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資格を学んで人生やり直し  作者: 仕事が生きがい~結婚諦めた~
第三章 資格を取った後

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幕間 足りなかったもの

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

——静かすぎる夜だ。


照明を落とした喫煙室で、俺は一人、椅子に腰を落としていた。

ガラス越しに見えるフロアはほとんど暗く、

今日が終わったことだけが、やけにはっきりしている。


判断は引いた。

線も守った。

逃げたつもりはない。


それでも、胸の奥に残るものが、消えない。


——何が、足りなかった。


今回の件を頭から順に辿る。

どこで判断を間違えたか。

どこで、人を取りこぼしたか。


結論は、意外と単純だった。


**判断は正しかった。

でも、見ていた範囲が、狭かった。**


線の内側だけを見ていた。

制度、要件、責任の所在。

守るべきものを優先するあまり、

**線の脇に立っていた人間を、視野から外していた。**


守れなかったのは、判断じゃない。

**流れの中で声を失っていく、人の名前**だ。


俺は息を吐き、天井を見上げる。


資格が足りなかったわけじゃない。

経験が足りなかったわけでもない。


足りなかったのは——

**「声を拾う覚悟」を、判断と同じ重さで置いていなかったこと。**


ドアが開く音がして、社長が入ってきた。


「まだ残ってたか」


「ああ」


短い会話。

ここでは、余計な前置きはいらない。


俺は切り出す。


「今回の件で……

 判断は間違えてないと思ってます」


社長は黙って聞いている。


「でも、守れなかった人がいた。

 俺が線を引いたせいで、一人になったやつがいる」


言い訳はしない。

事実だけを並べる。


「俺、判断の機能に寄せすぎました。

 人を見る目が、後ろにずれてた」


社長はしばらく考えてから、静かに言った。


「足りなかったのは、優しさか?」


俺は首を振る。


「違います。

 **引き受け続ける胆力**です」


線を引く覚悟は、もうある。

戻せない判断を背負う覚悟も、できた。


でも——

その線の外に立って、

**黙ってる人間を拾い続ける覚悟**までは、足りてなかった。


社長は少しだけ笑った。


「それに気づいたなら、次は同じことはやらん」


「……はい」


「完璧な判断はいらん。

 だが、**自分が引いた線から目を逸らさない奴**でいろ」


胸の奥で、何かが静かに決まった。


俺がやるべきことは、

もっと綺麗に判断することじゃない。


**判断のあとに、残る名前を拾うこと。**


線を引く人間でいるなら、

線の外に立つ覚悟も、同時に持たなきゃいけない。


喫煙室を出るとき、

さっきより空気が軽かった。


まだ足りない。

でも、次に何を足すべきかは、見えている。

お読み頂き、ありがとうございます。

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