第十幕 それぞれの成果
翌週の放課後。
久しぶりに、演劇部の全員が多目的室へ集まっていた。
人形劇チーム。
アクションチーム。
演技研究チーム。
それぞれ別行動を続けていたため、十二人が揃うのは少し久しぶりだった。
「なんか久々な感じする!」
最初に口を開いたのは、やはりひのりだった。
いつものように元気よく部屋へ入ってくる。
「一週間くらいしか経ってないでしょ」
七海が即座に返す。
「でも長かったよ!」
「騒がしかったのは確かね」
美春が静かに言った。
「え、私?」
「ひのり先輩です」
まひるも小さく頷く。
「全員一致」
七海が言う。
「なんで!?」
部屋に笑いが広がるとそのタイミングで、りんか達も入ってきた。
「おっはよー!」
「放課後だからおはようじゃない」
紗里が突っ込む。
「細かいことは気にしない!」
りんかは勢いよく椅子へ座った。
その後ろからアリスが入ってくる。
「相変わらず元気ね」
「スポーツセンターで鍛えられたので!」
「途中で床に寝転がっていた人が何か言ってる」
風花がぼそりと呟く。
「裏切り者!」
再び笑いが起きた。
さらに少し遅れて、唯香たちも姿を見せる。
「ごめんなさい、少し遅れたわ」
「教室の移動で少し時間がかかったの
音羽が補足する。
みこも静かに席へ着いた。
全員が揃う。
十二人。
去年より増えた顔ぶれ。
気づけば多目的室も少し狭く感じるようになっていた。
ひのりはその様子を見回しながら、少し嬉しそうに笑う。
「よし」
手を叩く。
「じゃあ今日は成果発表会!」
「それぞれ何してきたか、聞かせてもらおう!」
りんかが即座に手を挙げた。
「はい!」
「アリスさんが平均台から落ちました!」
「そこからなの!?」
紗里が吹き出す。
アリスは静かにため息をついた。
「まず訂正しておくけど」
「床材の問題よ」
「違う」
全員だった。
多目的室は、一気に笑いに包まれた。
「じゃあ改めて!」
ひのりが笑いながら言う。
「アクションチームから!」
「はい!」
りんかが勢いよく立ち上がる。
「スポーツセンターで身体の使い方を研究してきました!」
「研究だったんだ」
風花が言う。
「遊んでた記憶しかない」
紗里も続ける。
「失礼だなぁ!」
りんかは胸を張る。
「でも実際、身体の軸とか重心とか大事だった!」
アリスが頷く。
「見せる動きには基礎が必要」
「走るだけでも印象は変わるわ」
綾音が感心する。
「へぇ……」
「あと風花が意外と運動できた」
紗里が言う。
「言い方」
「実際できたじゃん」
風花は少し照れくさそうに肩をすくめた。
「まあ多少は」
「次!」
ひのりが指をさす。
「人形劇チーム!」
美春が静かに立ち上がった。
机の上に小さな人形を置く。
「おおー!」
りんかが身を乗り出した。
「かわいい!」
「主人公です」
美春が答える。
まひるも頷く。
「衣装も作り始めてます」
七海が補足する。
「テーマは旅と成長」
「自分の役を探す人形の話になりそう」
音羽が興味深そうに見る。
「ちゃんと表情ある」
「動きで感情を見せる設計です」
美春が言った。
ひのりが笑う。
「めちゃくちゃ良い感じ!」
「ひのり先輩が一番楽しんでました」
まひるが言う。
「否定できない」
七海が続ける。
「なんでみんなそうなるの!?」
また笑いが起きる。
ひのりは咳払いした。
「最後!」
「演技研究チーム!」
今度は唯香たちが前に出る。
「市民劇団の体験会に行ってきたわ」
唯香が説明する。
「実際に舞台も見て、ワークショップにも参加した」
「どうだった?」
りんかが聞く。
みこが静かに答える。
「面白かった」
音羽も頷く。
「声だけで空気を変える人がいた」
「勉強になった」
そして。
唯香が綾音を見る。
「あと、今日の主役は綾音だったわね」
「えっ!?」
綾音が慌てる。
結衣たちの言葉を思い出した。
「そうだった」
みこも頷く。
「綾音の日だった」
「違いますって!」
顔を真っ赤にする綾音。
風花が笑う。
「何やったの?」
「お嬢様とか不良とか演説とか……」
「幅広っ!」
りんかが吹き出した。
音羽が珍しく少し笑う。
「最後の演説は良かった」
「役に入ると変わるタイプかもしれない」
