第35話「梨衣のフラストレーション」
遅くなってしまいましたが、第35話目になります。楽しんで頂ければと思っております。
第35話「梨衣のフラストレーション」
「はうぅぅぅぅ」
梨衣は生徒会室で書類の整理をしていた。それを終えると、机に突っ伏してしまう。最近、成未と過ごせなくて成未成分が不足していたのだ。
「梨衣、そんなになるなら後輩くんの所にいけばいいじゃん」
副会長である松井茉依は、梨衣のそんな姿を見てそう言われずにはいられなかった。
「確か、成未くんは咲姫ちゃんと一緒に買い物に行って来るって言ってたかな」
「何だか最近、後輩くんが梨衣に構わないで、妹ちゃんといることの方が多くない? まさか! 梨衣、あんたフラれたの?」
「縁起でもないこと言わないで! 私は成未くんにフラれてません!」
「じゃあ、捨てられた?」
「ま~い~! 成未くんはそんなことしないもん!」
梨衣はそう言うと、拗ねたように頬を膨らませている。
「ああ、ごめんごめん」
茉依は慌てて謝ると、梨衣に抱き着いていく。
「でも、こんなにかわいい梨衣を構わないで、他の子にほいほいしている後輩くんには、あたしからの怒りの鉄槌をくれてやらなきゃいけないかな」
「私の未来の旦那様にそんなことしないで!」
梨衣のその言葉に、茉依はにやにやと笑うと、両手をワキワキさせてそのまま梨衣の胸を鷲掴みにした。
「おやおや、梨衣も随分と言うようになったのぉ~。と言う事は、この豊満なお胸も後輩くんに揉みしたがれてるのかな?」
「ひゃぁ……いや……んっ……成未っ……くんはぁん……そんなこと……しない……もん……い……や……んんッ!」
梨衣の声からは扇情的な声が零れ、女の茉依でも情欲を駆り立てられた。
「こんなものすごい感じなのに手を出さないとか、後輩くんはチキンなのかな?」
茉依はそう言いながらも、梨衣の胸を揉む手をさらに強めていく。それに合わせ、梨衣の声はさらに喘ぎ声に似たような声になっていく。梨衣の制服も乱れ、この状況を世の男たちが見たら、一瞬で獣になるであろう状況まで、梨衣の状況は乱れていた。
「う~ん、何だかいけないことをしている気分になってきた」
「だったら……もう……やめて……よ……」
茉依もそのつもりではいるのだが、何だか止め難い魅力が梨衣の胸にはあった。確かな質感もさるごとながら、その触り心地も極上の一言で、これを触ってしまったらやみ付きなるごと間違いなしと思ってしまうぐらいに、梨衣の胸は魅力的だった。そして、梨衣にとっての不幸は続いてしまう。
生徒会室の扉が外から開かれたのだ。そして、そこに立っていたのは成未だった。
「えっ?」
成未は扉を開けた状態で固まってしまう。
「あちゃー、これってまずい状況って奴だよね」
茉依は呑気にそんなことを言っている。
梨衣の叫び声が、生徒会室に響き渡るのは、それからすぐのことだった。
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「ぐすっ……もう私お嫁にいけないよぉ~~」
俺は絶賛かつてないほどの修羅場に遭遇していた。
早めに咲姫との夕飯の買い出しを終えた俺は、まだ帰って来てなかった梨衣のことを迎えに来ていたのだ。
最近、咲姫と帰ることが多かったので久しぶりに梨衣と帰りたいと思ったからだった。しかし、そう思ったのがいけなかったのか、いざ生徒会室に来てみると、そこには松井先輩に胸を揉みしたがれてあられのない姿をし、床にぺたりと座り込んだ梨衣の姿があったのだ。制服はすでに着崩れており、ブラウスから梨衣の白い下着がちらほらと見え隠れしていて、下の方もかなり際どい感じになっていた。
そして、梨衣が瞳に涙を溜めて悲鳴を上げるのにそう時間はかからず、先ほどの梨衣のセリフになるのだった。
「いやいや、お嫁にいけないって、梨衣ならいくらでも行くところがあるだろう」
俺の言葉に納得がいかなかったのか、梨衣は両目に涙を溜めたまま、キッとこっちを睨みつけてくる。
「もう! そういう事じゃないわよ! 成未くん!」
「はっはい!」
突然、名前を呼ばれて驚いてしまうが、俺は梨衣の顔を真っ直ぐ見た。
「責任取ってよね!」
梨衣は顔を真っ赤にしながら、そんなことを言ってきたのだ。
「なっ! ちょっと待ってくれ梨衣! 女の子の責任取ってよね発言は色々とまずいから!」
これってライトノベルやマンガ、ゲームなどでは下手すれば婚約者ルートに入って行ってしまう奴だから! もしくは恋のA、B、Cの最終段階に行ってしまう可能性があるセリフだから! 頼むから他の男には言わないでくれ!
