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おめでとう、俺は美少女に進化した。  作者: 和久井 透夏
第24章 女子力の敗北
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第193話 約束

「あ、そうだ、鰍、ちょっと待ってて」

 嬉しくてしばらく寄り添っていたけれど、ふとある事を思い出して俺はかすみから身体を離す。

「どうしたんだにゃん?」


 かすみは不思議そうに首を傾げた。

 俺はリビングの端にある三段ボックスからある物を取り出してかすみに渡した。

 今日会ったら渡そうと思ってすっかり忘れていた。


「これ、このマンションの鍵と元々住んでたのアパートの鍵。鰍に持ってて欲しいなって」

 最近は大体週の半分かそれ以上をお互いの部屋に泊まりあったりと、もはや半同棲状態に限りなく近い状態になってきているので、そろそろ合鍵を渡しておこうと思っていたのだ。


「……じゃあ、今度鰍の住んでる部屋の鍵を渡すにゃん」

 かすみは渡された鍵を見て一瞬きょとんとしたものの、すぐに笑顔になって今度俺もかすみの住む部屋の鍵を渡してもらうことになった。


「楽しみにしてる。それと……さ」

「まだ何かあるのかにゃん?」

 俺が言いかければ、かすみは不思議そうに俺を見る。

 言うなら今だ、と思ったら急に緊張してきた。


「うん。その、すぐには無理だけど、俺は本気で鰍と家族になりたいと思ってる…………って、言っておきたくて……」


 今すぐどうこうという訳では無いのでただの口約束なのだけれど、コレは俺自身のけじめでもあるので、どうしても言っておきたかった。


 緊張のあまりかすみの顔を見られなかったけれど、ずっと返事が無いので、だんだん不安になって恐る恐る顔を上げてみれば、にんまりと笑ったかすみと目が合う。


「言質とったにゃん。将晴、男に二言は無いにゃん?」

「も、もちろん……」


 こんな短いスカート穿いておいて言うのも変な気はするけれど、俺が頷いて答えれば、かすみは左手の小指を立てて俺の前に出してきた。


 俺も左手の小指を出して絡めれば、かすみがはにかむように笑う。

「約束にゃん!」

「うん、約束」

 釣られて俺もなんだか気恥ずかしくなってしまったけれど、顔がにやけるのを抑えられない。


「それにしても、なんで将晴は今日、すばるの格好をしてるんだにゃん? 普段は来客やまた出かける予定でもない限り帰ったらすぐに化粧を落として着替えてるのに」


 二人でケーキも食べ終わり、話が一段落してテーブル横のソファーでくつろいでいると、思い出したようにかすみが尋ねてきた。


「えっと……鰍はすばるの格好の方が好きなのかなと思って……」

「つまり、鰍のためだけにわざわざ着替えてメイクして待ってたのかにゃん?」

「まあ……」

 そう言われると、急に恥ずかしくなってきた。


「ふーん? 鰍は普段の将晴もすばるもどっちも好きだけど、そんなに思われてるなら鰍もその気持ちには応えたいにゃん」

 どこかわざとらしい口調でかすみは言いながら、するりとその細い指で俺の太ももの内側を撫でる。


「……っ! 鰍?」

 突然の事に驚いて鰍の方を見れば、少し動けば触れ合うほどすぐ近くにかすみの顔があった。

 どんどんかすみの顔が近づいて来て、同時に身体もゆっくりとソファに押し倒される。


「すばる、鰍とチョコレートプレイ、するかにゃん?」

 耳元でかすみの声が聞こえて、背筋にゾクゾクとした感覚が走る。


「嫌なら無理にとは言わないにゃん」

 少し身体を離して、俺の顔を覗き込むようにしてかすみが聞いてくる。


 答えなんて決まっていた。

「………………する」


 次の瞬間、かすみがニヤリと笑った。

 かすみの方がずるいと思う。



Fin.

ここまで読んでいただきありがとうございました。

Web版の第49話まで収録した書籍版『おめでとう、俺は美少女に進化した。』はカドカワBOOKS様より発売中です。

追加エピソードもあり、Web版より読みやすくまとめております。

よろしかったらご覧ください。

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[良い点]  日常生活が女装に侵食され過ぎて、男としての感性がよく保ってるなぁ!? [気になる点]  バラエティとか、仕事の付き合いで女友達は増え続けそう、今で言うと動画サイトでのコラボとか、本人が望…
[一言] 2022/01/03 また読みたくなって読み直して、今日一日でなんとか読み終えることができた。この作品大好きです!
[一言] 観るのは2回目(前回は4年前)で、友人に勧めたのを機にもう一度観てみました。 結末が少しだらだらしていると感じたものの、それでも楽しめました。
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