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資格を学んで人生やり直し  作者: 仕事が生きがい~結婚諦めた~
第二章 ビジネス実務法務3級とは

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第二十三話 「取り消せる契約と、最初から存在しない約束」

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

男は、社長との会話以来、

「決まっていないこと」を

曖昧なまま通さなくなっていた。


慎重になった、というより、

**戻って確認する癖**がついた。


その日、一本の相談が回ってくる。


営業からだった。


「これ、どう思います?」


画面に映ったのは、

個人の顧客と結んだ契約書。

すでに署名・押印済みで、

履行も一部始まっている。


問題は、後から分かった“相手の事情”だった。


「契約した相手、

 どうも未成年だったみたいで……」


男は、即答しなかった。


——来た、と思った。


昔の自分なら、

「ややこしいですね」

その一言で済ませていた場面だ。


だが今は、違う。


「一つずつ、切り分けよう」


男は、静かに言った。


---


テキストを開く。

**行為能力**の章。


そこには、はっきりと書いてあった。


> 未成年者が、法定代理人の同意なく法律行為をした場合、

> その行為は **取り消すことができる**。


——「無効」ではない。


男は、指でなぞる。


- **取り消せる契約**

- **最初から無効な契約**


この違いを、

言葉として説明できるかどうか。


「まず、この契約は“成立している”」


男は、営業に向けて話し始めた。


「意思の合致はあるし、

 署名もある。

 だから“無効”じゃない」


営業が、少し不安そうな顔をする。


「でも、未成年ですよ?」


「だから、**取消せる**」


男は続ける。


「ポイントは、

 “本人か法定代理人が取り消すかどうか”」


- 取消されるまでは **有効**

- 取消された時点で **遡って無効になる**


「こっちから

 『無効です』とは言えない」


その一言で、

場の空気が変わった。


誰かを守る判断ではなく、

**構造としての説明**だった。


---


さらにテキストは続く。


未成年者取消の

**例外**。


- 営業許可を受けた未成年

- 年齢を偽った場合

- 日常生活に関する行為


男は、そこまで確認してから、

もう一度、営業に聞いた。


「相手、年齢の説明はあった?」


「……なかったです。

 普通に大人だと思ってました」


「じゃあ、

 **相手側に取消権がある可能性が高い**」


でも、と男は付け加える。


「だからって、

 今すぐ無効になるわけじゃない」


この「間」を

以前の自分は、

説明できなかった。


---


その日の帰り道。


男は、歩きながら考えていた。


取消。

無効。


どちらも、

「契約がなかったことになる」

という点では同じに見える。


でも、


- **無効**は、最初から存在しない

- **取消**は、一度は存在している


この違いは、

責任の置き場を

大きく変える。


——だから、

法律は言葉を分けている。


男は、ふと気づく。


社長が言っていた

「どこで決まったか」。


それは、

**いつ壊れうるのか**を

言えるかどうかでもあった。


---


夜、机に向かう。


テキストの端に、

男は小さく書き足した。


> 無効か取消かで、

> 相手への向き合い方が変わる。


合格のための暗記なら、

そこまで書かなくていい。


でも、仕事では違う。


もし取り消されなかったら?

もし、交渉の余地があったら?


——判断は、

条文の外まで続いている。


男は、ページを閉じた。


また一つ、

「分かったつもり」が

静かに剥がれていった。


それでも、不安はなかった。


戻る場所を、

もう知っているからだ。

お読み頂き、ありがとうございます。

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