7話 アイテム鑑定
翌朝。
枕元のテーブルに置いてあった眼鏡ちゃんをかけると、視界の隅に6:00と言う時間が表示されている。昨日は早く寝てしまったためどうやらいつもより早く起きてしまったらしい。
『おはようございます、マスター』
「……(おはよう、龍希)」
「スライムちゃん、眼鏡ちゃん。おはよう」
ボクは寝起きはいいタイプなのですっきりと起きることができる。
二人に挨拶を済ませると、体を起こして背伸びする。ほんとうなら寝る前、それから寝起きにはいつもストレッチをしているのだがベットはそこまで広くないし床でやるのも微妙なので控えている。
洗面台で顔を洗い、歯磨き、着替えを済ませて準備万端。
といってもまだ早いため特にすることはないのだが。
「……(……龍希、暇ならちょっとお願いがあるんだけど)」
「うん?いいよ、スライムちゃんのお願いだもん。いつだって大歓迎だよ!」
「……(そう?……それなら、私に名前を付けてくれないかしら?)」
「ええ、名前!?そんな大事なこと急に言われても……うーん……」
『あっスライムちゃんずるいです!マスター、私、私にもお願いします!』
「スライムちゃんも!?ええ……どうしよう……」
そっか、二人とも今まで名前なかったもんね。スライムちゃんと眼鏡ちゃんってずっとよんでたから特に困らなかったけど名前は欲しいよね。
いつまでも種族というか物の名称とかの名前で呼んでるだけじゃ寂しいもんね。
しかし困った、二人の名前なんだからちゃんとした名前を付けてあげたい。けど、咄嗟に言われてもなかなかこれだっというものが出てこない。
「うーん……――」
「……(ごめんなさい。せかすような言い方になっちゃったわね。付けてとは言ったけど、今すぐじゃなくていいわよ。龍希が納得できるものが思いつくまで、気長に待つから。気に留めておいてくれればいいから)」
「……うん、ありがとうスライムちゃん。ちゃんとピッタリな名前を付けるからね!眼鏡ちゃんもそれでいい?」
『もちろんです』
というわけで、今日のボクの仕事に二人の名前を考えることが加わった。待ってくれるとは言ったけど、やっぱりつけてあげたいもんね。眼鏡ちゃんは分からないけど、スライムちゃんは楽しみでそわそわしている感じがするし。
そんなこんなで眼鏡ちゃんの機能を弄ってみたりスライムちゃんと戯れたりして時間を潰していると、病室のドアがノックされる。
「はーい?」
「龍希ちゃん起きてる?日高だけど、入っていいかしら?」
「大丈夫ですよ!」
入ってきた日高さんは最近見慣れてしまった迷彩服の着ていた。
ふと、疑問んい思ったのだが自衛隊の人たちはいつも同じ服を着ているけれどこれって使いまわしなんだろうか?それとも同じ服、っていうか制服?をたくさん持っているのかな?
クローゼットの中いっぱいの迷彩服……ちょっと面白いかも……
「……どうかした?」
「あ、いえ、何でもないです。そんなことよりも!ボクお腹すいちゃって、食堂ってもう開いてますか?」
「ふふ、私もちょうど龍希ちゃんを朝食に誘いに来たのよ。一緒に行きましょうか。食べながら今日の予定についても話したいし」
「分かりました!」
日高さんと連れ立って食堂に行くことになった。
しかし、スライムちゃんを連れて人が多く集まる食堂に行くわけにはいかないと思いスライムちゃんは部屋に置いていこうとしたのだがそこで小さめのリュックを渡される。ここに入れてけばひとまずは大丈夫とのことだ。
リュックにスライムちゃんを詰め込んで、眼鏡を装着して準備完了!
