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勇者をクビになりましたので、遠慮なく本懐を遂げさせて頂きます!  作者: えみお


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1:勇者は帰還す…王焦る。

「よくぞ帰還したな、勇者殿」


 そう言った男の禿頭の上には金冠が輝いている。

 白い髭と脂肪を豊満に蓄えた男・・・第65代国王の目の前に傅くのは、1人の若い男だ。

 歴戦の猛者と言うには余りにも幼く、騎士に例えるには貧相な衣服・・・。

 ・・・しかしその金髪の少年こそ、このセンチュリー王国に代々伝えられし『聖剣』に選ばれた勇者・・・ジン=グラム。 

 先日、たった1人で魔王征伐を果たした、まさに英雄だった。


「はっ・・・陛下の命、果たすのが、遅くれたことを陳謝いたします」


「よいよい。今回の遠征にて遂に魔王を討伐し、首を持ち帰ってくれた。それが民にどれだけの安心を与えられていることか・・・貴公には唯々感謝しかないぞ」


「はっ・・・有り難き幸せ」


「さて・・・そんな勇者殿には褒美を取らせなければならぬな・・・」


「いえ・・・滅相もない。この国の民を守ることが出来たのであればそれに変わる褒美はございません」


「そう言うな・・・。これだけの功績だ。それに見合う褒美を与えねば、王の威信も揺らぐというもの。後日改めて褒美を授ける日を設ける。それゆえ、今日は長旅の疲れを癒やすべく、この城でゆるりとしていけ」


「はっ・・・ではお言葉に甘えさせて頂きます」


 そう言って退出する勇者ラインハルトの姿が扉の向こうに完全に消えるのを見計らったかのように、臣下の官僚達が数人現れる。

 その顔に浮かぶのは、魔王が討伐され、この国に平和がもたらされたことによる歓喜・・・ではなく・・・




「王よ!一体どうなされるつもりですか!?」




 悲嘆に暮れた表情であった!


「なあ、ドワールよ・・・ホントにどうにもならんのか?」


「なりません!」


「どうしてもか・・・?」


「どうしてもですっ!」


 財務官僚であることを示す緑の法衣に身を包み、王ほどでは無いが肥えた身体を揺らす男・・・ドワールへの再三の確認を一蹴され、いよいよ万策尽きたことを悟った王は、自らに近しい閣僚達の中心でこう叫ぶのであった。




「なんで・・・なんでワシはあの宝に・・・勇者への報酬に手をつけてしまったのじゃあ!?」




 広い謁見の間をこだまする嘆きの声・・・。

 しかし、ドワールに同情の余地は無かった。


「何を分かりきったことを今更・・・全てはあなた様の酒癖や女癖・・・そして賭け事に対する尋常ならない執着がもたらしたことでしょう!」


 優秀な財務官僚の正論に、他の閣僚達も首肯を返す。


「だが・・・まさか、たったあれっぽっちしかないなど、思わぬではないか?」


「はぁ・・・あれっぽっちと申しますが、あれだけあれば、勇者が住んでいた辺境の村では3世代の家族が数十年は働かずに暮らせますよ」


 ドワールはそう言って王の金銭感覚のズレを指摘する。

 

「なっ!?そんなわけあるか!?事実ワシはアレを1年で使い切ってしまったのだぞ!?」


「・・・そりゃ、あんなお金の使い方をしておられればそうなるでしょう。勇者達の活躍で城下は平穏が保たれているのを良いことに、大層羽振りの良い行いをしていたではありませんか?ある時は、気に入った女には金銀財宝を思うがまま与え、別の日は高級酒のグラスを片手にギャンブルに精を出す日々・・・。あんなことをしていては金銭が幾らあっても足りません!」


「うむむ・・・しかしお主らだって忠告・・・」


「しました!再三に渡って致しました!」


 周囲の閣僚達は再び揃ったように首肯する。


「お、おぬしら一体どっちの味方じゃ!?我は国王じゃぞ!?」


 終いには面倒臭い恋人の様なことを言い出すこの国の王に対し・・・


「なら、この国の為に命がけで戦ってくれた勇者に渡す金を使い込むなよ!?」


 思わずため口になってしまうドワールであった。


「しかし、どうする・・・勇者がこんなに早く魔王を討伐してくるなぞ思っておらんかったからな・・・余分な金銭など何処にも無いんじゃろ?」


「はい。陛下はそのあたりのことについて門外漢でしょうから説明しますが、この国は今、深刻な不況に陥っています。魔王誕生と共に現れた魔物と呼ばれる生き物を対峙すべく、我がセンチュリー王国は多くの傭兵を雇い入れました。そこに多くの資金を投入しています」


