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資格を学んで人生やり直し  作者: 仕事が生きがい~結婚諦めた~
第四章 その資格の名前は後から付いてくる

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第四十九話 社外は、線の外ではなかった

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

社外に出た瞬間、線が薄くなる。

男は、その光景を何度も見てきた。


印刷会社。

配送業者。

外部のシステムベンダー。

業務委託という言葉は、現場に一種の安心感をもたらす。

「プロに任せている」

「契約している」

その言葉が、判断を半歩だけ軽くする。


きっかけは、何気ない確認だった。

委託先に渡しているデータの範囲。

いつから、どこまで、誰が見られるのか。

男は一覧を眺めながら、違和感を覚える。


――これは、本当に必要な範囲か。


現場は悪くない。

業務を回すため、効率を優先しただけだ。

だが、線は確実に広がっていた。


個人情報保護士のテキストが脳裏に浮かぶ。

**委託と第三者提供は違う。

だが、守る責任が消えるわけではない。**


「相手は信頼できます」

担当者はそう言った。


男は頷いた。

信頼の問題ではない。

それは、最初から分かっている。


「信頼しているからこそ、

何を預けているかを、はっきりさせたいんです」


そう言って、男は資料を机に置いた。

契約書。

アクセス権限。

ログの有無。

データの返却と消去の条件。


一つずつ確認していくと、

線はさらに外に伸びていることが見えてくる。


再委託。

クラウド基盤。

バックアップ。


社内では引いていた線が、

社外では言葉だけになっていた。


「誰が、最終的に責任を持つんですか」


男の問いに、即答はなかった。

誰も逃げていない。

ただ、考えたことがなかったのだ。


委託先は、線の外ではない。

線の**延長**だ。


その当たり前の事実を、

男はここで改めて突きつける。


個人情報保護士の勉強で理解したのは、

守りは“場所”で切り替わらないということだった。

社内か、社外か。

そこに意味はない。


意味があるのは、

**誰が、どこまで把握しているか**だ。


男は提案をする。

委託先にも、目的を明示する。

必要最小限に範囲を絞る。

アクセス権を分ける。

定期的に確認する。


「面倒になりますよ」

誰かが言った。


「ええ」

男は正直に答えた。

「でも、その面倒を引き受けないと、

判断は全部、現場の善意に乗ります」


善意は、外でも同じように暴走する。

社内だけの問題ではない。


この日、すぐに全てが変わったわけではない。

契約の見直しには時間がかかる。

システムの改修も簡単ではない。


だが、線は“見える”ようになった。


どこまでが委託で、

どこからが第三者提供に近いのか。

何を渡していて、

返ってくる保証はあるのか。


それを把握する人が、初めて定まった。


会議のあと、男は一人で資料を閉じる。

線を引く仕事は、ここでは終わらない。

線を**つなぐ**仕事が残っている。


社外に出た瞬間、守りが消えるなら、

それは守りではない。


資格は、責任の所在を明確にするための道具だ。

誰が悪いかを決めるためじゃない。

**誰が最後まで見るかを決めるため**だ。


男は理解していた。

線を社外まで延ばすことは、

自分の立つ位置を、さらに外へ押し出すことだ。


それでも踏み出す。

誰かを守る線は、

境界に引かれるものではない。


引き継がれ、連なり、

見えない場所まで届いて初めて、

守りと呼べるのだから。


男は次の一覧表を開き、

また一つ、線を繋いでいく。

お読み頂き、ありがとうございます。

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