30.古の魔王
ロシエルは自分の可能性をとことん試したい男だ。
したがって最高難易度とされる魔王の召喚に何年も挑戦している。
まあ、ゲームではそれが成功したら即魔王に世界滅ぼされてバッドエンドになるんだけどね。
ロシエルは知的好奇心が満たされるなら自分の命なんて二の次だから、いくら止めても言うことを聞かないだろう。
「魔法陣はもう完成したのですか?」
「まあね。でもこれだけじゃまだ召喚できない。きっと生贄が必要なんだ」
魔法陣の前でしゃがみ込んで質問してみれば、むくりと起き上がったロシエルがすんなりと答えてくれた。
やっぱり魔法についてなら意気揚々と会話してくれるのね。
ある意味チョロい男である。
「生贄ですか…だとしたら綺麗な外見の人間が条件でしょうね」
「…ふーん? なんでそう思うの?」
普通の人間なら『生贄』なんて聞いたら動揺するだろうに、平然と生贄の条件を提案する私に、ロシエルは少しばかり興味を抱いたようだ。
後ろにいるロペルは「ヒッ…い、生贄ってマジかよ…」と小声で狼狽えている。うん、これが正常な反応ね。驚くのはまだ早いけど。
「魔族は綺麗なモノ好きと文献にありましたので。かつて魔族を統べる王だったのならばさぞ見目の良い人間を好んだでしょう」
およそ200年前、人間に滅ぼされた魔族。彼らは宝石や金など、綺麗なものが好きだった。人間を好んで食べていたようだけど、高位魔族は美男美女しか食さなかったという。
魔王ともなれば、絶世の美男美女しか眼中にないだろう。
「…驚いたな。僕の他に魔族についてそこまで調べた奴がいたなんて」
「だって魔族って人間と違って奥が深いでしょう? もう存在しないからこそ気になってしまって…」
「そ、そ、そうなんだよ!! 魔族は奥が深いんだ!! 珍しい魔法を使っていたみたいだし、人間みたいな下等生物なんて比べ物にならないんだ!!」
爆発したのかと思うくらい急にテンションを上げて食いついてきたロシエル。
ゲームでヒロインが社交辞令で魔法について語った時と同じくらい…いや、それ以上に興奮している。
後ろにいるロペルがドン引きするほどだ。
さすがイカれ魔法師。発言がイカれている。自分だって人間のくせに、何を言っているんだか。
勿論、ここは目的の為に話を合わせるけどね。
「君、見直したよ。魔族を下品な存在と蔑む人間が多い中僕と同じく尊敬しているなんて。だから魔法陣についても知っていたんだ。君も魔王に会ってみたいんだね?」
「ええ、当然ですわ。魔法を嗜む者として、学ぶことは沢山ありますもの」
なんてね。
実際は召喚された魔王に理性など残っておらず、破壊衝動のまま国を滅ぼされて全員死ぬ。
だから、この世界を楽しみ尽くすまでは魔王なんて召喚させないわよ。