普段だったらスマホとか財布も持っていくところだが、財布は特に必要ないしスマホについても正直眼鏡ちゃんがいれば持っている必要もない。
というか、スマホよりも便利なくらいだ。
道中何人かの患者さんや、お医者さんとすれ違ったりしたのだが特に目立ってしまった様子もない。眼鏡ちゃんはともかくスライムちゃんも大丈夫なようだ。
食堂に着くと、カウンターで朝食を受け取り席に座る。
食べながら、正面に座った日高さんと今日の予定について話し合っていく。
「今日はまず敷地内にある研究所に行って龍希ちゃんがダンジョンから持って帰ってきたものをちょっと検査してもらう予定よ。と言っても詳しく調べるには私たちは情報が少なすぎると思うから大したことは出来ないと思うけどね。せいぜい放射線とか危ないものを放出していないかを調べるぐらいね」
「そうなんですね……だったらあのアイテム類ってここに置いて行った方がいいですか?」
「いいえ、それには及ばないわ。そもそもダンジョンから持ち帰られたアイテムってだけでも重要で他国も喉から手が出るほど欲しいでしょうからね。そんなのにいちいち対応してられないし、持ち帰った本人の龍希ちゃんがが持っていた方が色々と角が立たないでしょうしね」
なるほど
別にボクが持っていてもしょうがないと思ってたんだけど、そういうことなら持っておこう。
あ、スライムちゃんも食べる?
じゃあ、デザートのリンゴあげるね~
「それから昨日の検査結果が出るだろうからそれを確認して異常がなければ終わり。もしあったら再検査になるかもしれないってところかしらね。と言っても今わかっている異常はスキルのせいだって分かったし、その調子なら体も問題なさそうだから早くて明日には退院できると思うわよ」
「ほ、ほんとですか!よかった~」
かれこれ三日以上家に帰っていない。
たった三日、されど三日というところで、なんというかちょっと懐かしく感じてしまう。旅行から帰ってきたときみたいな感じかな。
それに久しぶりにお母さんの料理が食べられると思うと嬉しくなってくる。
「安心したらお腹空いて来ましたね!ちょっとおかわりしてきます!」
「……うん、お腹いっぱい食べて頂戴」
食後、日課になりつつある食後の体重測定をする。
今日の結果はなんと500㎏。またけっこう増えたな。
これ、本格的に減らす方法考えないとまずいよね。
だってボクが寝ると病室のベットからギギギって軋む音がするんだもん。食堂で座ってた椅子だって変な音したし。
あとで眼鏡ちゃんに相談してみよう……
体重測定も終わり、いったん病室に戻ると中から人の話し声が聞こえてくる。
誰だろうと思いつつもドアを開けてみると、中にはお父さんとお母さん、水月、朝陽がいた。
「あれ?みんなおはよう。今日も来てくれたんだね」
「何言ってるの。娘が入院してるんだもの、毎日でも来るわよ」
「おはようたつ姉!……なんで病院の中でリュック何て背負ってるの?」
「……おはようたつ姉」
「ああ、これ?」
鞄の中からぎゅうぎゅうに入っていたスライムちゃんを取り出す。
……よく考えればこのサイズのリュックに入るようなサイズじゃないよね?
すると、取り出した瞬間に水月にスライムちゃんを持っていかれる。
「ん、この抱き心地……最高」
「あ、水月ずるい!次は私ね!」
「……ほどほどにね」
なんとなく助けを求めているように見えなくもないけれど二人の相手を頑張ってもらうことにしてボクは軽く身だしなみを整える。
準備が終わると家族を連れて部屋を出て、表で待っていてくれた日高さんに案内されて研究所に向かう。
研究所は同じ敷地内にはあるが棟が違うらしくいったん表にでて、右手正面に見える建物に向かっていく。
もちろんスライムちゃんは妹たちから回収してもう一度リュックの中に入ってもらっている。
建物に到着すると、エレベーターに乗ってさらに地下に向かう。
地下にある研究所ってなんかカッコいいよね!ちょっとドキドキしてくる。
