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15・仮初めの夫婦を演じましょうか


「……用件を伝える」

ルシアン様の低い声が響く。


「一週間後、王宮で建国パーティが開かれる」

「パーティ……」


なるほど。

その言葉だけで、事を察するには十分すぎるほどだわ。

だってそんな大きなパーティとなれば当然──。


「国内の貴族のみならず、外国からの賓客も招かれる」

「………………」

「……お前の母国、マルボロ王国からも王太子が来るそうだ」


そう、マルボロ王家も参加する。

国王である父の代理としてよく各国に出向いていたから、やっぱりお兄様か。


「さらに、オーレン王国に嫁いだお前の姉も出席する」


お姉様まで……。

思わず、指先に力がこもる。

胸が大きく高鳴り、身体の底から「会いたい」と叫ぶ自分がいる。


けれど私は、それを悟られないようにただ静かに言葉を待った。


「そこで、だ」

ルシアン様の黄金の瞳が私に向けられる。

その目に宿るのは、相変わらずの冷たい光だけ。


「真に遺憾ながら、その場ではお前を“妻”として扱わねばならん。……体裁があるからな」

吐き捨てるような一言。


「王妃が不在では、余計な詮索を招く。特にマルボロの連中にはな」


だから仕方なくお前を1日だけ王妃にしてやろう。

そう言外に告げている。


「よって、お前には王妃として出席してもらう」


最初から拒否権などない、命令、というわけね。

まったく、あれだけの対応をしておいて勝手だ事。

だけど────。


「────承知いたしました」


お兄様やお姉様にお会いできるなら、まぁいいかもしれない。

特にお姉様は嫁いでいかれてからなかなかお会いすることが叶わないのたまから、こちらはこちらで、この状況を利用させて頂こう。


あまりにもするりと出た了承の言葉に、ルシアン様がほんのわずかに眉をひそめる。


「……随分と物分かりがいいな」

「王妃としての役目でございますので」


それ以上でも、それ以下でもない。…………表向きは、ね。


私の言葉に、彼は興味を失ったように肩をすくめた。

「無様な真似はするな。あくまで“王の妻”として振る舞え」


「心得ておりますわ」

「リリィに迷惑をかけるなよ」


いやいや、迷惑をかけそうなのはそちらの方ですけども?

こっちは腐っても生粋の王女ぞ?

……………とは言わない。決して。


「……ええ」

私は全ての言葉を飲み込んでから微笑んだ。


さぁ────。

王妃クリスティ、始動しますか。


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