第二十一話 結果通知
この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。
通知は、
やはり静かに届いた。
画面の隅に、
未読の印。
音も、
強調もない。
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男は、
すぐには開かなかった。
理由は、
前回と同じだ。
今の作業を、
途中で切りたくなかった。
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資料の数字を追い、
前提を並べ、
説明の順を整える。
頭は、
普段通りに動いている。
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一段落してから、
思い出す。
ああ、
そういえば、
結果だった。
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開いた画面に、
事務的な件名。
本文も、
短い。
丁寧ではあるが、
余白はない。
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「今回は、
合格基準に
達しませんでした」
そう、
書いてある。
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男は、
一度、
視線を外す。
胸が沈む前に、
別の感覚が先に来た。
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**ああ、
そうか。**
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思ったより、
音はしなかった。
崩れ落ちる感じも、
なかった。
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画面を閉じる。
そのまま、
席に戻る。
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数分後、
声がかかる。
「これ、
どう思います?」
結果の話ではない。
今日も、
同じ問いだ。
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男は、
資料を見る。
少し考え、
答える。
「前提が一つ足りない。
そこを確認しよう」
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会話は、
それだけで終わる。
誰も、
不合格に気づかない。
そして、
不具合も起きない。
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昼休み。
一人で、
もう一度、
通知を読む。
「確かに、
落ちている」
事実として、
それだけだ。
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数ヶ月前なら、
ここで止まっていただろう。
結果を理由に、
線を引き、
席を疑っていた。
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だが今は、
少し違う。
違ってしまっている。
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午後の会議。
説明が回ってくる。
男は、
資料を示し、
順を追って話す。
途中、
詰まる箇所がある。
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「ここは、
前提確認が必要です」
そう言って、
一度止まる。
逃げない。
それでいいと、
分かっている。
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会議の終わり。
席に戻りながら、
ふと考える。
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不合格。
本来なら、
立ち位置を変える言葉。
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だが、
何も動いていない。
**自分も、
周りも。**
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男は、
静かに理解する。
落ちたのは、
能力そのものではない。
ある基準に、
まだ届かなかっただけだ。
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そしてそれは、
「考えることをやめろ」
という合図じゃない。
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夕方。
帰り支度をする。
特別な一日では、
なかった。
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それで、
十分だと思えた。
男は、
もう、
結果で立つ人間ではない。
**立ち続けている事実は、
不合格でも消えなかった。**
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通知は、
ポケットに入れたまま。
明日も、
同じ席に座る。
同じように、
考える。
それしか、
選べなくなっていた。
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