綾音は照れながらも、どこか嬉しそうだった。
ひのりはそんな様子を見て頷く。
「いいじゃん」
「みんなちゃんと前に進んでる」
人形劇。
アクション。
演技研究。
三つとも全然違う。
でも確かに、それぞれが演劇へ繋がっていた。
その様子を見ていた晴山先生が微笑んだ。
「みんな、面白いことをしてきたのね」
三チームを見る。
「同じ演劇なのに、全然違う」
一拍。
「せっかくだから、誰かに見てもらいたくならない?」
ひのりが反応する。
「見てもらう?」
「ええ」
晴山先生は頷く。
「発表の場があったら、もっと面白そうじゃない?」
りんかの目が輝く。
「それいい!」
唯香も頷く。
「悪くないわね」
七海も短く言った。
「目標がある方がまとまる」
その時だった。
多目的室の扉が開く。
「あ、揃ってるね」
聞き慣れた声は音屋先生だった。
部員たちが一斉に振り向く。
「先生!」
「ちょうど良かった」
音屋先生は楽しそうに笑う。
「みんなに面白い話があるわ」
ひのりが首を傾げる。
「面白い話?」
「うん」
音屋先生は部屋の中央まで歩いてくる。
「来月、この町で大きなお祭りがあるの知ってる?」
何人かが頷く。
「あー、風丘まつり?」
紗里が言う。
「そう、それ」
音屋先生は笑った。
「実はそこで、学生ステージの出演団体を募集してるのよ」
一瞬、部員たちの空気が変わった。
ひのりの目が輝く。
「えっ」
「それって――」
音屋先生は頷く。
「演劇部、出てみない?」
反対する者はいなかった。
「やる!」
ひのりが真っ先に言う。
「面白そうじゃん!」
「異議なし」
七海が頷く。
「やってみたい」
綾音も続く。
りんかは拳を握った。
「見せてやろうじゃないですか!」
音屋先生と晴山先生は顔を見合わせて微笑む。
こうして舞風学園演劇部は、風丘まつりへの参加を決めた。
そして風丘まつり当日。
快晴の風丘市中央公園。
会場には屋台やキッチンカーが並び、多くの人で賑わっていた。
焼きそばの匂い。
子どもたちの笑い声。
ステージから聞こえる音楽。
祭りらしい活気が辺りを包んでいる。
その一角に設置された特設ステージ。
舞台袖では、演劇部の十二人が集まっていた。
「うわぁ……」
綾音が客席を見て呟く。
「思ったより人いる……」
「今さら?」
風花が笑う。
「緊張してきた?」
「ちょっと」
隣で音羽が静かに言う。
「大丈夫」
「私たちならできる」
人形劇チームは最終確認。
アクションチームは軽くストレッチ。
演技研究チームは発声をしている。
それぞれ準備は万全だった。
ひのりはステージ袖から客席を覗く。
「なんかワクワクするね」
「毎回それ言ってる気がする」
七海が言う。
「だってワクワクするんだもん」
唯香が少し笑った。
「まあ、それは分かるわ」
その時。
会場アナウンスが流れる。
「まもなく、舞風学園演劇部による特別ステージを開始いたします」
一瞬、空気が変わると十二人の表情が引き締まった。
音屋先生が笑う。
「じゃあ、いってらっしゃい」
晴山先生も頷く。
「楽しんできなさい」
ひのりは仲間たちを見る。
一年生、二年生、三年生。
そして留学生。
今の舞風演劇部を作っている全員。
「よし!」
一歩前へ出る。
「舞風演劇部、出発!」
その声に、
「おー!」
十二人の声が重なった。
そして彼女たちは、祭りのステージへ向かって歩き出した。
まずは人形劇チームの劇から始まる。
人形劇『ようこそ、おもちゃ箱へ!』
(ドールハウスの小さな部屋。
中央に木製の人形が置かれている。)
⸻
第一場 目覚め
木の人形
「……あれ?」
「ここはどこ?」
(辺りを見回す)
「ぼく、誰だっけ?」
「というか……ここどこ!?」
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(カタカタとゼンマイ犬が登場)
ゼンマイ犬
「わっ!」
「新入りだ!」
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木の人形
「ひっ!?」
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ゼンマイ犬
