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悪意の神戦 その2

《<身体能力低下>!<行動速度低下>!<行動遅延>!》


ノーナの魔法が『悪意の神』に当たった。

『悪意の神』はすぐに身体の異変に気付いた。

思った通りにからだが動かない、動かしづらいと。

まるで粘着質のドブに浸かっているような感覚。


『悪意の神』はこの異常を取り除こうと神気を解放しようとするも、俺に静也に止められた。

からだが思うように動かないもどかしさと苛立ちで冷静さに欠けていた。


ノーナは再び詠唱を開始した。

そうはさせまいと『悪意の神』はノーナに向かって咆哮を浴びさせようとする。

ただの咆哮ではない。

地面が抉れる衝撃、生物が畏怖、畏縮する恐ろしい咆哮だ。


だがそれも静也に止められる。

ノーナの前に立ち、傘を開き防御したのだ。

それを受けた当の静也は何も受けなかったかのようだ。



確実に入ったはず、しかも強力なヤツを。


『悪意の神』がそう思うのも仕方がない。

先程の攻撃は確実に殺す気持ちで放ったものだ。並の者ならば、大抵は吹き飛んで死んでいるか、いきていても全身の骨が折れ、戦意も喪失している。


それなのに、目の前の男(静也)はケロっとしているのだから、驚愕するのもしかたない。


しかし、静也がノーナの近くに立ったことで神気を解放するのに十分な隙になった。

『悪意の神』は、神気を解放し、状態異常を回復させた。

それだけでは終わらず、身体能力が向上した。


今度こそ殺す、と言わんばかりの表情を静也とノーナに向ける。

神気の混ざった威圧だ。どんな生物であれ最低でも畏縮するはず。


威圧は二人に当たり、ノーナと静也は一瞬の硬直を許してしまう。

それだけには留まらず、ノーナは圧倒的な存在感に気圧され尻餅をついてしまう。さらに、身体が震え、立つことがままならない。

つまりは恐怖したのだ。


やはり、神を相手にするのはおかしかったのだ、と今さらになって後悔している。

だが静也は、震える身体に渇を入れ、『悪意の神』に立ち向かっていた。

その後ろ姿にノーナは一種の憧れを抱いた。


『ほう、恐怖している身でありながらも、俺に立ち向かうか。大した胆力だ。』

「お褒め授かり光栄ですよっ!」


静也の恐怖心は隠しきれていない。目の前の敵が異形の化け物に見えるほど恐怖で発狂したい気持ちでいっぱいだったからだ。

しかしそれでも発狂しなかったのは、単に後ろにいるノーナを守りたいと思ったからである。


《スキル<悪食の傘>の使用条件の一つが解放されました。解放条件の一つは『恐怖からの克服』でした。不完全な状態で使用した場合代償が課せられます。》


そんなアナウンスが、脳内に聞こえる。

しかし、恐怖であまり気にしていなかった。


静也は傘を二本召喚し、傘融合させる。

そして融合した傘(以後は『融合傘』と呼ぶ)を左手に持ち、構える。

左手に持つことに意味はないが。


依然変わらぬ異常性を秘めた傘。

まるで刀のような妖しい光を放つ傘の生地。


『悪意の神』は先手を取ったと思い静也に攻撃をした。

いまの『悪意の神』の肉体はまるで「鉄球」、筋肉は膨張し、血管は浮き上がり、妙に艶のある肌をしている。

優男のような表情は今はなく、ニタァと汚ない笑みを浮かべた悪魔のようだ。


『悪意の神』の攻撃をかわし、それと同時に傘を右手に持ちかえ、凪ぎ払いを彼の横腹に与える。

筋肉が膨張しているせいか、手応えが強く、片手でバッティングでもしているような重さを感じた。


『悪意の神』の反応はあまりよろしくはない。

横腹に打撃痕と煙がでている。骨にまでは届かないと見た。

しかし彼の表情は痛みで苦悶している。

続ければ必ず倒せる。

だが、苦労はする。持久戦に持ちかけるのもいいが、


それを見ていたノーナは恐怖を克服し、詠唱を開始した。


ノーナの魔法ほ攻撃、防御、支援、どれをとっても一流だ。

勝負する上では確実に役に立つ。

あるのと無いのとでは雲泥の差が生まれる。


肉体戦は静也、魔法支援はノーナという二人パーティーならば定石だ。

だが、この二人は常識のうちに収まらないのだ。

二人が揃えばどんな強敵も倒せるだろう。


ノーナの詠唱が終わり、再び同じ魔法を『悪意の神』に食らわせる。

動きが鈍くなったのと、静也に攻撃されることで、『悪意の神』の怒りはピークに達した。


『くそがぁぁ!俺の邪魔をするなぁ!』

「んなっ!化け物か?」


まるで、鎖で繋がれ、拘束された生物が無理やりその鎖を引きちぎろうとしているかのような迫力で静也に迫る。

あまりの迫力に静也は引け腰になる。


『悪意の神』の巨大な拳が迫っていた。

傘を広げ、防御するのもいいが、その間に神力を解放されたら困る。

ならば迎え撃つかと考えたが、目の前の化け物の近くに居られる余裕というより度胸がそもそもあまりない。


だから、静也は別の選択肢を選んだ。

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