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寝るわ、さいなら。

 居酒屋では予約してなかったから2階席は取れなかった。1階の座敷でアル中たちは不満タラタラだった。そしてそれも俺のせいらしかった。


 それでも乾杯しようってことになって、部長がノロノロ乾杯の音頭をとり始めた。そのとき西川と高橋が遅れて仲良くやって来た。ところが席は俺の隣しか空いてなかった。西川は高橋を俺の隣に座らせるわけにはいかないって感じで俺と高橋の間に座った。「よう、吾妻おつかれサン」って言ったけど好戦的にニヤニヤしてて、

「んー? また最近舞い上がってるらしいなあ、打ち上げで俺をどうするって?」

と言ってきた。そうかやっぱりそうだったのか、こりゃスゴいぜセニョリータ。さっき菊池に言ったことは菊池にだけしか言ってないってことは、やっぱりこりゃドッカーンの爆発五郎だ。


 部長がカンパイをしたあと、

「吾妻さん、重大発表があるってなんですか?」


 俺が立つとき西川がビクッと身構えたが、俺はただボーッと立った。


「みなさんに重大発表があります。私と同学年の小林くんが退部したのはみなさんご存じかと思いますが、このたびここにいる松本くん、早坂くん、大木くんも退部することになりました。」


 これは、ウケた。


「吾妻、まだ小林のこと根に持ってんのか? あれはみんなもお前が書いたもんじゃないってわかってるって。」


 アル中が笑いながら言う。


「ウソじゃねー!!」


 俺はテーブルを蹴ったくってひっくり返した。ひっくり返ったテーブルはシラけた顔してた2年のネーチャンたちの上におおい被さった。テーブルを蹴るとき掴んだビールビンで西川のいる方を振り払ったら西川の思わず顔面をガードした腕から肩にかけてクリティカルヒットで西川は座敷から床に落っこちた。いっしょに高橋もふっ飛んだがしょうがないだろう。さすがになんとなく知ってた石坂さんはひっくり返ってないテーブルの下に速攻で避難したので横にいた菊池も一緒の行動をとった。こいつは動物的な逃走本能を持ってる。そのテーブルの上を走ってってアル中たちの頭をなぎ払ったらこいつらはすぐに頭を腕でガードしてうずくまったので、その背中をボッコンボッコンにビンでひっぱたいた。こういう相手にはヘタに抵抗せずひたすらジッと耐えて反撃の機会を待つということをちゃんと知っているという、こいつらけっこうケンカ慣れしてるなとかこのとき変なこと考えた。


「菊池さん、帰りましょう。」


 このセリフはいま考えても意味不明だが、このときは相手も一瞬頭がバカになってたので腕をひっぱってやったら立ち上がった。座敷の段を降りて靴を履いているところへ、

「お前なんだよ!! 一番が!!」


 これもやっぱり意味不明。とにかく顔面、下アゴふりかぶって一発KO。これやったら時々死んだりするけど、まあ死ななかったんだからいいだろう。ノビた菊池を店の外に引きずり出して、バンバン蹴っとばしてグッタリしてきたからそばのクリーク(川堀)んとこに引きずってって、転がり落としたら水に漬けたネズミみたいにバタバタはい上がってきた。それを蹴ってまた落としたらもうこっちもヘトヘトで、それでバイクに乗って下宿に帰ってきた。



 下宿に帰ってきて一気にこれを書き上げたらもう朝の7時。笑っちゃうな。これフィクションだと思った? 思うわけないよな、俺がぶん殴ったやつらがコレ読んでんだから。というわけで、これが俺の退部届だ。謎がとけた? でもねぇだろな、バカだからお前ら。どうせお前ら俺が高橋にフラれた腹いせに暴れたとか思ってんだろ? これ次の部誌にちゃんと載せろよな。載せるわきゃねぇか。でもこれはシンジツの記録だぜ。言論は抑圧できてもシンジツは抹殺できないのだ。なに言ってんだろな。


 しかし俺もシドいことやってるね。でも別に病院行くようなケガは誰もしてねぇだろ? ケンカやってる年季がちがうんだよ。でも暴行傷害で告訴したいんならどうぞご勝手に。それなら逆にこの小説の話題作りになってベストセラーの角川フェスティバルになってごくろうさんだぜ。


 いいんだよ、そんなことはどうだって。告訴したかったら勝手にしてくれ。俺は眠いんだ。2日も徹夜したあげくにこんなもん朝までかかって書いて俺ってバカみたいだ。それでこんなもん発表したって、どうせ野蛮だの暴力がどうのってバカなやつが文句タレるんだから絶対。だいたい人間は矛盾のカタマリなんだから、だから戦争はなくならないんだよ。いや違う、そんなことはどうでもよくて、これで俺の人間性がどうのとかノーガキたれるなよなってことだ。こんなの全然俺という人間を表現してないぜ。徹夜の頭で一晩で書いたもんだし、文学としての表現それ以前の問題だろー? いや、これが純文学だ。これはな、エログロナンセンスだ。いや違うな。本格的に頭が動かなくなってきた。とにかくガタガタ言うな、俺だって本当は反省してるんだから。ダメだこんなこと言っちゃ、俺のアナーキーでデビルがパーだ。


 寝るわ、さいなら。


 あと言い忘れてたけど、俺筑大の文芸部で書かないかって誘われてるんだ。じゃあね。

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