同じことを思ったのか、妹たちとお父さんもワクワクしているのが伝わってる。
エレベーターが止まり扉が開くと、少し先に見知った人がいるのが分かった。
「ようこそ緑光ダンジョン観測研究所へ、皆さん」
「あっ、坂井さん!」
「一昨日ぶりね、龍希さん。皆さんもわざわざご足労いただきありがとうございます。立ち話もなんですのでこちらにどうぞ」
そこからは坂井さんに先導されて、大きめの部屋に案内される。
中央に大きめの正方形のテーブルがあり、部屋をぐるりと囲むように壁際に色々な機材が乗った机が並べられている。その前には白衣の人たちが10人ぐらい座っている。
ボクたちは中央の机を囲むようにして置かれた椅子に座るように促される。
席に着くと、白衣の人たちの一人がお茶を入れて持ってきてくれる。
……あの機材の山の中のどこにポットがあったんだろう。
「坂井、ちょっとは整理しておきなさいって言っておいたでしょう」
「これが私たちにとっては一番わかりやすい配置になっているんです。むしろこれがいいんです」
坂井さんが片付けられない人の典型的なセリフを言う。
「それじゃあ改めまして。私がここ、緑光ダンジョン観測研究所の所長をしています坂井薫です。よろしくお願いいたします」
「龍希の母の柊彩燈です。娘のためにありがとうございます」
「父の柊達郎です。今日はよろしくお願いします」
「妹の柊朝陽です!よろしくお願いします!」
「……同じく妹の柊水月。よろしく」
お互いに自己紹介を済ませると、続けて坂井さんから今からやるアイテム類の検査についての説明が行われた。
まず、前にボクが渡したスライムっぽいナニカ。
あれについての解析結果が出たそうだ。
あれの構成成分を調べたところ、何故かサイダーの成分に近かったらしいのだ。まだまだ分からない成分も多いそうだが分かる範囲ではそういう結果だったらしい。そこからさらに解析を続けたのだがそれ以外のことが分からず。
かといって食べてみるわけにもいかず、ここはボク、というよりも眼鏡ちゃんに調べてもらおうということで今朝の話が出たそうだ。
「という訳なのですが、どうでしょう。お願いできませんか?」
「分かりました!ボクは大丈夫です。眼鏡ちゃんお願いできる?」
『諾です。
機能:鑑定を使用……鑑定完了。
詳しい成分などはこちらになりますが、簡単に口頭で説明しますとこれはスライムのドロップアイテムでスライムゼリーですね。食用も可能で、素材としても使用できますね』
眼鏡ちゃんによる説明とともに空中に魔石道具を鑑定したときと同じような画面が表示される。
やっぱり、ボクにはさっぱりなことが書かれている。
「あ、これって食べられたんだね。眼鏡ちゃん、収納からもう一個出して」
すると、手のひらに机に置いてあるものと同じスライムゼリーが現れる。
成分はサイダーっぽいって言ってたからやっぱりサイダーみたいな味がするんだろうか?
「ちょっ、龍希さん待って待って!?躊躇なく食べようとしないで!まだ聞きたいこととかあるから!」
「……でも食べられるって」
「それも含めてちゃんと聞くから……眼鏡さん。質問があるのだけれど、そのスライムゼリーという名称はいったい何を基準としてつけられたものですか?それに食用可、っていうのはちゃんと私達の体にとって問題ないってことでしょうか?」
『まず、はじめに言っておきますと私にはその機能や名称についての情報を得ることができても、その情報源について明かす権限はありません。それは人類が自身の力で調べることでしか知られないようになっています。
また、食用可と言ったのはマスターの体の解析結果とネットに転がっていた情報などを照らし合わせての判断ですのでこの世界の人類にとって害になることはありません』
「……なっている、この世界の人類、ですか。これ以上聞いても無駄そうですね。とりあえず危険がないことが分かってよかったです」
とりあえず、食べても大丈夫なんだよね?
ガブリ
……うま!?