「こんにちは!」
「ぼくゼンマイ犬!」
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木の人形
「い、犬がしゃべった!?」
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ゼンマイ犬
「おもちゃだもん!」
⸻
第二場 おもちゃ箱
(着せ替え人形が登場)
着せ替え人形(美春)
「騒がしいと思ったら。」
「新しい子ね。」
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木の人形
「あなたは?」
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着せ替え人形
「着せ替え人形よ。」
「ここはおもちゃ箱。」
⸻
木の人形
「おもちゃ箱?」
⸻
着せ替え人形
「ええ。」
「いろんなおもちゃたちが暮らしている場所。」
⸻
ゼンマイ犬
「楽しいところだよ!」
⸻
木の人形
「そうなんだ……」
⸻
第三場 変形人形
(小さな箱が置かれる)
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木の人形
「箱?」
⸻
(変形)
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変形人形(七海)
「失礼。」
⸻
木の人形
「うわぁ!?」
「箱が変身した!」
⸻
変形人形
「変形人形だからね。」
⸻
ゼンマイ犬
「すごいでしょ!」
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木の人形
「すごい!」
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第四場 仲間
木の人形
「みんな、それぞれ違うんだね。」
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着せ替え人形
「違うから面白いの。」
⸻
変形人形
「得意なことも違う。」
⸻
ゼンマイ犬
「でも仲間!」
⸻
木の人形
「仲間……」
⸻
少し考える。
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木の人形
「ぼくは何ができるんだろう?」
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ゼンマイ犬
「これから見つければいいじゃん!」
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着せ替え人形
「焦らなくていいわ。」
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変形人形
「時間はたくさんある。」
⸻
終幕
木の人形
(客席を見る)
「最初は不安だった。」
「でも。」
「今はちょっと楽しみ!」
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ゼンマイ犬
「よし!」
「遊ぼう!」
着せ替え人形
「まずはお友達からね。」
変形人形
「歓迎するよ。」
⸻
木の人形
「ありがとう!」
⸻
四体が並ぶ。
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全員
「ようこそ、おもちゃ箱へ!」
⸻
(手を振る)
⸻
全員
「おしまい!」
(終幕)
拍手に包まれて次はアクションチームの番となった。
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『舞風戦隊エンゲキジャー』
(悪役登場)
怪人シャドウアリス
「フフフ……」
「このステージは私が乗っ取った!」
「ここは今日から、退屈と絶望の世界よ!」
(高笑い)
「笑顔も拍手も必要ない!」
⸻
(BGM)
りんか
「そうはさせない!」
(飛び出す)
