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舞風学園演劇部 第三部 舞台の継承  作者: 舞風堂
第一章 次の舞台へ
6/8

第六幕 打ち上げ、そして次への目標

 無事に部活動PRウィークを終えた舞風学園演劇部の12人は多目的室で打ち上げを行い、ひのりが仕切っていた。


「皆さん、お疲れ様!」


「私達にとっては3回目、りんかちゃん達にとっては2回目、綾音ちゃん達にとっては最初となる初公演、みんなどうだったかな?」


 ぐるりと全員を見渡して、笑う。


 りんかがすぐ手を挙げる。


「はい! 去年よりちょっと落ち着いてた気がします!」


「それ、自分で言うんだ」

 七海が即座に返す。


「でも実際、去年よりは暴れてないよね?」

 紗里が笑う。


「暴れてた自覚はあるんだ……」

 音羽が静かに言うと、りんかは「ある!」と胸を張った。


 ひのりは苦笑しながら、今度は一年生を見る。


「綾音ちゃんたちはどうだった?」


 綾音は少し考えてから答える。


「……すごく緊張しました。でも、舞台に出たら、思ってたよりちゃんと前を向けました」


 風花がすぐに続く。


「私は緊張してたはずなのに、途中からちょっと楽しくなってました」


「三日でやめる予定だった人が?」

 紗里が言う。


「そこは今いじらないで!」

 風花が即座に返して、笑いが起きる。


 美春は紙コップを持ったまま、静かに言った。


「私は……人形ではなく、人が演じる意味を少しだけ掴めた気がします」


 その言葉に、まひるが嬉しそうに顔を上げる。


「やっぱり今回、列車の衣装とか雰囲気、ちゃんと効いてたよね……!」


「効いてたわ」

 唯香が頷く。


「見た目が役を支える瞬間、ちゃんとあった」


 音羽も静かに続ける。


「アナウンスも、去年より落ち着いて入れられた」


 りんかが笑う。


「去年の私は落ち着きゼロだったけどね!」


「今年もゼロ寄りだったよ」

 七海が言う。


「厳しくない!?」


 また笑いが広がる。


 ひのりはその様子を見ながら、少しだけ目を細める。


 去年までは、自分たちも必死で前を見る側でもあった。

 でも今年は違う。初舞台を終えた後輩たちの顔を見ていると、自分たちが“残す側”にいることが、はっきり分かった。


「……なんかさ」


 ひのりがぽつりと言う。


「ちゃんと、次に繋がってる感じするね」


 七海が小さく頷く。


「うん」


「それは、多分今日の一番いいところ」


 しばらく談笑が続いたあと、紗里がふと思い出したように言った。


「そういえばさ、今回の台本って結構変わったよね」


「最初と全然違う感じになってなかった?」


 その言葉に、何人かがうなずく。


 七海は紙コップを持ったまま、静かに口を開いた。


「ベースは私が書いたけど」


「今回は、途中でかなり組み替えた」


「みんなの提案も入ってる」


 ひのりが笑う。


「列車の設定も、最初はもっとシンプルだったよね」


「“使命”とか“選択”の話は後から出てきた」


「うん」

 七海が短く答える。


「方向性を決めたあとに、テーマを寄せた」


 りんかが身を乗り出す。


「アクション多めにしたの、私だよね?」


「そう」

 七海が頷く。


「動きが入ると、舞台が持つ」


 音羽も続ける。


「声の切り替えは、少し調整した」


「役ごとの温度差を出したかった」


 まひるが小さく言う。


「衣装も……途中で少し変えました」


「動きやすさと、見え方で」


「すごい変わってたよね」

 紗里が言う。


「あと私の販売員、あれ絶対遊びすぎたでしょ」


「いつも通り」

 七海が即答する。


「褒めてる?」

「半分」


 笑いが広がる。


 みこは少し考えながら言った。


「おばあさんの役も……最初と違った気がする」


「うん」

 七海が頷く。


「みこの雰囲気に合わせて変えた」


「静かな方が、空気が出るから」


 少し間が空く。


 七海が視線を動かす。


「あと」


「一部は、美春ちゃんにも書いてもらった」


 一瞬、空気が静かになる。


 美春が顔を上げた。


「……少しだけです」


「自分の役の部分と、繋ぎを」


 ひのりがすぐに言う。


「でも、あそこ良かったよ」


「言葉の感じ、ちゃんと“美春ちゃんの役”になってた」


 美春は少しだけ目を伏せて、小さくうなずいた。


 七海が静かにまとめる。


「今回は、全員で作ったに近い」


 その言葉に、自然と全員がうなずいた。


 七海の「全員で作ったに近い」という言葉に、ひのりがうなずいた。


「リハのときも、結構変わったよね」


「同じシーンでも何回も止めてさ」


