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盗作、疑惑

「来るの、遅くなって悪かったな。腹へっただろ?」

「……べつに紫苑のせいじゃないけどね」

「で? なんで部屋にこもってたんだ?」

「──杏が出てったから」


紫苑は首をかしげた。


「杏が出てったなら、おまえが部屋にこもる理由はないんじゃねーのか」

「私のせいで怒って出てったんだよ。真名と千夜になんて言うの? 原稿手伝ってなんて虫のいいこと言えないよ」


紫苑にはますますわけがわからない。

が、ひとつちがうことはわかる。


「あのな。手伝うって何だ。おまえの原稿じゃなく、おまえらの原稿だろ。真名やチーが描くのだって当然だろうが。自分のせいって、責任ひとりで背負いこもうとするのはおまえの悪いくせだな、里沙」


頭を突いた紫苑を、里沙が不満げに見返した。


「だって……」

「仲間なら、誰の責任だろうと、解決に力を合わせるのがふつうだろ。おまえはそうはおもわないのか? 原稿にチーが寝ぼけて墨をぶっかけたら、責任とってひとりで描きなおせって言うか、おまえ?」

「…………手伝うよ。てか、あのときはいっしょにやった」


紫苑は、くしゃりと里沙の頭を撫でた。

やわらかい髪は、千夜や真名とはまるで感触がちがう。


「真名もチーも、おまえのせいだからおまえひとりで何とかしろよ、とかおもってねーよ。そもそも、原因があって杏とケンカしたんだろ? 杏が怒ったのは脅迫の件を黙ってたことらしいけど、おまえが怒ったのは何が原因なんだ?」


紫苑は、リビングに里沙をうながしながら訊いた。

まさか、その一分後、いちど掛けた椅子からおもわず立ち上がって叫ぶことになるとは、夢にもおもわずに────


「盗作──ぅっ?」


紫苑は、ギロッと隣に座る千夜をにらんだ。


「おまえ、そんなこと、ひっとことも言わなかったよな?」

「……だってぇ。疑惑、だもん。それに、たぶん、ギリ、盗作じゃないとおもうし」

「でも、杏は、自分が考えたはなしじゃないって認めた!」

「そんなこというなら私たちだって杏ちゃんに脅迫のこと黙ってたよ。でも、隠してたわけじゃない。事実がおなじでも、全然ちがうよね、そこ!」


千夜と里沙がにらみ合う。

紫苑は座り直すと、間に手を割り込ませてさえぎった。

こんなところで、さらにケンカを始められたら手に負えない。


「つまり、こうか? こないだ、商業誌用に描いたあのSF……あれが、元々は杏の考えたストーリーじゃなかった。おまえらのサイトの告知を見たやつが、出版社に盗作だってメールを寄越して、ストーリー展開や結末がその指摘のとおりだって、出版社から問い合わせが来た?」


真名が、うなずくともなくうなだれる。

紫苑は髪を掻いた。

真名の複雑なきもちはいかばかりだろうかとおもう。


「杏ちゃんは、アイデアをもらったんだって言ってた。そもそも、盗作だって言ってる方は、それを描いたマンガを示してるわけじゃないの。ただ、ストーリーの展開を知ってたってだけで、盗まれたって主張してるんだよ。そういうの、盗作って言わないよね?」

「アイデアが自分のものじゃないなら盗作みたいなもんでしょ!」

「でも! 杏ちゃんは、脅迫受けてるって知ってたらあのはなしを描いたりしてないっていうんだから、黙ってた私たちにも責任はあるよ!」

「あー、うるせー。わかったから怒鳴るなよ」


耳をふさいでぼやいた紫苑を、千夜と里沙の視線が同時に振り返る。



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