「傭兵?そんなの聞いとらんぞ!?」


「何度も言いましたっ!そもそも我が国の兵だけではとても魔物共の侵略に太刀打ちできませんでしたよ・・・。傭兵達にはかなりの大金をふっかけられましたが背に腹は代えられませんから、殆ど言い値を支払っていたんです。ですが、当然被害を皆無には抑えられませんから、壊滅した町村の者達を王都に迎え入れたり、復旧の為の金銭を工面したり・・・ああ、あと値上がりした他国からの食料品が国民に行き渡るように、国で一旦買い上げてから、市場に安く卸していましたので、そこにも多くの金銭が投入されています」


 周囲の閣僚達の首肯が再び重なる。

 彼等も、逼迫した財政からどうにか費用を捻出しようと四苦八苦していたのだ。

 きっと皆、当時の辛い事務仕事のコトを思い出しているのだろう・・・。

 ただ1人・・・国王を除いて。


「た、他国からの品々が高くなったとは・・・一体どういうことじゃ?」


「はぁ・・・あれだけ高級酒を買いあさっておきながら、値段が上がったことに気付かれておられなかったのですか?運の悪いことに魔王が出現したノンビー平原は、このセンチュリー王国の目と鼻の先・・・つまりこの国は勇者が魔王を討伐するまで、ずっと最前線だったんですよ。そんな危険な場所に、一体何処の商人が好き好んで出向くとお思いですか?」


「な、なら・・・この国で育てた物だけで食べていけばよかったではないか!?」


「・・・陛下。もしその理屈が通っていれば、陛下がガブ飲みしていた高級酒は手に入りません。あれはプロイタ公国の特産品ですから・・・。そもそも、この国の食糧自給率は年々低下しています。もし他国からの輸入を止めれば民が飢えていたでしょう。しかも、ただでさえ戦時は軍隊を遠征する際の食料が余計に必要でしたから・・・」


「そ・・・そんなこと・・・言って・・・」


「再三言いましたっ!!!」


「そ、それではまるで・・・ワシはお金を備蓄しておかなければならない時に、無駄金を使ってしまったということか!?」


「はいっ!その通りですっ!といっても今更理解したところで何もかも遅すぎますが・・・」


 何処を探そうと、最早勇者への報酬に見合うだけの金銭は出てこない。

 今、金庫にある金で代用すれば、それこそ民が飢えるだろう・・・。

 闘いは終結を見たが、以前のように商人達がひっきりなしに訪れるようになるにはもう少し時間を要する。

 それまで国民を・・・ひいては国家を保たせる為にも、それらの金に手を着けるわけにはいかなかった。

 今まで黙っていた臣下達は何か方法は無いかと話し合う・・・。




「一体どうするか・・・」


「無い袖は振れぬぞ・・・」


「しかし、それでは勇者が何と言うか・・・」


「確か、故郷の家族を少しでも楽させようと、兵として戦っていたらしいではないか?」


「そして偶然『勇者の剣』を抜いたため、少しでも故郷の助けになればと『勇者』の役目を買って出たとか・・・」


「なのに、いざ魔王を討伐してきたら報酬がありませんでは・・・きっと怒髪天を突くに違いない」




(「まったく・・・コイツらも使いものにならんな・・・」)


 臣下達の会話を聞いていた王は、最早、正攻法ではどうにもならないと割り切り、1人思考にふける。

 そして・・・思いついた案。

 それは、クズにも劣る発想・・・。

 しかし、王その人には、まさに天恵としか思えなかった!




「よしっ!良い案を思いついたぞっ!」




「へ・・・陛下?」


 急な王の声に、ドワールはそちらを振り向くと、そこには・・・自信満々の王の顔が1つ・・・。

「皆の者・・・今日は解散だ!ドワール・・・あしたの午前に勇者にここに来るように伝えよっ!」


「それは構いませんが・・・陛下・・・よろしければ、陛下の案をお聞かせ頂けませんでしょうか?」


「いやっ、大丈夫だ、なんせ完璧な案だからな。だが、万が一ここで話したことが外部に漏れれば一大事だ。だから今日は話せん」


 それで、「なるほどそうでしたかっ!」と引き下がっていては、この国の財政を引き受けるなど出来るはずも無い。

 ドワールは表情をいっそう険しくさせて尚も追求した。


「いいえ。是非お聞かせください。明日・・・一体何をするおつもりですか?」


「いいからっ・・・大丈夫だ・・・全てワシに任せておけば良い!」


 その後、結局・・・幾ら尋ねようが王が口を割ることは無く、この問題の解決は明日の王の発言に委ねられることになった。


(「心配だ・・・本当に心配だ・・・」)




 結論から言うと・・・財務官僚ドワールの心配は、斜め上の形で現実のことになる。

 そして、この出来事が、後々この国を真の絶望に向かわせることになるのであった・・・。




 ここまで読んでいただきありがとうございます!

 これからも、鋭意作成し続けたいと思いますので、応援の程、宜しくお願いいたします!

 

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― 新着の感想 ―
こんにちは! 感想失礼します 王のクズっぷりがでてますねぇ〜。 勇者はこれからどうなっちゃうんだろうかとすごく気になります。 もしよろしければ僕の作品も覗いて見てくれると嬉しいです。
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