「演劇魂、全力全開!」
「レッド!」
(決めポーズ)
⸻
紗里
「笑顔を奪うとか却下!」
「イエロー!」
(決めポーズ)
⸻
風花
「楽しいことの邪魔はさせないよ!」
「グリーン!」
(決めポーズ)
⸻
三人同時
「舞風戦隊!」
「エンゲキジャー!!」
(決めポーズ)
⸻
怪人シャドウアリス
「フン」
「子どもの遊びね」
⸻
(戦闘開始)
レッドがキック。
怪人、後ろへ飛ぶ。
⸻
怪人シャドウアリス
「甘い!」
⸻
イエローが突撃。
怪人がかわす。
⸻
紗里
「うわっ!?」
⸻
グリーンが回り込む。
⸻
風花
「今だ!」
⸻
怪人がよろめく。
⸻
りんか
「みんな!」
⸻
紗里
「了解!」
⸻
風花
「やるよ!」
⸻
三人でポーズ。
⸻
全員
「エンゲキ!」
「バズーカ!!」
(バズーカ発射の演技)
⸻
怪人シャドウアリス
「なっ……!?」
「そんな馬鹿な……!」
(大きく吹き飛ぶ演技)
⸻
怪人シャドウアリス
「負けた……」
「でも、なぜ……」
⸻
りんか
「一人じゃないから!」
⸻
紗里
「仲間がいるからね」
⸻
風花
「だから強いんだよ」
⸻
(少し間)
⸻
怪人シャドウアリス
「仲間……」
「そうか……」
⸻
立ち上がる。
⸻
怪人シャドウアリス
「私も、少し間違っていたようね」
⸻
りんか
「じゃあもう悪いことしない?」
⸻
怪人シャドウアリス
「ええ」
⸻
紗里
「改心早っ」
⸻
風花
「平和でいいじゃん」
⸻
全員前へ。
⸻
全員
「みんなで作る!」
「最高の舞台!」
⸻
全員
「開幕だ!!」
(決めポーズ)
⸻
終幕
⸻
ヒーローショーで笑いの空気に包まれ、続けて演技研究チームの出番となる。
朗読劇『私は誰?』
⸻
少女(綾音)
「私は誰なんだろう。」
「何が好きで。」
「何が得意で。」
「何になりたいんだろう。」
「分からない。」
一人、舞台に立つ。
⸻
過去(唯香)
「本当に?」
⸻
少女
「誰?」
⸻
過去
「私は過去。」
「あなたが歩いてきた時間。」
⸻
声(音羽)
「私は声。」
「あなたが誰かに届けた言葉。」
⸻
心
「私は心。」
「あなたの中にいる。」
⸻
少女
「みんな、私を知っているの?」
⸻
過去
「もちろん。」
⸻
声
「ずっと見てきたから。」
⸻
心
「だから一緒に探そう。」
⸻
少女
「私を?」
⸻
三人
「あなた自身を。」
⸻
第一章 過去
⸻
過去
「覚えてる?」
「初めて夢中になったこと。」
⸻
少女
「……楽しかった。」
「上手じゃなくても。」
「好きだった。」
⸻
過去
「その気持ちは消えていない。」
⸻
第二章 声
⸻
声
「今度は伝えてみて。」
⸻
少女
「嬉しい!」
⸻
声
「もっと。」
⸻
少女
「悔しい!」
⸻
声
「もっと。」
⸻
少女
「私は諦めたくない!」
⸻
声
「その声が、あなた。」
⸻
第三章 心
⸻
心
「周りを見すぎていない?」
⸻
少女
「みんなすごいから。」
⸻
心
「比べなくていい。」
⸻
少女
「でも私は特別じゃない。」
⸻
心
「特別になる必要もない。」
⸻
少女
「え……?」
⸻
心
「あなたは、あなたでいい。」
⸻
終章
⸻
少女
「私は誰なんだろう。」
一拍。
「そう思っていた。」
⸻
過去
「でも歩いてきた。」
⸻
声
「伝えてきた。」
⸻
心
「感じてきた。」
⸻
少女
三人を見る。
「私は勇者じゃない。」
「王様でもない。」
「特別な誰かでもない。」
⸻
一歩前へ出る。
⸻
少女
「でも。」
「私は私だ。」
⸻
過去
「それでいい。」
⸻
声
「それがいい。」
⸻
心
「それが、あなた。」
⸻
三人が少女の背中を押す。
⸻
少女
「私はまだ分からないことだらけ。」
「でも。」
「これからも探していきたい。」
⸻
客席を見る。
⸻
少女
「私は誰かになるためじゃなく。」
「私になるために歩いていく。」
⸻
全員
「それが、私たち。」
⸻
静かに一礼。
終幕。
最後の一礼が終わると会場から拍手が響いた。
三つの発表は、それぞれ違う形で幕を閉じた。
終幕後
最後の一礼が終わる。
会場から大きな拍手が湧き上がった。
人形劇。
ヒーローショー。
朗読劇。
