく気配が近づいてきているのが分かるので構える。
まだ……まだ……来る!
前方の茂みを掻き分けて現れたのは熊だった。
立ち上がった姿はボクの倍以上の大きさで、視線は完全にこっちにロックオンされていて足元にいるスライムちゃんのことなんて気にも留めていない。
「スライムちゃんっ!」
「……(大丈夫よ……ほら、あなたの相手はこっちよっ!)」
スライムちゃんはその場で勢い良く飛び上がると、熊の顎に強烈なアッパー?を喰らわせた。
その一撃によって熊は大きく仰け反る。
しかし、すぐに体勢を立て直すとスライムちゃんに鋭い爪を振り下ろす。
スライムちゃんはバックステップをその攻撃を避けると、その勢いを利用してボクのいる方まで後退してくる。
勢い止まらず爪が地面に叩きつけらると、地面に亀裂が入る。その衝撃波がこちらまでやって毛先を揺らす。
「……(動きも、攻撃のスピードも対して速くない。ただ、攻撃力はぴかいちね。体勢を立て直すのが早かったから、耐久力は高そう……うん、大体の特性は大丈夫そうね。眼鏡ちゃん、あいつの解析済んだ?)」
『済んでますよ。あれはバーサークベアですね。ひたすらに凶暴で、一度敵と判断したらどこまでも追ってくる面倒な相手です。特殊な能力は特にないですが、瀕死の状態になった時一定時間全能力が引き上げられるようです。そこは注意してください』
「……(了解。それじゃあ、ちゃちゃっと片付けてくるわね)」
スライムちゃんと眼鏡ちゃんはあっという間にやり取りを済ますと、バーサクベアの前に戻っていく。5秒も掛かっていないんじゃないかな?
「……二人とも凄いね。何というか、すっごくパートナーって感じがしたよ」
『ある種の役割分担ですね。スライムちゃんは実際に戦って敵のスペックを測り、私が鑑定などの機能を用いて敵の能力を解析して情報の補足をしていく感じですね。敵の能力が分かってしまえば攻略の難易度はぐっと下がりますからね』
「はぁ~なるほどね……あ、終わりそう」
戻っていったスライムちゃんは、まずバーサークベアの足元の地面に向かって水球を射出した。
水球は足元にぶつかった瞬間に凍り付く。
動きを封じられたバーサークベアは、すぐさま足の拘束を解こうと氷に向かって爪を振り下ろす。
そして足元の氷を割るために前傾姿勢になったバーサークベアの上に飛び上がったスライムちゃんは水で槍を作ると、それを後頭部めがけて打ち出す。
それはあっという間にバーサクベアの頭を貫くき、絶命させた。
スライムちゃんは一分とかからずにあのでっかい熊の魔物を倒してしまったのだった。
「お疲れ様スライムちゃん!すんごく凄かったよっ!」
『瀕死時の強化を発動させないように速攻で決着をつけましたか。さすがですね』
「……(暴れさせても面倒だったから。でもまだ私の力は通用するようね)」
『スライムちゃんは少々、いえかなり自分の評価が低いようですね。たしかにスライムという魔物はダンジョンの魔物でいうと1~5階層に出現する弱い魔物ですがそれは通常のスライムの時です。スライムちゃんの場合はすでに特殊な進化をしていますので、強さはその範疇にとどまりません』
「……(まあ力量差ぐらい分かっているつもりだったけど、それでもね。確認はしておきたかったのよ。もともとスライムは弱い魔物だから)」
「進化って、スライムちゃんの色が青からピンク色に変わったこと?というか進化って何?」
『その質問には歩きながら答えましょう。マスター、レンズに次の階層までの最短ルートを表示しますので、その通りに進んでくださいね』
「うん、了解」
レンズに表示される案内は熊が来たのとは逆側を指している。方向的には10時の方向かな?
その案内に従って進んでいく。
『先程の話の続きになりますが、魔物には進化という概念があります。まあ簡単に言いますと、芋虫が蝶になる過程が一瞬で終わるようなものです。ある意味変態とも言えるかもしれませんね』
「……うんうん、なんとなく想像がつくよ」
『進化について分かったところでスライムちゃんの進化についてです。今のスライムちゃんの種族は正確に言えばスライムではなくフェアリースライムとなっています』
「フェアリー……妖精?」
「……(妖精なんて恥ずかしいわね。私は妖精なんて柄じゃないのに)」
「あれ、照れてるの?スライムちゃん可愛いんだから、似合ってないことなんてないよ?フェアリーちゃんて呼ぼうかなっ?」
「……(お願いだから勘弁して頂戴……)
『まあスライムちゃんの可愛い部分が分かったところで、このフェアリースライムという種族はなかなかに希少な種族でスライムからの進化で一番難易度が高い進化先です。その分得ることができる能力は破格の物となります』
「……(と言ってもちょっと魔法特化になっただけよ?)」
『言ったでしょう?スライムちゃんは自己評価が低い、と。フェアリースライムはたった一つの魔法にしか適正を持ちません。しかし、その適正の魔法においては無類の強さを誇ります。スライムちゃんで言うと水属性ですね』
「……スライムちゃんって凄かったんだねぇ」
「……(ああ、だから他の属性の魔法を使えなかったのね)」
「あれ、知らなかったの!?」
「……(まあ、能力については薄々分かってはいたんだけどさすがに種族のことだったり特性のことだったりはいまいち分かってなかったのよ)」
『というわけでスライムちゃんが弱い訳ないんですよ。このダンジョンだと次の階層ぐらいに行かないと全力の戦闘は出来ないでしょうね。まだまだ成長途中とはいえ、です』
でもスライムちゃんがいくら強いと言っても頼ってばかりにならないよう、ボクも頑張っていかないとね。
いかがでしたでしょうか?
今日はスライムちゃんメインの話になりましたね。フェアリーって響きがなんかかっこよく思えるお年頃なんです……
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