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Ⅲ.「新しい倫理観の模索」

Ⅲ.「新しい倫理観の模索」



 このネオ・アナーキズムともいうべき「新しい倫理観」について、いままで棚上げにしてきた事をここで説明したいと思う。しかしその前に、本当に「新しい倫理観」の登場は70年代であったのかという問題を考えたい。実は、それ以前にも萌芽というべきものがあったと筆者は考えている。アナーキズムという名称を与えてしまったために多少説得力を欠くかもしれないが、ヒッピー・サイケデリック文化がそれにあたるだろう。彼らのスローガン「ラブ・アンド・ピース」は後のパンクスなどとは逆の位相をもっているといえるが、その程度の差違は70年代と80年代の間にも存在している。それぞれの時代の特性を十年ごとに「理想主義」「虚無的暴力主義」「享楽主義」と定義して差別化することは可能だが、一貫して行われてきたのは新しいポリシーの模索であり、それは当然現行の社会規律の無力さの自覚からくるものである。そういったものが往々にして反社会的になるのは当然で、ヒッピーたちにしても、「ラブ・アンド・ピース」が麻薬文化によって支えられていたことを考えれば後の時代よりインモラルであるとさえいえる。そして彼らの思想性がポップカルチャーの中で発展してきたのはそこが既存の権威勢力の軽視する死角であったからで、そこは旧世代の理解しえないミラーシェードで覆われた若者の聖域であったのである。


 ヒッピー&サイケ、パンク、サイバーパンク、その他の若者文化が一過性のファッションとして通り過ぎたために、その影響力が真剣に論じられることはいままでなかった。また、旧世代に迎合して世俗的利益を享受し過去を若気の至りとして処分するものが大半であったために、流行文化の「残留組」が着実に増え続けていることが気づかれなかった。また、ポップカルチャーを社会活動に持ち込む者も密かに増加を続けた。たしかに流行のひとつひとつは敗北したかもしれないが、我々はそのこと自体にさほどの意味があるとは思っていない。それは(すた)れたファッションを捨て去る時の若者の冷酷な態度を見ればわかる。彼らは去年流行(はや)った服を決して着ようとはせず、大人たちはそれを見て「豊かすぎる時代」を嘆く。

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