Ⅱ.80年代 ─ 浸透の時代
Ⅱ.80年代 ─ 浸透の時代
結果的にパンク・ムーブメントは2~3年で終了し、表面的には失敗と思われた。しかし彼らの「新しい倫理観」と共通項を持つものが次々とポップカルチャーのシーンに登場し始めた。世界的に人気を博した我が国のテクノポップバンド、YMOは真っ赤な人民服でレコードジャケットを飾り、解散コンサートにはナチスのSSの軍服で登場した。思想的背景の全くない彼らのファッションは「アナーキー」であると評された。漫才ブームが起こったのもこの時期で、その倫理観のなさにPTAなどから真っ先に俗悪の指定を受けたが、社会的評価と人気は反比例をなしていた。
海外ではSFの分野に著しい変化がみられた。サイバー・パンクの登場である。(パンクという名称が再登場したという偶然には驚かざるをえない。)このブームの引き金になったのは83~84年のあいだに発表された映画「ブレードランナー」とウィリアム・ギブスンの小説「ニューロマンサー」である。
サイバーパンクとは、今現在研究所の中にあるテクノロジーが全て実用化された際のシュミレーションを骨子とした作品のことである。ただそれだけのことなのだが、内容は非常にアナーキーなものとなった。それは現在スタンバイしている科学技術(バイオテクノロジー、高度ネットワーク社会、人工生体器官)などが多分に既存の倫理に挑戦的だからである。またそこには、情報の加速化が新たな思想・技術を造りだし、さらに情報を加速化するという側面もある。
80年代アナーキズムの特徴としては以下のことがあげられる。
①高度技術と低度技術の無差別使用
70年代には高度技術に低度技術で対抗しようという意図がみられたが、80年代は高度技術の権威を認めず低度技術と同等に扱おうという意図がみられる。例えば前述の小説「ニューロマンサー」の中では、科学専門用語と高度な文学表現、それとスラングが混合使用されている。
②新しい技術・思想による高い生産性の予感
サイバーパンクは、既存の倫理に縛られさえしなければ巨大な利益が得られることを保証する。