ゼリーのようになっているのは表面だけで中身は液体になっていた。
かんだ瞬間に中の液体が爆発したかのように口の中にあふれてくる。確かに味はサイダーに近いが、今まで飲んできたサイダーとは比べ物にならないくらいの美味しさだ。
何が違うのか具体的には分からないが、炭酸が口の中ではじける感覚。迸る爽快感。どれをとっても一級どころか超一級品だろう。
それに常温で保存していたはずなのに、何故か冷たくて美味しい。
一口食べ終わったところで残りを全部口に放り込んでしまった。
モグモグ
うまうま
ごくんっ
「……めっちゃおいしい」
「たつ姉、私、私にも!」
「……私も!」
結局、試食会が始まってしまった。
何とか人数分ピッタリあったので助かった。さすがに研究員さんたち全員の分はなかったので壮絶じゃんけんを繰り広げていたが、坂井さんが一人ずつ何事かを耳元でささやいていくとあっさりと引き下がっていった。
果たしてどんな取引が行われていたのだろうか……
みんな一口食べると驚いた顔をした後に、夢中で残りを食べ始める。
「そういえば、攻略したダンジョンってドロップアイテムが2倍になるって言ってなかったっけ?これもそれに含まれるの?」
『そうですね。これも魔物、エンペラースライムのドロップ品ですので倒した時にはこの倍の量が取れるようになりますね。ちなみに言っておきますと、魔物からのドロップ品は食料系の第一次産業から工業に利用できる第二次産業に役立つ品まで多種多様になっていますよ。ただし宝箱から出てくるアイテムに変化はありません。あれはドロップアイテムという訳ではありませんから』
ふむ
つまりはこれと同じぐらいに美味しいものがダンジョンにはたくさんあるということか。
「……んんっ。ま、まあその辺の話は後にして他の物品の鑑定も進めていきたいんだけどいいでしょうか?」
「あ、じゃあ今出しますね……と言ってもあと二つだけなんですけど。この紙の束とペンダントですね」
「それじゃあ、引き続き眼鏡さんに鑑定をお願いできますか?」
「あれ?いいんですか?」
確か斎藤さんが、坂井さんたち研究者たちには下手に手出ししないほうがいいというか、研究するのが生きがいみたいなものだから特に何もしない方がいいと言われていたのだが。
「ええ、今はなるべく早く多くの情報が欲しいですから。ただでさえ半年後には魔物がダンジョンの外に出てくるなんて言われてしまった現状、どんな小さな情報でもいいから欲しいんですよ。さすがに私情で時間を浪費するわけにはいきませんからね」
そうだ。星の意思さんが言っていた。
半年後にはダンジョンの外に、地上に魔物がでてくる、と。
―――ボクには何ができるんだろうか
「分かりました。それじゃあ眼鏡ちゃん、お願いね」
『諾です。
それではこれらのアイテムの鑑定を開始します。機能:鑑定を使用……完了。それではアイテムの詳細を表示します』
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<変身のペンダント>
衣装を7つまで登録することができ、使用することで登録した衣装に一瞬で変身することができる。
残り登録数:6
<姫の鎧><><><><><><>
<ダンジョン操作書:No055>
No055のダンジョンを操作することができる。
ダンジョン内にて開くことによって使用可能。ダンジョンに関する様々なことを変更、もしくは維持することが可能。
所有者:柊龍希
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「これはまた、凄いものがでたね。特にこのダンジョン操作書……ふむ。これは検証しないとさっぱり分からないね」
「そうね……眼鏡ちゃん、この所有者のところは他人に譲渡することは出来ないのかしら?」
『両者の合意があれば可能です』
「なるほど……龍希ちゃんがいらないならこれはこっちでもらい受けたいんだけど。もちろんその分の報酬はちゃんと出すわ」
「ボクが持っていてもどうしようもないでしょうし、お願いします。報酬とかは別にいいので」
「それはだめよ。これは龍希ちゃんが文字通り命がけで持ち帰ったものなんだから、ちゃんと報酬は貰ってもらうからね」
「……ありがとうございます!」
眼鏡ちゃんに言われた通りに受け渡しをする。
渡す相手はひとまずは坂井さんに、とのことだった。回数制限があるわけでもないので誰でもいいのだが研究の都合上坂井さんにということだった。
渡した時の坂井さんの目が怪しかったけど、大丈夫だよね……?
「それじゃあ、アイテム関連に関してはここまでにして次は龍希さんの出番ですよ」
「えっ、ボク?」
「そう!物理攻撃の効きにくいスライムをあてに殴る蹴るで倒したそうじゃないですか!その身体能力とかスキルの力とかもこの際ですからしっかり検証しておきましょう!……うへへ」
……坂井さん。
お願いだから、ほどほどにしてね?
今回はアイテムの鑑定したりする回でした!
ペンダントについてはあまり詳しくは出しませんでしたが次回あたりでしっかりと使ってもらいたいところですが、ちょっと分からないですね。ダンジョンでの検証に関しては主人公もそろそろ夏休みが半分を切っていますし、頭の方はあまりよくないですので。夏休みの敵がまだ残っているんですよね……
今後主人公がどういう経緯でダンジョンに潜るようになるのか注目してほしいです!
という訳で7話でした。いかがでしたでしょうか?
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