8話 これがカロリーの力だ!
アイテム関連の検査、鑑定がひと段落ついた。
鑑定を使ったお下であっという間に終わってしまったので予定よりかなり時間が余ってしまった。そこで病院では検査できなかったボクの身体能力を調べることになった。
「とりあえず、場所を移しましょうか」
坂井さんに案内されて、先程のエレベーターに戻ってくる。
行先はどうやらここよりも下の階層、ボタンを見る限り一番下の階みたいだ。
エレベーターを出ると、、広い空間に出た。
「うわぁ、地下にこんな広い場所があるなんてすごい!」
「ここは、この研究所の大規模実験場で耐久度は申し分なくそれなりの広さがあるから今回の計測にはピッタリです。ですからいくら暴れてもらっても構いませんよ」
「……ボクのことなんだと思ってるんですか」
「そんなことよりも、どんな方法で龍希ちゃんの身体能力を測定するの?」
ぐるりと部屋を見回してみるが、壁以外なにも見えない。天井も明かりがついているだけで特に何かがあるわけではない。
確かにこんなところでどうやって測定なんてするんだろう?
「それは彼らにご協力してもらいます。どうぞ入ってきてください!」
坂井さんの呼びかけに答えて正面にあった壁の一部が開く。すると中から自衛隊の制服を着た筋肉ムキムキの男たちが現れた。
うわぁ……なんか暑苦しそう……
「彼らは緑光ダンジョンから一番近くにあるダンジョンを攻略しているグループの方々です。ダンジョン攻略者の方の身体能力測定を手伝ってほしいとお願いしたら快く引き受けてくださいました」
と、坂井さんが説明している間にもよく分からないポーズをとって筋肉をぴくぴく動かしている。
あれは、ちょっと無理かも……
朝陽はなんでキラキラした目で見てるのかな?
やめなさい!筋肉がうつるよ!
「そもそも今回の龍希さんの測定の意味は、特に訓練などをしていない一般人の方々のレベルが上がったことでどの程度の力を得るのか。また、現在日本で最高レベルである龍希さん能力がどの程度かを測定するため。さらに言うと、身体能力を引き上げる系のスキルがどれほど体に影響するのかを見ることにあります。それらを踏まえたうえで、龍希さんには彼らと模擬戦を行っていただこうと思います」
「ちょっと待って!確かに龍希ちゃんはダンジョンを攻略してきたとはいえ、民間人の女の子よ?模擬戦なんて許可できるわけないでしょ!?」
「その点は問題ありません。模擬戦っといっても彼らには完全に受け手に回っていただき攻撃は一切しません。龍希さんの攻撃を受けて彼らがその力を判断するという形にしますので。龍希さん、それからご両親もいかがでしょうか?」
「……ボクは別に構いませんけど」
「私もダンジョンで龍希がどんな戦いをしたのか、それをちゃんと見ておきたいですので。お願いします」
「二人ともいいのか?あれだぞ、凄いマッチョだぞ?大丈夫か?」
全然大丈夫じゃないけどね!?
