第19話「2人の同棲生活開始?」
第19話目になります。今作もお楽しみ頂ければと思っております。
第19話「2人の同棲生活開始?」
あれから、家に帰った俺は咲姫に説教を受けていた。しかも、咲姫の部屋で正座までさせられていた。
「自分から確認しておいて、買い物を忘れるってどういうこと? それに、なぜか四ノ宮先輩がいるし」
「えっとな、咲姫。これには深い深ーい理由があるわけでして」
「ふーん、なら聞いてあげるから言ってみなよ」
一応は聞いてくれるのな。優しい妹を持ってお兄ちゃんは幸せです。
「ああ、実は……」
俺は未世、母さんが学校にやってきたこと。そして、梨衣を狙って行動するかもしれないことを咲姫に話していく。
「お兄、それって本当なの?」
「ああ、本当だよ。まさか、こんなに早く来るとは思ってなかったけど」
「えっとね、実はお母さんから言われていたことがあったの。そろそろ、来そうな気がするから警戒しておけって」
「夏美さんが?」
夏美とは、咲姫の母親で今の俺の親でもある人物だ。
「うん、やっぱり、お母さんの予想は当たってたんだね」
「それで、夏美さんはなにか他に言ってたか?」
「えっと、もし接触してきた場合はすぐさま連絡を入れろって言ってたと思う」
「分かった。この件は俺があとで夏美さんに連絡するよ」
「うん。それは別に良いけど、大丈夫なの?」
「俺は大丈夫だけど、梨衣の方が心配かな。なんせ、あの人は梨衣に援助交際させる気かもしれないからな。それと、咲姫も警戒しといてくれ」
「うん、分かってる」
咲姫はやっと微笑んでくれた。
「あっ、四ノ宮先輩のことちゃんとお母さんに説明してよね」
「わっ分かってるって」
さて、夏美さんになんて説明しよう。
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リビングに戻ると、そこにはなんとも言えない料理が広がっていた。
「あれ? 今日って肉野菜炒めの日だったよな? それがどうして華麗にロールキャベツと野菜スープにグラスチェンジしてるんだ?」
「咲姫ちゃんとのお話は終わったの?」
梨衣はエプロンを外しながら、そう俺に聞いてくる。
ああ、もうちょっと見たかったな。なんだか制服エプロンって、なんだか萌えるシチュエーションだよなっと、俺は場違いなことを思いながら言葉を返した。
「ああ、終わったけど。まさか、これ梨衣が作ったの?」
「うん、これからここでお世話になるんだもん。これぐらいはさせてほしいな」
させてほしいなって、あの短時間でこれを作るって、どれだけ料理スキル高いんだよ!
「お兄、なに鼻の下伸ばしてるの?」
「伸ばしてねぇよ!」
誤解も誤解でいいところだ。
「まあまあ、とにかく食べよ。ね?」
梨衣の言葉で俺たちは席に着いた。
夕飯を食べ終えた俺は、早速夏美さんに電話をしていた。
『やっぱり、接触してきたわね。それで、一体なにを言われたの?』
「俺を連れ戻しに来たって言われたな」
『だとは思ったわよ。それで、あなたはどうするつもりなの?』
「戻ろうとは思いませんよ。今は夏美さんが俺の母親です」
電話越しにクスリと笑う声が聞こえる。
『あら、嬉しいことを言ってくれるじゃない。それで、話はそれだけじゃないんでしょ?』
やっぱり、バレてるか。
「えっと、夏美さん。実はしばらくの間、友達を家に泊めたいんですけど良いですか?」
『友達、友達ねぇ~。友達ではなくガールフレンドでしょ?』
「どうしてそれを知ってるんですか!」
なぜに俺に恋人が出来たって知ってるんだ?