 風花がすぐに食いつく。


「あー、あそこ!」


「台本持ったまま固まってたやつね」


 綾音が苦笑する。


「……何が正解か分からなくて」


「動けなくなりました」


 美春も静かに続ける。


「言葉は同じでも、見せ方で意味が変わるので」


「調整が必要でした」


 紗里がニヤッと笑う。


「で、そこで出てくるのが――はい、監督」


 全員の視線が唯香に向く。


 唯香は少しだけため息をつく。


「その呼び方、やめなさい」


「でも実際そうじゃん」

 ひのりが笑う。


「“その一歩、間を置いてから”とか、“視線もう少し上”とか」


「完全に演出だったよ」


 綾音が思い出すように言う。


「“声を出す前に呼吸を入れて”って言われたの、すごく印象に残ってます」


 風花も頷く。


「“セリフだけが前に出てる”ってやつね」


「地味にきつかった……」


 美春が小さく言う。


「ですが、あれで流れが繋がりました」


 七海が短く補足する。


「観客の視線が揃った」


 ひのりが笑う。


「やっぱり映画監督の娘は違うね」


 唯香は肩をすくめる。


「見てきただけよ」

「どう見えるか、を」


 綾音が少し真剣な顔になる。


「……すごく助かりました」


 美春も静かに続ける。


「はい。あの修正で、役が安定しました」


 風花が笑う。


「つまりうちら、ちゃんと“演出されてた”ってことか」


「いい意味でね」


 紗里が肩を叩く。


「舞風、普通にレベル上がってない?」


 ひのりがその言葉にうなずく。


「うん」


 一拍。


「確実に上がってる」


その言葉に、ひのりがふっと笑った。


「じゃあさ」


 紙コップを軽く持ち直す。


「次、どうする?」


 一瞬、空気が止まる。


「どうするって?」

 紗里が聞き返す。


「このまま終わりじゃもったいなくない?」


 ひのりが言う。


「せっかくここまで作れたんだし」


「もっとやりたいこと、あるでしょ?」


 りんかがすぐに手を挙げる。


「はい! もっと動きやりたい!」


「今日ちょっと抑えたし!」


「抑えた自覚あるんだ」

 七海が淡々と返す。


 音羽が続ける。


「声の幅も、まだ広げられる」


「今回使ってないトーンもある」


 まひるが小さく言う。


「衣装も……もう少しできると思います」


「動きと合わせて、もっと見せられるように」


 綾音は少し考えてから口を開いた。


「……私は」

「もっと演じてみたいです」

「いろんな役を」


 風花が笑う。


「私は……楽しく続けたいかな」

「気づいたら終わってたし」


 美春も静かに続ける。


「観るだけではなく」

「関わる側として、もう少し試したいです」


 ひのりがうなずく。


「いいじゃん、バラバラで」

「それぞれ違う方が面白い」


 七海が短く言う。


「方向は見えてる」


 その時、後ろから声がした。


「いいじゃない」


 振り向くと、晴山先生が立っていた。


「ちゃんと“選べてる”ってことだもの」


 ゆっくりと部屋を見渡す。


「だったら――」

「チームでやってみたら?」


「同じ方向の子たちで、少しずつ形にするの」


 紗里が首を傾げる。


「チーム?」


「ええ」


 晴山先生が頷く。


「四人ずつくらいで分けて」


「やりたいことを、それぞれやってみる」


「最後に、また一つに戻せばいい」


 ひのりが笑う。

 その言葉に少しだけ目を輝かせた。


「私、全部見たい」


 全員の視線が向く。


「人形劇も、アクションも、言葉と空気の芝居も」


 一拍。


「みんなが変わるとこ」


 ひのりは笑う。


「だからさ、全部見せてあげようよ」


 自然と視線が交わされる。


「じゃあ私はこっちかな」

 りんかが言う。


「動きやるなら一緒でしょ」

 紗里が乗る。


「……私も」

 綾音がうなずく。


「じゃあ決まりだね」

 風花が笑う。


 一方で、


「構成はまとめる」

 七海が言い、


「演出は見るわ」

 唯香が続く。


「私も……そっちで」

 美春が静かに加わる。


 ひのりは少し考えてから、


「じゃあ私もそっち行く」


 と笑った。


 残った面々を見て、音羽が言う。


「なら、こっちは声と見せ方」


 まひるが小さくうなずく。


「衣装も合わせます」


 みこも続く。


「……雰囲気、作ります」


 その中で、アリスは静かに言った。


「なら、私は少し違う角度から見る」


 一瞬、空気が静かになる。


 晴山先生が小さく笑った。


「それでいいのよ」


「それぞれ違うから、意味がある」


 ひのりが最後に手を叩く。