ここでもたもたするよりもさっさと終わらせて帰りたいし。という訳で早く始めたい。
「いいじゃない。達郎さんも格闘技好きでしょ?それに向うからは手を出しては来ないんだから大丈夫よ」
「そ、そうか?」
お父さんも納得したようなので、話を進める。
「あの、ジャージとか動きやすい服ってありますか?さすがにジーパンだと動きずらいんですけど……」
「ああ、それなら向うの部屋に用意してありますよ。それじゃあ、着替えたら始めましょうか」
ボクたちが入ってきた方向の壁の一部がスライドし扉が現れる。
中は更衣室のようになっていて、椅子にジャージ一式が置かれている。色は赤だ。というかこれうちの学校のジャージだ。さらに言うとこれボクのジャージだ。
お母さんが持ってきてくれていたんだろうか?とりあえずありがたい。
ジャージに着替えた後、着替えは置いて行こうかなとおもったところでふとペンダントの機能を思い出す。
「そっか着替えをこれに登録しちゃえば早いんじゃないかな?眼鏡ちゃん、登録ってどうすればいいの」
『ペンダントの宝石の部分を握ってこの衣装を登録したいと思うだけでそこに衣装が吸い込まれていきますので、それで登録完了です。着替えたいときは衣装を思い浮かべて変身、と言えば着替えもできます』
「え、変身って言わなきゃいけないの?」
『仕様ですので』
……高校生にもなって変身なんて単語を言葉にする日が雇用とは思わなかった。
それにしても、勢いでやるとは言ったもののいざとなるとちょっと怖い。
だって武術の経験なんて一切ないど素人のボクが屈強な筋肉たちと戦うなんて普通に考えたら無謀でしかない。
「……(龍希!)」
「スライムちゃん?」
「……(これは模擬戦、それに相手からの手出しが一切ない練習みたいなものよ。そこまで恐れる必要はないわ。それに、あなたはあなたが思っている以上に強い。だから気合い入れなさい!いざとなったら私が全員なぎ倒してあげるから!)」
……スライムちゃんが本気出したら本気でなぎ倒しそうな気がする。
「……ありがとう、スライムちゃん。じゃあ、頑張るね!」
「……(そのいきよ!)」
スライムちゃんの声援を受けて控室を出ていく。
広場ではすでに相手の人たちが中央に待機しており、お母さんたちもみんな壁際によっている。
「それじゃあ説明しますね。龍希さんはひたすらに彼らに攻撃を加えてください。それに対して回避、もしくは防御をしますのでなるべく攻撃を当てるように頑張ってください。5人のうち1人が相手をして残りの4人は四方から戦いを観察していただきます」
中央に立っているのは1人だけで残りはどうしたんだと思っていたらそういうことか。なんかボクシングみたいな感じだね。
「あ、あとスキルに関してはまだ使わないでください。その時になったらこちらから声を掛けますのでそれから発動してください」
「分かりました。それじゃあ、行ってきますね!あ、眼鏡ちゃん預かっていてください。外れちゃったら危ないので」
『ちょ、マスター!それはまずっ』
ん?何か言ったかな?
坂井さん……は危なそうなので、お母さんに渡しておく。スライムちゃんも渡そうとしたのだが、横から妹たちにかっさらわれていった。
中央にて相手の人と対する。
「まさかあなたのようなお嬢さんがダンジョンの攻略者だとは思いもしませんでした。これは、見た目通りと思ったら痛い目を見そうですね」
「いえいえ、ボクは見た目通い普通の女子高生ですよ。攻略したのだってスライムちゃんのおかげですし」
「ははは、謙遜なさるな。あそこがただの女子高生に生き残れる場所ではないのはよくわかっています」
なんかすごい勘違いしてそうだけど、大丈夫かな?
確かにちょっと力が強くなったかなって感じはするけど、もともとが貧弱だったからやっと人並ぐらいだと思うんだけど。
「それでは、始めてください!」
坂井さんの合図で相手の人が構える。
いくら攻撃はしてこないと言ってもこれはなかなか迫力があるものだ。
ボクもいつまでも突っ立ているわけにもいかないし、数m先にいる相手に向かって殴りかかる。
ビックスライムとの戦い以降、全力で体を動かす機会なんてなかったから分からなかったけど、確かに体が軽くなっているような気がする。これげレベルアップの影響なんだろう。
「やあっ!」
思い切って突き出した拳はあっさりと避けられる。
それどころか勢いが付きすぎて前に転がりそうになるのを何とかこらえる。
これはだめだ。
殴りかかっていくのはボクには危ない気がする。
やるんだったら、超至近距離のインファイトの方がいいかもしれない。
そう思って、今度は小走りぐらいのスピードで相手に向かっていき目の前で立ち止まるとそこから拳と蹴りを交互に繰り出していく。
それでも悉く避けら、一発もあたる気配がない。
―――これじゃあ足らない
そう思った瞬間、体から力が湧いてくる。
もしかしてスキル使っちゃった!?と驚いたけれど、ビックスライムと戦った時とは感触が全然違うのでレベルの影響かな?と思っておく。
すると、先程まで当たらなかった攻撃が掠るようになってくる。
よし!このまま頑張ってみよう!