『うふふ、母親は息子のことなんでもお見通しなのよ。それと、泊めるのにもなにか理由があるんでしょ?』
「そこまで分かってるのか。実は、あいつが俺の恋人を狙ってる」
『どういうことか説明しないさい』
俺は夏美さんに、今日あったことをすべて話した。
『そう。やはり、どこまでいっても、あの女は屑ね。分かったわ。家に泊めることを許可します。ただ、3日はまだ帰れそうにないの。3日だけ時間を頂戴。なんとかしてあげるわ』
「夏美さん、ありがとうございます」
『いいのよ、別に。子どもを守るのも大人の役目よ。ああ、それと成未。一つだけ大人からの忠告よ』
「ん? なんですか夏美さん?」
『する時はちゃんと避妊をしてからするのよ』
「するわけねぇだろ!」
俺は思わずスマホに向かって叫んでしまう。この人はいきなりなにを言っているのだろうか。
『うふふ、それじゃあ、3日後に帰るわ。その時にはちゃんと紹介してよね』
「分かってますよ。そっちも、仕事頑張ってください」
『うん、当たり前よ』
そうして、通話は切れた。
夏美さんが元気そうでよかった。それに、あいつのこともどうにかなりそうだ。これで少しは安心できるかな。
「さてと、風呂にでも入って、小説の続きでも書くか」
俺はそう思い風呂の準備をして、脱衣所のドアを開けた。そしたら、目の前に処理しきれないほどの肌色が飛び込んでくる。
「えっ?」
なにこれ、どういう状況?
目の前には今まさに風呂場に行こうとしていた梨衣の姿があった。梨衣の表情を見ると、驚愕の色に染まっていた。そりゃあ、当たり前の反応か。
「えっと、成未くん? これは一体どういうことかな?」
「すみませんでした!」
俺は全力で謝ると、素早く扉を閉めた。その時に見えた梨衣の胸とかお尻とかは、見なかったことにする。
「はぁ~、びっくりした」
「そうね。本当にびっくりしたよ」
「はいっ?」
俺は油の切れたブリキ人形みたいに、横を向いた。そこには鬼の形相をした咲姫の姿があった。うん、俺やばくないか?
「お兄、一体なにをしてるの?」
「えっ? 別になにもしてねぇよ。うん。ああ! そうだ! 俺小説書かなきゃいけないから部屋に戻ってるわ!」
そう言って、俺は逃げようとしたが咲姫に腕を掴まれてそれは叶わなかった。
「ねぇ、お・に・い。さっきのこと説明してくれるよね?」
にっこりと笑っている咲姫ではあったが、今は逆にそれが怖い。
「えーと、勘弁してください!」
「それで、四ノ宮先輩の裸はどうだった?」
「そりゃあ、とても言葉では言い表せないぐらい……あっ」
俺はやっと咲姫にはめられていたことに気が付いた。
「お兄のバカ―――――――――――!」
俺の悲鳴が響き渡ったのは言うまでもないだろう。
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「ったく、咲姫の奴、あんな思いっきり殴ることねぇのに。風呂に入ったときめちゃ沁みて痛かったぞ」
俺はそう嘆きながら、キーボードをカタカタと進めていく。
「でも、さっきのはさすがの私もびっくりしたよ」
梨衣は俺のベッドに入りながらそう言ってくるので……
「あれは不可抗力だろ。鍵がかかってなかったから誰も入ってないもんだと思ったんだよ」
「でも、成未くんなら見られても良いかなって思ってたけど……きゃっ! 私ったらなにを言ってるの」
梨衣は恥ずかしくなったのか、掛け布団を頭で被って姿を隠してしまう。
「恥ずかしいのならなぜ言った?」
俺は疑問に思いながらも、先ほどの光景を思い出してしまう。
梨衣の体、めちゃくちゃ綺麗だったな。肌も白くてきめ細やかだったし。
そこまで考えて俺は頭を振って煩悩を振り払った。俺だって思春期男子ですし、そういうことは考えたりはするが、だからと言って、本人が目の前にいるのにあれやこれを妄想するのもどうかと思う。
