味方
「杏は理論派だから、感情でカッとなるタイプじゃない。でもおまえは、盗作だってはなしに頭に血がのぼってただろう? 杏に説明しなかったし、杏の言い分にも耳を傾けなかったな。──それだけか?」
「…………相方がいたこと、ちゃんと話してくれてたら、私たちだって誰の仕業かわかったし、すぐ杏に話したよ、って言った……」
紫苑はため息をついた。
べつに、里沙にあきれたからではなく、そう言われた杏の心情がよくわかるからだ。
紫苑なら、つまり責任はすべてそっちにある、と突き放された気分になったことだろう。
里沙の言い分は感情的ではあっても、理屈としては筋が通っている。
杏には、それ以上なにも言えなかったはずだ。
どちらかというと現実的で男っぽい思考回路の杏は、感情に任せた言い合いができるタイプではない。
紫苑もニガテなので、そのきもちはよくわかる……
すべてを抱えこんで、部屋を出ていくより他なかった絶望が、痛いほど──
しかし、今の里沙は、杏を出て行かせたことを悔いている。
ならば、紫苑が代わって、杏の言い分を説いてやることもできるのではないか。
「あいつ、アイデアをもらったって言ったんだな、チー?」
「うん……」
「じゃあ本来、杏が描いたって文句はないはずだ。──俺がおもうに、SFにしたのは杏だとおもうんだ。売れるためにSFとか言ってたからな。ってことは、仮に元相方が自分でマンガを描いたにしても、似たようなはなしができあがるってだけだろ。杏がおまえたちの仲間だって知らなきゃ、盗作だって言いだす根拠もないに等しい。ちがうか?」
「そうだね」
千夜がうなずく。
里沙も、口をへの字にしてはいるが、紫苑にうなずき返した。
「盗作は悪だ。それは里沙が正しいとおもう。けど、相手がおまえらに恨みを持ってるやつなら、ふつうに考えて、邪魔するために難くせをつけてきてる可能性だってある」
「でも、杏は……!」
里沙の反駁に、紫苑はうなずく。
「もらったにしたって、アイデアが自分のものじゃないなら、非がないとは言えないよな。おまえたちに悪いことをしたとおもってるだろうし、元相方が脅迫してきてることに気づいていたら……って痛恨のおもいに決まってる」
「なによ。紫苑は、杏の味方なんだ?」
すねた里沙の頬に、紫苑は腰を浮かして手を伸ばした。
ぴたり、と当てた手のひらは、叩いたと解釈されても仕方がないが、里沙はおどろいた顔をして紫苑を見ただけだ。
「俺は、おまえらの味方だ。──わかってるか? おまえらをケンカ別れさせてよろこぶのはその元相方じゃねーか。おまえたちだって杏だってつらいだけだ。ちがうか?」
「そうですっ……そうだよ、里沙ちゃん」
隣に座る真名が、里沙の肩に手をかけて揺さぶる。
「うん……」
「それに、杏は今、ひとりきりだ。どんなきもちでいるとおもう? 誰があいつのはなしを聞いてやってるんだ? 俺じゃなく、あいつの味方はおまえたちなんじゃないのか?」
とたん、里沙の目にうるっと涙が浮かぶ。
「だって……──」