〇・・・・・・・・・・・・〇
龍希の動きが妙に切れ味を所で、坂井もあれはスキルを使ってしまっているのではないかと思い始めた。
「ねえ日高。あれってもしかしてスキル使ってますかね?」
「……かもしれないわね。龍希ちゃんも使い慣れていないだろうから、もしかしたら無意識で発動しちゃってるのかも。どうする、いったん止める?」
『その必要はありません』
龍希の母、柊彩燈の手にあった眼鏡ちゃんから唐突に声がかかる。
『あれは確かにスキルの力ではありますが、それはマスターのスキルの性質上仕方のないことですので。それに意識的にスキルを発動したらあの程度の強化ではすみませんよ』
「……眼鏡ちゃん。ちゃんと説明してくれる?」
『お任せください、お母さま。
まずあれの力の元になっているのは<食の加護>というスキルです』
その言葉にまずは全員が頷く。
龍希がもっているスキルの中で身体能力を高めそうなものはそれしかなかったのだからそれは確実だろう。
『あのスキルはカロリーを消費して力に変えるという力があります。これは言い換えればカロリーを消費する行動はそのすべての能力に上昇補正がかかるということでもあります。人間は、というよりも生命体は行動一つ一つに対して少なからずカロリー、つまりはエネルギーの消費が伴います。つまりこのスキルは生命体である以上、そのあらゆる行動にその上昇補正が働くということでもあります』
眼鏡ちゃんの言葉にその場の全員が驚愕する。
それはつまり、指一本動かす行動、果ては勉強など脳を動かす行動にさえ補正が働くと言っているのだ。それは常に効果が働くパッシブスキルと言い換えてもいいだろう。
そして、龍希のあの動きだ。
彩燈や達郎、水月、朝陽の戦闘に関してはほぼど素人の面々から見ても龍希の動きは特撮映画でも見ているかと思うような動きをしているのだ。
相手をしている自衛官の顔には明らかな焦燥が浮かんで見える。
それは日高や、坂井の目にも同様に映った。動き自体は素人のそれだが、それを補って余りあるだけの切れとスピードがある。
さらに日高は先程の眼鏡ちゃんの説明の中に気になる部分があって疑問を呈する。
「眼鏡ちゃん。さっき、意識的にスキルを発動したらこんなもんじゃないって言ってたわよね?」
『その通りです。
そもそも皆さんは疑問に思いませんでしたか?ただの一般人の女の子がダンジョンの攻略、つまり最下層のダンジョンのボスを打倒して帰ってきたんですよ?あのダンジョンの最下層、35階層のボスは通常であれば適正レベルはおおよそ50。さらにあれはダンジョンのボスも兼ねていたのでその適正は60レベルはあったでしょう。それをたった1レベルの少女が倒して見せた。それも一切の抵抗もさせないほどの圧倒的な力の差でねじ伏せたんです。
今、マスターが発揮している力は体の活動に必要な力。つまり最低限かそれ以下のエネルギーしか使っていない状態です。それを意識的にマスターのもつ圧倒的なエネルギーを注ぎ込んだらどうなるか。それが答えですよ。さらに私を付けているときはマスターのスキルをオフにしておけるので問題ありませんが、私を外して枷が外れた今、あのスキルはマスターに無尽蔵の力を送り続けますよ』
坂井は自分の考えがいかに甘かったのかを思い知らされた。
自分はダンジョンという場所を、そしてそこを攻略して帰還したあの少女を何もわかっていなかったのだと。
日高はダンジョンに潜った自衛隊員からの報告を思い出していた。
曰く、5階層潜ったところで大きな扉が出現しその中にいた魔物はそれまでの階層の魔物とは比べ物にならないほど強かったらしい。その中での戦闘ではダンジョン攻略初めての死者が出たらしい。
