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少年と現代文明。




 それから一週間が過ぎた。


 七十年という時の流れは恐ろしく、身の回りのものは一変していた。


 僕が山に籠る頃にラジオ放送が行われていたのは知っていたが、今では音声だけでなく映像を受信し画面に映し出すテレビというものが普及していたり、それどころか瞬時に調べたいものを調べられるインターネットとかいうものまで出来ていたりする。


 電話なんてものも、お金持ちの家にあるかないかくらいだったのに、七十年後の現在は一家に一台どころか、小型化された電話を一人一人持っているらしい。ラシャラさんも掌くらいの大きさの板状をした機械を―――これを携帯電話というらしいが―――持っているのを見せてくれた。


 ノインさんの屋敷は街の郊外にあるらしく、周囲には田園風景が広がっているが、少し町の方へ行けばアスファルトで舗装された道路を自動車という鉄の塊みたいなものが凄いスピードで走っている。


 どうやらこの世界において僕の常識は通用しないらしい。


 屋敷で暮らしているのはラシャラさんとノインさんの二人だけで、ノインさんは屋敷の外に出ることをルクト帝国から禁じられているという。


 現に、屋敷の周囲は帝国の兵士が見張りをしているし、屋敷中に監視カメラらしいものが設置されている。


 僕みたいな素性の分からない人間が屋敷に入れたのも、ひとつはこうした万全の監視体制があるからなのだろう。


「私はナパ人ですから、屋敷の外にいた方が危険なのです。それに、他のナパ人の皆さんから恨まれているのも事実ですし。四六時中監視されていたとしても屋敷の中で生きていくしかないのです」


 そう言って悲しそうに笑うノインさんの顔は、僕の目に焼き付いている。


 ナパ人にとってロニ家の人々は、国をルクト帝国に売り渡したうえに自分たちだけが裕福な暮らしをしている裏切り者―――そういう認識らしい。


「ずっと屋敷の中で暮らしているんですか?」

「いいえ、私が小さい頃は街の外に出ることが許されていました。ルクト帝国の皇子たちと遊んでいたりもしたんですよ。でも、私たちの後ろ盾になってくださっていた方がルクト家の権力闘争に巻き込まれ亡くなってから、父も死に、今のようになったのです」


 ノインさんからこんな話を聞いたのは、つい昨日のことだ。


 ……僕は何をするべきなんだろう。


 光速の抜刀術という力は手に入れた。

 だけど、その使い道が、今の僕には分からない。


「何を考えていらっしゃるのです、ニル様」

「あ、いえ、特に何も!」


 ラシャラさんの声にハッとする。

 気が付けば僕は、台所に立っていた。


 僕はラシャラさんを手伝って、夕飯の後の洗い物をしているところだった。

 手当をしてもらったことと、屋敷に泊まらせてもらっていることへの恩返しのつもりだ。


 ……まさか洗い物に抜刀術が役に立つわけじゃないしな……。

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