今はとにかく小説に集中、集中! ptを集めるためには定期的なPv数を得ておかなければならない。なぜなら、その話では入れてなくても次の話で入れてくれる可能性があるからだ。それに、綾人みたく天才じゃない俺はその一定数を維持するのでも難しく、毎日のように更新していかないと、せっかく得た読者を手放すことになってしまうことになるかもしれない。それは避けたいことでもあったので、俺は日々作品作りに追われているというわけだ。
「それで、あの男には勝てそうなの?」
ベッドに入っていたはずの梨衣が、いつの間にか俺の後ろにいて俺にしなだれかかってくる。その際に、俺と同じシャンプーの匂いや、背中に当たる二つの柔らかな感触に俺はものすごくドキドキしてしまう。
「うーん、今のところではまだなんとも言えないかな。だけど、梨衣の所でも紹介してくれているから、なんとか前よりもPv数は上がっているから、あとは俺がいかに面白い作品を書けるかだと思う」
「そっか。ならよかった。ちゃんと、私成未くんの役に立ててるんだ。私が成未くんの傍にいても問題ないよね?」
「役に立つとか、役に立たないとかそんなことは関係ないさ。梨衣が俺の傍にいてくれるだけで、俺はこんなにも頑張れるんだから」
俺は梨衣にキスを落とすと、パソコンを閉じた。きっと、また綾人は動画配信で宣伝活動を行っているのだろう。だけど、そんなの関係ない。俺は俺のやり方でptを集めるだけだ。
俺は梨衣をお姫様抱っこで抱え上げると、そのままベッドに寝かしつけた。俺もその隣に入り込んで寝ころんだ。
「成未くん、大好きだよ」
「ああ、知ってるよ」
「ずっと、あなたの傍にいたい。私は成未くんの傍にずっといていい?」
「むしろ、それはこっちからお願いしたいかな」
「なに、それってプロポーズ?」
「プロポーズはまだ早いんじゃないか? 俺はまだ結婚できる年じゃないですし!」
「あはは、そうだね。でも、いつかしてくれるといいな。プロポーズ」
どうして、梨衣はこうまでも俺のことを好いてくれているのだろうか? でも、俺としては嬉しい限りだった。
「ああ、いつか必ずするよ。プロポーズ」
俺はそっと梨衣の額にキスをした。
「ふふふ、そこだけで満足なの?」
「いーや」
俺は梨衣の言葉に導かれるようにして、梨衣の唇にもう一度キスをする。
そんな俺を梨衣は優しく受け入れてくれる。何回か啄んだあと、俺は梨衣の中に舌を滑り込ませた。中に逃げていた梨衣の舌を捕まえて絡めていく。
「んっ……ふぁ……あっ……」
梨衣の口から漏れる吐息は、俺の情欲を掻き立てるには十分だったが、なんとか理性でそれを抑え込み唇を離した。
お互い浅い呼吸を繰り返していた。
「もう、成未くん。恋人に……なった瞬間……から積極的だよね」
「そっそれは」
だって、ずっと我慢してたし。
呟いたつもりだった俺の言葉は、しっかりと梨衣の耳に入っていたらしく、梨衣は「成未くん」と呟くと、俺の頭を自身の胸に抱き寄せた。
「うふふ、成未くん。かわいい」
「それって男としてはどうなんだ?」
「別にいいんじゃない。褒め言葉なんだし」
梨衣は俺の額にお返しのキスをしてくると、そのまま目を閉じた。
って! おいおいまさかこの状態で寝るのか! 俺の理性が持ちそうにないし、ドキドキしちまって寝れる自身がないぞ。
俺はそう抗議しようとしたが、幸せそうな顔で眠りについた梨衣を見てとてもそうは言えなかった。
「おやすみ、梨衣」
俺も梨衣にそう告げると、眠りにつくことにした。不思議と梨衣の腕の中は安心できて、眠気はすぐにやってきた。
こうして、俺と梨衣の同棲生活は始まったのだ。
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