レベルが上がった今は大分戦いやすくなったそうだが。少なくとも鍛えている人間でもしっかりとした準備が必要ということだ。
改めて、そんな場所から帰還した少女に畏敬を抱いていた。
両親も娘がダンジョンで過ごした時間が、聞いていたよりもどれほど過酷だったのかと、全く理解できていなかったじゃないかと後悔していた。
しかし、同時にそんな場所から帰ってきた娘を心の底から誇りに思うっていた。
そしてそんな少女の妹達も自身たちの姉の凄さを実感していた。いつだって自分たちのヒーローだった姉のようになりたいと。
「……うん。よし!龍希さん、スキルを使ってください!」
「……―――はーい!」
坂井が龍希にいった言葉に、相手をしていた自衛隊員を含めた全員がこいつまじかよ!?みたいな視線を向ける。
「ちょっと坂井、正気!?龍希ちゃんのスキルを使った攻撃なんて食らったらあの人死ぬわよ!?」
「龍希さん、寸止め!寸止めでお願いしますね!……これで多分大丈夫でしょう。私は見ておきたいんですよ。ダンジョンというものを、龍希さんを通して」
「……まあ、分からなくもないけど……大丈夫かしら?」
〇・・・・・・・・・・・・〇
「龍希さん、スキルを使ってください!」
「はーい!」
坂井さんからの声がかかったので、ここからはスキルを使うことにする。
と思ったのだが、そういえばスキルの使い方なんて聞いてなかったことを思い出す。
……どうしよう、いまさら使えませんって言えないしな
とりあえず、<食の加護>が発動するように意識する。
すると、あの時の感覚が蘇ってくる。
体の奥底から力が湧きだし、体が自由に動く、何だってできそうになるあの感覚だ。いったん攻撃の手を止めて後ろに下がる。
自分をよく見てみると、体の周りをうっすらと白い輝きが包んでいた。スキルを強く意識すると光も強くなる。
「龍希さん、寸止め!寸止めでお願いしますね!」
「……?分かりました!」
なんでか分からないけど、坂井さんに寸止めをお願いされた。
急にそんなこと言われてもできるだろうか?でも、確かにさせられるか分からないけど怪我をさせるのはよくない。どうにか寸止めをやってみよう。
一歩踏み出して、再び距離を詰める。
さっきまでとは比べ物にならないスピードなのだが、目が追い付かないということもない。しっかりと一瞬で切り替わっていく景色も、体の動かし方もしっかりと処理できている。
相手の懐に入ると、ボクが近づいたことにまだ気づいていない相手の人の腹部に向かって思いっきり拳を突き出し、直前で止める。
止めたはずなのだが、衝撃波というか空気が爆発したような音がして相手の人が凄い勢いで壁に突っ込んでいく。
坂井さん曰く丈夫な壁にめり込む勢いで突っ込んでいった相手の人はそのまま動かなくなって床に崩れ落ちる。
……―――
「わあぁ!!!ごめんなさい、ごめんなさい!!」
「至急、医療班を呼びさい!重症者一名よ!」
スキルを解除して、大急ぎで相手の人のところに走っていく。
日高さんが残った四人の人たちに指示して、応急処置を進めると同時に医療班を呼びに行かせる。
「お、お母さん!?ど、どうしよう!?」
「お、落ち着きなさい!?大丈夫よ、ここは病院なんだから!?それよりもあなたちゃんと寸止めしたの!?」
「したよ!?それなのに吹っ飛んじゃったんだもん!?」
『皆さん、落ち着いてください』
「眼鏡ちゃんどうしよう!?この人すごい勢いで壁にぶつかったよ!?眼鏡ちゃんの機能でどうにかできない!?」
『落ち着いてくださいマスター。
今の私では医療系の機能は拡張できていないんです。ですが、私ではなくスライムちゃんなら何とかできますから』
眼鏡ちゃんの言葉に全員の視線がスライムちゃんに向く。
「スライムちゃんが?……お願いスライムちゃん!」
