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資格を学んで人生やり直し  作者: 仕事が生きがい~結婚諦めた~
第四章 その資格の名前は後から付いてくる

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閑話 後ろに立つ

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

入社してから、三年が経とうとしていた。


正確には、まだ数週間残っている。

だが男は、その「直前」という言葉のほうがしっくりくると思っていた。

一年目の終わり、二年目の終わりにはなかった感覚が、

静かに足元に積もっていたからだ。


昔は、毎日が前線だった。

判断を出す。

線を引く。

止める。

戻す。


知らないことが怖く、

知っていることを使わないと不安だった。


いま、男は席に座ったまま、

少し離れた場所で交わされる会話を聞いている。


「それだと、目的外になるかも」

「一回、マスキングしよう」

「じゃあ、共有はここまでで」


誰の声だったか、すぐには分からない。

それでいい。


自分の名前が出ないことに、

男はもう不安を覚えなかった。


以前なら、胸の奥がざわついたはずだ。

呼ばれないことは、不要になった証拠のように感じていたから。


だが今は、違う。


呼ばれないという事実が、

最初から予定されていた動きに見える。


男は、自分の手元の作業を続けながら、

ほんの一瞬だけ、そのやり取りに注意を向ける。


方向は、間違っていない。

急いでもいない。

誰か一人に負担が乗っていない。


――大丈夫だ。


そう思えたことに、男自身が少し驚いた。


三年前、自分はここに“入った”。

仕事を覚え、責任を増やし、

気づけば、判断の中心に立つようになっていた。


だが本来、組織は誰か一人で回るものじゃない。

少なくとも、そうあるべきではない。


最近、男は自分から一歩引くことが増えた。

意識的に、だ。


聞かれなければ答えない。

迷いが出る前に、答えを置かない。

代わりに、質問だけを残す。


「その判断、誰のため?」

「あとで説明できる?」


それだけで、場は動く。


前に出なくても、仕事は進む。

自分が静かになっても、線は残る。


入社三年目を前にして、

男は初めて「会社が自分を必要としすぎていない」状態を、

ありがたいと思った。


それは突き放された感覚ではない。

守られているという感覚でもない。


ただ、健全だった。


昼休み、男は廊下の窓際に立つ。

曇りガラスの向こうに、いつもの風景。

何も特別なことはない。


それでも、胸の奥に確かな感触があった。


自分が前に出なくても、

誰かが判断し、

誰かが止まり、

誰かが戻る。


それで、ちゃんと回る。


「大丈夫だな」


声に出す必要はなかった。

確認する相手も、いない。


それでも、男はそう思えた。


後ろに下がるというのは、

逃げることじゃない。

責任を手放すことでもない。


前に立たなくても、

見続ける覚悟を引き受けることだ。


必要なときだけ、前へ出る。

それ以外は、流れを信じる。


入社三年目を迎える直前、

男はようやく、

会社の中に「自分の居場所」を

位置ではなく、距離で測れるようになっていた。


近すぎず、遠すぎず。

声は届くが、影にならない位置。


そこに立てている今を、

男は悪くないと思った。


むしろ――

少し誇らしかった。

お読み頂き、ありがとうございます。

AI生成しかり、自分の仕事を無くすための仕事って、怖いもんですよね。

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