「よし、決まり!」


「また一つ、作ってみようか」


 全員の表情に、少しだけ新しい熱が灯った。

 チーム分けの話で一度まとまりかけた空気の中で、


「……あの」


 美春が小さく手を挙げた。


 視線が集まる。


「一つ、やってみたいことがあります」


「何?」

 ひのりが促す。


 美春は少し言葉を選んでから、続けた。


「今回、舞台の上で“作られた世界”を見ていて思ったんです」

「人形だからこそできる表現も、あるんじゃないかって」


「それを、もっと前に出した形で……人形劇としてやってみたいです」


 一瞬、静けさ。


「人形劇?」

 紗里が聞き返す。


 美春はうなずく。


「人が演じるのとは違う表現になるので」


「見せ方や構成も変わりますが」


「……新しい形として、試せるかと」


 七海が少し考える。


「なるほど」


「視点を変える、という意味では理にかなってる」


 唯香も続ける。


「演出としても面白いわね」


「制約が増える分、工夫が必要になる」


 ひのりがぱっと顔を上げる。


「面白そうじゃん、それ!」


 一歩前に出る。


「やろうよ」


「私もそっち行く」


 七海が軽くうなずく。


「構成は見る」


 まひるも小さく手を上げる。


「……衣装と、人形のデザイン、やってみたいです」


 美春が少しだけ驚いたように目を瞬かせる。


「……ありがとうございます」


 ひのりが笑う。


「じゃあ決まりだね」


「人形劇チーム」


 紗里がからかうように言う。


「なんか一番クセ強そうなチームできてない?」


「いいでしょ、面白い方が」

 ひのりが返す。


 そのやり取りを見ながら、アリスが静かに口を開いた。


「人が動かす人形」


「……演じる、の別の形ね」


 美春が小さくうなずく。


「はい」


 一拍。


「だから、やってみたいんです」


 その言葉に、七海が短く言う。


「じゃあやろう」


 シンプルな決定。


 ひのりが手を叩く。


「よし、人形劇チームはこれで確定!」


 新しい方向が、はっきりと形になった。


 ひのりが手を叩いたあと、りんかがすぐに前に出た。


「じゃあ次!」


「動きやるチームも決まりでしょ!」


 勢いのまま言う。


「アクションとか、もっとやりたい!」


 紗里が笑う。


「出た、暴れる気満々の人」


「暴れるんじゃない、魅せるの!」

 りんかが即答する。


 風花も手を挙げる。


「それなら私もそっちかな」


「体動かすの、普通に楽しかったし」


 ひのりがうなずく。


「いいね、バランス取れるし」


 その流れで、紗里も肩をすくめる。


「じゃあ私もそっちでいいや」


「ツッコミながら動く係で」


「何それ新ジャンル」

 風花が笑う。


 その時、少し遅れてアリスが口を開いた。


「動き」


 一拍。


「面白そうね」


 全員の視線が向く。


「身体で見せる方が、誤魔化しが効かない」


「だから、分かりやすい」


 りんかがニヤッとする。


「いいじゃん、来なよ」


「一番分かりやすく見せてやる」


 アリスはわずかに頷いた。


「ええ」


 静かな肯定。


 ひのりが笑う。


「じゃあ決まりだね」


「アクションチーム」


 紗里が軽く手を挙げる。


「ケガだけはしない方向でお願いします」


「そこは気をつける!」

 りんかが元気よく返す。


 こうして、もう一つのチームも形になった。


 アクションチームまで決まり、ひと通り方向が見えたところで、部屋の空気が少し落ち着いた。


 その中で、唯香が静かに口を開いた。


「少し、いいかしら」


 自然と視線が集まる。


「せっかく分かれてやるなら」


「それぞれ“何を見せるチームなのか”を、はっきりさせた方がいい」


 七海が短くうなずく。


「意図を共有する、ということね」


「ええ」


 唯香が続ける。


「今の流れなら――三つに分けられると思う」


 指を軽く折りながら示す。


「ひとつは、人形劇」


「外から作る表現。形や構成で見せる」


 美春とまひるが小さくうなずく。


「もうひとつは、アクション」


「身体で見せる表現。分かりやすく、強く」


 りんかが笑う。


「任せて」


 唯香はそのまま、最後に視線を向けた。


「そして、もうひとつ」


 一拍。


「言葉と空気で見せるチーム」


 綾音が少しだけ顔を上げる。


「……言葉と、空気」


「ええ」


 唯香が静かに続ける。


「動きが少ない分、誤魔化しが効かない」


「声、間、視線――全部で伝える必要がある」


 音羽が小さくうなずく。


「……悪くない」


 みこも静かに言う。


「……やってみたい」