「……(任せなさい。これぐらいなら大丈夫よ)」
スライムちゃんは跳ねながら床に倒れ伏している相手の人に向かっていく。
「……(ほら、そこ邪魔どきなさい。それじゃあ行くわよ……<エクストラヒールウォーター>)
周りで応急処置をしていた人たちをどかせて、何事かを唱えたと思うとその体が光り頭上に水球が生み出されていく。
そしてサッカーボールぐらいの大きさになったそれを振りかける。
「……ぅん……これは、いったい」
「……(これで大丈夫よ。後遺症なんかも残らないし完全に全快したわ)」
「ありがとうスライムちゃん!!」
スライムちゃんの生み出した水を振りかけると、苦しそうだった呼吸がみるみる安定していき意識を取り戻す。
体を起こし掌を閉じたり開いたりして自身の体の変化に驚いているようだ。頭から流れていた血も止まっていて立ち上げって体を動かしている。
ただ、床に流れていた血はそのままになっている。
その後、駆け付けてきたお医者さんたちに診てもらったが特に異常は見られないということで一安心。
坂井さんは床に正座させられて日高さんに怒られている。
ボクも両親と一緒に相手の人に謝りに行ったのだが、自分が未熟だったからだと気にしなくていいと笑いながら言ってくれた。
懐が広い人で本当によかった。
ひとまず騒ぎも収まり、場も落ち着いてきた頃。
「こうなると、迂闊に能力検査もできないわね。ちょっと力が強力すぎるし……下手したら日常生活でも影響がありそうね」
「そうですね、本人の意思とは無関係で発動している部分もありますからね。ちょっと危険かもしれません」
「優子さん、薫さん、何とかなりませんか?」
ボクのスキルが思っていた以上に強力だったということで、両親と日高さん、坂井さんも加えて相談会が行われたいた。
自分では分からなかったけれど、スキルを使う前の段階の動きで結構すごい動きをしていたらしい。
確かに、体が軽くなるような感覚はあったけれど言われるほどの動きができていたとは思わなかった。
まあ、何にしてもこのままじゃコップを持っただけで割ったり、ドアノブを壊したりとかマンガみたいな展開が起こるかもしれないと対策会議をしているのだ。
「彩燈さん、おそらくその答えを持っているのはこの子のはずですよ」
そういって日高さんの視線がボクに向けられる。
「えっ、ボク!?」
『いいえ、私でしょう』
「ええ、眼鏡ちゃんの方ね。さっき話していた時あなた龍希ちゃんのスキルを制御しているって言ってたでしょう?」
その言葉にお母さんとお父さんがはっとする。
ボクが模擬戦をしている間にそんな会話があったのだろう。
『ええ、その通りです。
他人のスキルは無理ですが、マスターのスキルであればある程度は制御できます。試しにマスター、私を外してそこのカップを持ってちょっと力を入れてみてください』
言われるがままに眼鏡ちゃんをはずす。
お茶を飲みながら会議をしていたので一人一人の前には金属製のタンブラーにお茶が淹れられている。
このタンブラーに起こることは何となく分かっているので、日高さにアイコンタクトで確認をとると頷きでOKが返ってきた。
念のため中身のお茶を飲みほしてから、タンブラーにちょっとだけ力を込めてみる。
すると、粘土みたいにぐにゃんと特に抵抗も感じずに指が埋まる。というか、タンブラーが凹む。
「うわぁ!?」
「龍希、そんなゴリラみたいな……」
「ちょっとお母さん、いうに事欠いてゴリラなの!?」
『ではマスター。
今度は私を付けてから同じことをやってみて下さい』
いったんタンブラーをテーブルに置き眼鏡ちゃんを装着する。
『おや、これはさっきのでレベルが上がっていますね。調整、調整っと……それではやってみたください』
