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魔界の平和は彼らによって  作者: ダイアのナイン
第1章 皇国遠征編
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Chap1 ep6-砂埃舞う、決着の時

 風魔術で急速な勢いを付けた拳は、有用な打撃武器になり得るポテンシャルを持ち合わせていた。地面との衝突によって生み出された弱点を殴りつけると、筋肉質な感触が直に伝わってくる。


 深海の鎧(ディアマンタ)の強引な体当たりは呆気なく交わされ、反撃の隙を与えてしまった。風魔術師の膝が、損耗した鱗に更なるダメージを加える。僅かに飛び上がり体を勢い良く反転、頑強な尾により反撃に成功した。


 眼前まで迫った尾に反応しきれず、回避行動は叶わない。被害を最小限に抑えるため両腕で防御を試みるが、強烈な衝撃と共に激痛が走る。


「折れては、ないか」


 正常に動作する腕を確認し、追撃に備え警戒体勢をとった。しかし陸上戦では分が悪いと判断したのか、再び水中へ向かおうとする深海の鎧(ディアマンタ)を捉える。今度こそ逃亡する可能性もあったが、また飛び込み攻撃をされるのは億劫であった。


 巻き起こされた風によって周辺の砂埃が吹き荒れる。視界が極度に悪化し、水中への逃亡が阻害された。それでもどうにか海への到達を目指す。唐突に、行く手を阻むように男が姿を現した。目の前の獲物に胸を躍らせ、大きく開口する。


「嵐を食ったことはあるか?」


 牙が乱立する口内に向けて、鋭い暴風が撃ち込まれた。丁寧に練り上げられた魔力による風の斬撃は延々と続き、口腔、臓腑をも傷付ける。鎧のような鱗も、体内にまでは及ばなかった。


 深海の鎧は言葉通り開いた口が塞がらない。漸く暴風が止み口が閉ざされたが、もう二度と開くことはなかった。


 砂埃が治まると、横たわり動かなくなった深海の鎧(ディアマンタ)と、それを見つめる風魔術師の姿が露になる。遊歩道からは歓声が上がり、その中にはジャックも含まれていた。到着したマリーズ兵は驚きを隠せない。深海の鎧(ディアマンタ)討伐の目安はおよそ10人~20人。それを相性が悪いとされている風魔術で、それも武器の1つも使わずにたった1人で蹂躙したのだ。


「一体何者だ」


 1人の兵士が尋ねた。


「魔界パトローラーのラドエフ・フローセルだ」


「まさか1人で討伐するとはな。見事だった」


「そりゃどうも。後始末は任せていいな?」


「勿論さ。ご苦労さん」


 まだ僅かに痛む腕に不安を残しつつも、事態が無事に終息したことを喜んだ。観衆からは盛大に拍手が送られたが、戦闘を終えたラドエフに今最も必要なのは急速である。ホテルへの道へ急いだ。


「素晴らしい戦いぶりだったな。班長」


 後ろからの声に振り返ると、ジャックが立っていた。


「お前も見てたのか。加勢してくれれば良かったのに」


「武装解除してたもんでね」


 抗議を唱えるラドエフであったが、確かに武器を持たない状態のジャックと深海の鎧(ディアマンタ)の相性は良くなかった。


 空は赤みがかってきている。空腹を満たすため、2人はホテル併設のレストランへと向かう。偶然にも、ホテルの前でルアナ達と再会した。


「どこに行ってたんだ?」


 ジャックの問いにルアナが答える。


「大市場に行った後に海洋屋敷に行ったの」


「ほう。大市場か」


 ラドエフが興味深そうに呟いた。深海の鎧との戯れがなければ足を運ぼうと考えていたため、羨望の眼差しで見つめる。


「それじゃあ、部屋に戻りましょうか」


 長歩きに疲れた様子のサンティアの呼びかけで、それぞれの部屋へ向かう。



♦マリーズ上級宿


 革張りの椅子に腰掛け、海路図を眺める男の部屋のドアが叩かれる。


「入れ」


 入室を快諾したものの、その目線は海路図から離されない。


「失礼します。デルデノット隊長」


 部屋の主は無言で用件を話すよう催促する。


「どうやら我ら四番連隊の隊員が1人で深海の鎧(ディアマンタ)を討伐することに成功したとのことで、マリーズ大公国軍から感謝状を受け取りました」


 四番連隊長は漸く海路図から目を離した。


「ふうん。本人に伝えてやれ」


「はっ。承知しました」


「待て。そいつの名は何と言う」


「ラドエフ・フローセル班長です」


「そうか。覚えておこう」


 再び海路図に目線を落とす。明日の出港に向けて、不安は募るばかりであった。なるべく魔物が少ないであろう安全なルートで行くことになっているが、それでも遭遇しないわけではない。船上での戦闘経験がある者など、四番連隊にはいないだろう。無事に皇国に到着できることを、心の底から祈った。




♦翌朝、マリーズ港


 港には十数隻の小型船が停泊しており、中々の規模であることが容易に窺える。四番連隊の隊員は全員揃っていた。飛行船に恵まれた者は万全な状態で、そうでないものは地獄のピクニックを経て疲労が溜まり絶望的な状態で整列する。それでも皆、少なからず気分が高まっていた。


 整列する隊員の前に、デルデノット隊長が姿を現す。赤みがかった黒いマントに長柄の斧を装備し、完全武装状態だった。


「よく集まってくれた。これより皇国遠征を開始する。各々船員の指示に従うように」


 吐き捨てるように言い放たれた言葉からは、隊長が抱える憂鬱気味な気持ちが滲み出ていた。


 隊員が次々に船に乗り込んでいき、フローセル班も舟板に足をつけ始める。全隊員が乗船を済ませ、出港が開始された。

どうも。久しぶりの♦9です。第10話までご覧いただきありがとうございます。ここまではGWの10連休を使って書き溜めたものなのですが、これ以降は空いた時間に執筆する形となるため、不定期に更新していきます。完結までどれくらいかかるかはわかりませんが、長編になりそうな感じです。学生ですので、大型連休を使って頑張って完結まで持っていこうと思います。どうか温かい目で見守ってください。 ♦9でした。

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