俺は心の中で全力でそう叫んだのだが、梨衣は俺の言葉を聞いてさらに泣きそうな顔になってしまう。
「成未くん、私より咲姫ちゃんが好きなのね」
仕舞いにはそんなことを言い始めたし。
「ああ、もう!」
俺は頭をかきむしると、覚悟を決めて口を開く。本当は卒業式とかそこらへんに梨衣にプロポーズする予定だったんだけどな。
「梨衣、俺は梨衣のことがこの世で一番大好きだ。梨衣とこの先もずっと一緒にいたいって俺は思ってる。だから、俺と将来結婚してくれたら嬉しい! そして、ずっと一緒にいてほしい」
俺の言葉に梨衣の瞳は驚きで見開かれている。そして、梨衣の瞳から涙がぽろりと零れていく。
「はい。私を成未くんのお嫁さんにしてください」
梨衣はそう言って微笑んだ。その微笑みは、一生忘れることの出来ない微笑みだった。
こうして、俺と梨衣は婚約者同士になったのだった。
「お~い、あたしがいるのにナチュナルにイチャつくな」
良い感じに纏まったと思っていたら、松井先輩が横槍を入れてくる。
「そういや、こうなったのって松井先輩のせいじゃなかったでしたっけ?」
「あれ~そうだっけ? てへぺろ!」
てへぺろって、今あまり使われていないよな? てか問題はそこじゃねぇ!
俺がそう思っていると、松井先輩は逃げるように生徒会室を出て行った。
「あっ! 逃げやがったし!」
俺は松井先輩を追おうかとも思ったがそれは叶わなかった。何故なら、梨衣が俺に抱き着いて来て身動きが取れなかったからだ。
「梨衣?」
突然の梨衣の行動に俺は戸惑ってしまう。
「成未くん温かい」
「そりゃあ、生きてるからね」
「ふふ、何それ」
梨衣は楽しそうに笑うと、俺の胸に顔を埋めて頭をぐりぐりとしてくる。梨衣が動く度に、梨衣の髪が鼻孔をくすぐり心地い気持ちになってくる。
俺はそんな梨衣の頭に手を置くと、そのままよしよしと撫でていく。気持ちよかったのか、梨衣は猫みたいに目を細めて笑っている。
俺たちはしばらくの間、お互いの体温を共有していたのだった。
「さてと、そろそろ咲姫の夕飯が出来る頃合いだし帰ろうぜ」
「もう、せっかく良い雰囲気だったのに、普通、他の女の話題を出すの」
梨衣は少し怒ったように、口にしてはいるが目は笑っているのでそこまで怒ってはいないだろう。
「別にそう意味で言ったんじゃないんだけど。それに咲姫はそんなんじゃなくて妹だよ。今も、これから先もずっとな」
俺は確かな決意を持ってそう口にした。だって、咲姫は妹だ。それはどんなことがあったとしても変わらない。
「でも、昨日は一緒にお風呂に入ってたよね? しかも抱き合ってたし」
梨衣は疑う眼差しで、こちらをジト目で見てくる。
「え~と、その件は本当にすんませんでした!」
俺は勢いよく頭を下げた。それを言われたら何も言い返せる気がしない。だって、一緒に入っていたのはどうしたって事実なわけだし。
「どうしたら、許してくれる?」
「それじゃあ、私のお願いを聞いてくれる?」
梨衣は上目遣いでそう言ってくるため、俺は首を縦に振るしかなかった。
「それじゃあねぇ……」
梨衣は耳元に唇を持ってくると、そのお願い事を囁いた。
その梨衣のお願い事はかわいすぎるもので、俺は即答で頷くのだった。
『一日、1時間は私との時間を作ること』
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それから、梨衣が荷物をまとめ終わるのを待ってから、学校を後にした。2人の手はしっかりと繋がれていて、傍から見たら仲の良いカップルのそれだった。
「こうして、成未くんと2人っきりで帰るのも随分と久しぶりだね」
「ああ、確かにそうかもしれないな」
ここ最近は咲姫と帰ることが増えていたし、そうじゃなくても、咲姫と梨衣と俺とで帰ることが日常になっていたからな。
「もう、せっかく未来のお嫁さんと2人っきりなのに、嬉しくないの?」
適当な返事をしたつもりはなかったのだが、梨衣はそう思ったのか俺の前を歩くと振り返り、頬を膨らませて立っている。
俺はそんな梨衣に首を横に振って答える。
「そんなわけない。ものすごく嬉しいさ。でも、何て言うか、改めて思ったんだよ。隣に梨衣がいてくれることが、こんなにも幸せなことなんだって」
「なっ!」
梨衣の顔は見る見るうちに、真っ赤に染まっていく。俺はそんな梨衣の頭を撫でると、手を取って再び歩き出した。
「もうバカ。ますます好きになっちゃうでしょ」
梨衣の呟きは小さすぎて聞こえず、俺は聞き返そうと振り向こうとしたが、梨衣が俺の腕に抱き着いてくる。
「急にどうしたの?」
「う~ん、今日は腕を組んで帰りたい気分なの」
そう言って、梨衣は抱き着いたまま離れないので、俺はそのままにしておく。それに、ずっと咲姫の一件でこうして梨衣とはゆっくり話せていなかったので、良い機会だったと俺は少なからず思っていた。
ゆっくりと歩いていたつもりだったのだが、あっという間に家についてしまう。それぐらいに、梨衣との時間が充実していると言う事だろう。
「梨衣、そろそろ離れてもいいんじゃないか?」
さすがにこのまま入るのはまずいと思ってそう声をかけたのだが、梨衣は離れようとはしなかった。
「ああ、そうだ成未くん。一つ言い忘れてたことがあったの」
「言い忘れてたこと?」
はて? 一体何だろう?
「私たちってもう婚約者同士になったじゃない?」
「まあ、親とかのあいさつとかは後日だとしても、一応はなったよな」
「じゃあ、咲姫ちゃんとの件もしっかりとケリを付けてよね。じゃないと、私、実家に帰らせてもらいますから」
マジか! つうか、本当に俺が好きなのは梨衣なんだけど!
俺はそう思いながらも、はいと答えるしかなかったのだった。
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