みんなが固唾をのんで見守る中、タンブラーをそっと持ち上げる。
そして、少しずつ力を込めていってみる。
さっきと同じくらいの力を加えるが、びくともしない。そのまま結構力を籠める、マジで力を籠める、本気の本気!とやってみるがびくともしない。
「大丈夫みたい……」
その言葉でみんなから安堵の声が漏れた。
これで、日常生活は問題なさそうだ。
「ひとまず安心ね」
「はい、一時はどうなるかと思いましたよ~」
「うーん、でもそうなるとずっと眼鏡ちゃんを付けている必要があるわけだけど……」
「確かにお風呂の時とか、寝るときとかは外しますもんね。寝ているときに壁なんか蹴っちゃって翌朝そこから光が差し込むなんてことになりかねませんよね」
「……たつ姉、寝相悪いもんね」
『その点もお任せください。と言ってもここからはスライムちゃんの仕事になりますが』
「……(そうね、ここからは私の領分ね)」
ボクの膝に乗っていたスライムちゃんがぴょこんと飛び上がって、テーブルの上に乗る。
「……(スキル自体を封印しちゃえば早いんだけど、それだといざという時に心配だから。ほら、手を出して)」
言われた通りにスライムちゃんの前に手を出す。
すると、スライムちゃんの体が筋肉さんを回復させたときのように輝きだした。
「……(<プロテクト>)」
スライムちゃんがそう呟くと、差出した右手の甲に紋章のようなものが現れるとすぐに消えてしまった。
「……スライムちゃん、今のは?」
「……(<プロテクト>っていう魔法よ。本当は外部からの衝撃から身を守るものなのだけれどちょっと弄って内側からの衝撃を緩和するようにしたわ。これで眼鏡ちゃんんをかけられないときでも必要以上に力が出てしまう心配はないわ。効果は一日だから毎日かけなおす必要はあるけれどね)」
「うわぁ、ありがとうスライムちゃん!」
「……(ただし!!これはあくまで応急処置よ。龍希がその力を制御できるようになれば解決する話なんだから。だからこれから毎日私達と訓練していくわよ。いい?)」
「うん!」
もう一度、今度は眼鏡ちゃんを外してからタンブラーを持って握ってみるといくら力を加えても変形する気配もない。
うん、これなら眼鏡ちゃんがない時でも大丈夫だね!
「スライムちゃんも眼鏡ちゃんも、龍希のためにありがとう。ダンジョンでもお世話になったみたいだし、二人には本当に感謝してるわ」
「……(私は別に好きでやってるだけですから)」
「ふふ、可愛いわね~。最初、龍希が妙なものを持って帰ってきたときはびっくりしたけど二人がいい子でよかったわ」
するとお母さんがテーブルの上にいたスライムちゃんを自分の膝の上にのせてなで始める。
「……(んなっ!?……!?)」
『あ、スライムちゃんずるいです!お母さま!私のことも!』
「おいで~」
外したまま手に持っていた眼鏡ちゃんが、ひとりでに動き出しお母さんの方に飛んでいく。そのままスライムちゃんの頭の上に着地し一緒になでられている。
眼鏡ちゃんが一人で動けるという事実が発覚したが、ひとまず家族と二人が仲良くなってくれてよかった。
お父さん?
お母さんの横で羨ましそうに見てるよ。
読んでくださりありがとうございます!
今回は主人公のスキルについての実践回になりました。
私としては主人公の食べても太らない?体質がうらやましいばかりです……
とまれ、食材魔物?みたいなのも出していきたいんですが、皆さんもこんなのいいよね?みたいなアイディアが有れば感想に書いてみてください!ぜひ、お願いします!
という訳で8話でした!いかがでしたでしょうか?
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