 綾音は少しだけ考えてから、


「私も」


と短く言った。


 唯香が軽く頷く。


「なら、そこは四人で組みましょう」


 ひのりが楽しそうに笑う。


「いいね、それ」


「三つとも全然違うじゃん」


 七海がまとめる。


「方向性は明確になった」


「やりやすい」


 紗里が肩を回す。


「じゃあさ、それぞれ勝負ってこと?」


「結果的にはそうなるかもね」

 ひのりが笑う。


 唯香は少しだけ表情を緩めた。


「勝ち負けではなくていいわ」

「どれだけ伝えられるか」


 その一言に、空気が少しだけ締まる。


 ひのりが手を叩いた。


「よし、決まり!」


「三チーム、それぞれやってみよう!」


 新しい方向が、はっきりと形になった――その時。


「いいわね」


 晴山先生が微笑んでいた。


「みんな、それぞれ違っていて」


 一人ひとりを見渡す。


「だからこそ、どんなふうに個性が出るのか……とても楽しみだわ」


 少しだけ間を置く。


「同じ“演劇”でも、見せ方は無限にあるのよ」


 七海が小さく頷く。


「確かに」


 晴山先生は続ける。


「自分の得意なところも、まだ気づいていない魅力も」


「きっと、ちゃんと舞台に出てくるから」


 ひのりが笑う。


「いいじゃん、それ」


「じゃあさ、全部見せてやろうよ」


 りんかが拳を握る。


「おっしゃ、燃えてきた!」


 風花も笑う。


「なんか、また始まる感じするね」


 美春が静かに言う。


「はい……楽しみです」


 晴山先生は満足そうにうなずいた。


「ええ」


「次は、どんな舞台になるのかしらね」


 その言葉に、全員の表情が少しだけ引き締まる。


 新しい挑戦が、もう始まっていた。


 ――少しだけ、空気が落ち着いた。


 笑い声がひと段落して、誰かがジュースを注ぐ音だけが小さく響く。


 ひのりが、ふっと息をついた。


「……でもさ」


 一拍。


「私たち、あとどれくらいだっけ」


 誰もが分かっている問い。


 七海が静かに答える。


「およそ五ヶ月」


「文化祭、その後は引退、進路、受験」


 淡々とした言葉が、現実をはっきりさせる。


 風花が小さくつぶやく。


「……思ってたより、短いね」


 紗里が肩をすくめる。


「急に現実見せてくるじゃん」


 りんかも苦笑する。


「でも、そうなんだよなあ」


 少しだけ間。


 ひのりがゆっくりとうなずく。


「アリスも、その頃には帰るしね」


 アリスは静かに頷いた。


「ええ」


「それが、区切りになる」


 その言葉は、重くはないけれど、確かにそこにあった。


 そこで、みこが小さく口を開く。


「……少し、寂しい」


 一拍。


「でも」


 視線を上げる。


「ちゃんと終われるなら、いいなって思う」


 その言葉に、空気が静かに揺れる。


 唯香も、ゆっくりと続ける。


「終わりがあるからこそ、舞台は意味を持つの」


 一拍。


「限られた時間で、どこまで伝えられるか」


「……それが、今の私たちね」


 七海が静かに続ける。


「学校生活も、人生も」


 一拍。


「思っているより、ずっと短い」


 誰も口を挟まない。


「限られた時間の中で、何を選ぶか」


「それは――これから先も、ずっと向き合うことになる」


 静かに落ちる言葉。


 りんかが顔をしかめる。


「……うわ」


「急に現実突きつけてくるじゃん」


 紗里が苦笑する。


「でも否定できないのがきついな」


 まひるが小さくつぶやく。


「……なんか、深いです」


 風花が少し考えながら言う。


「選ぶって、続いていくんだね」


「今だけじゃなくて」


 綾音がうなずく。


「……だから、今も大事にしたいです」


 美春が静かに続ける。


「限られているからこそ」


「どう使うか、意味が出るので」


 ひのりが、全員を見渡す。


 一人ひとりの顔を、確かめるように。


「じゃあさ」


 一歩、前に出る。


「悔い残さないようにやろうよ」


 一拍。


「残り五ヶ月」


「全部、使い切るくらいで」


 りんかが拳を握る。


「いいじゃん、それ!」


 風花も笑う。


「思い出、めっちゃ作ろう」


 紗里が乗る。


「どうせなら派手にいこうぜ」


 美春が静かにうなずく。


「……はい」


 七海が短くまとめる。


「異論なし」


 ひのりが最後に言う。


「よし」


「残り五ヶ月、全力でいこう」


 一瞬の静けさのあと、


 全員が、小さくうなずいた。


続く。



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