三つの発表は、それぞれ違う形で幕を閉じた。
⸻
舞台袖。
「終わったぁー!」
最初に叫んだのはりんかだった。
「疲れた!」
「元気じゃない」
紗里が即座に突っ込む。
「でも楽しかった!」
「それは同意」
風花が笑った。
⸻
その少し後ろ。
ひのりは人形を抱えていた。
「ちゃんと動いて良かった……」
「途中で腕取れなくて安心した」
七海が言う。
「そういうこと言わないで!」
まひるが笑う。
美春も小さく頷いた。
「思ったより反応が良かったです」
⸻
一方。
綾音はまだ少し緊張が残っていた。
「大丈夫だったかな……」
「良かったわよ」
唯香が言う。
「ちゃんと届いてた」
音羽も頷く。
「声も出てた」
みこが微笑む。
「綾音らしかった」
綾音は少しだけ照れた。
⸻
その時だった。
「みんな、お疲れさま」
音屋先生と晴山先生がやって来る。
自然と全員の視線が集まった。
⸻
「正直ね」
音屋先生は笑った。
「思ってた以上だった」
部員たちが少し驚く。
⸻
「人形劇チームは物語があった」
「アクションチームは楽しませる力があった」
「演技研究チームは考えさせる力があった」
⸻
一人ひとりを見渡す。
⸻
「同じ演劇部なのに、全然違う」
「でも全部、ちゃんと演劇だった」
⸻
静かな空気が流れる。
⸻
ひのりが少し嬉しそうに笑う。
「それって褒めてる?」
⸻
「もちろん」
音屋先生は即答した。
⸻
「みんな、この一ヶ月でちゃんと成長したよ」
⸻
誰も言葉を返さない。
でも、その言葉は確かに届いていた。
⸻
その隣で、晴山先生も微笑む。
「私も今日、少し安心したわ」
⸻
「安心?」
ひのりが首を傾げる。
⸻
「三年生だけじゃないもの」
晴山先生はりんかたちを見る。
「二年生も一年生も、ちゃんと前に出ていた」
「自分たちの表現を見つけようとしていた」
⸻
綾音たちが少しだけ背筋を伸ばす。
⸻
「演劇部ってね」
「誰か一人が引っ張る部活じゃないの」
「先輩から後輩へ」
「後輩から、また次の後輩へ」
「少しずつ受け継がれていくものなのよ」
⸻
一瞬の沈黙。
⸻
りんかがぽつりと言った。
「来年は……私たちが一番上か」
⸻
「今さら?」
紗里が言う。
⸻
「いや、急に実感きた」
⸻
風花が少し笑う。
「珍しく真面目」
⸻
「失礼だな!」
⸻
そのやり取りに、三年生たちも笑った。
⸻
ひのりはりんかを見る。
「大丈夫だよ」
「今のりんか達ならちゃんとやれる」
⸻
「プレッシャー!」
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また笑いが起きた。
⸻
「さて」
音屋先生が手を叩く。
⸻
「しんみりするのはまだ早いわ」
⸻
一同が顔を上げる。
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「次はいよいよ夏休み」
⸻
その言葉に、一年生も二年生も三年生も反応した。
⸻
「夏休み!」
ひのりが真っ先に声を上げる。
⸻
「その前に宿題」
七海が言う。
⸻
「急に現実!」
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笑い声が広がる。
⸻
音屋先生も苦笑した。
「それもあるけど」
「撮影所見学の話、覚えてるわよね?」
⸻
「あっ!」
唯香が反応する。
⸻
「自主制作映画」
みこが静かに呟く。
⸻
綾音の目も輝く。
「本当にやるんですか?」
⸻
「もちろん」
音屋先生は頷いた。
⸻
「せっかくここまで色々学んだんだもの」
「今度は全部まとめて、一つの作品を作ってみましょう」
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人形劇。
アクション。
演技。
⸻
それぞれが学んだものを、一つにする。
⸻
ひのりが笑った。
「面白そう!」
⸻
唯香も頷く。
「最高の夏になりそうね」
⸻
晴山先生も優しく微笑んだ。
「せっかくの高校生活だもの」
「思いきり楽しんできなさい」
⸻
夕暮れの空。
祭りの余韻がまだ残る中。
舞風演劇部の新しい挑戦は、もう始まろうとしていた。
⸻
続く。




