少年、襲撃される。
「ところでニル様」
「は、はい」
「家は見つかりましたか?」
「それが実は、位置関係があやふやでよく分からないんです。だから、まだ見つかってません」
一応屋敷の外に出て山の方を歩いてみたのだけれど、見覚えのある場所には辿り着かなかった。
山小屋に住んでいたのは覚えているけど、帰り道は分かっていない。
「そうですか。ノイン様がお許しになっているのなら、私に不満はないのですけれどね」
「すみません、ご迷惑おかけして」
「……謝る必要はありません。私もあなたと似たような境遇にありますから」
「え?」
洗い物を終えた手をタオルで拭きながら、ラシャラさんが赤い瞳を僕に向ける。
「みなしごだった私を保護し、家事手伝いとしてこの屋敷においてくださったのはアハト様―――ノイン様のお父様です。あの方に助けられなければ、私は今頃路地裏で野垂れ死にしていたでしょう」
「路地裏で……? でも、ラシャラさんはシュニ人でしょう? 誰も助けてくれなかったんですか?」
「一言でシュニ人と言っても千差万別です。ナパ人とそう変わらない暮らしをするシュニ人もいるのです」
「……そうなんですか」
「さ、こんな話はやめましょう。ニル様、お風呂はどうされますか?」
「風呂ですか? 僕は後からで構いませんよ」
僕が言うと、ラシャラさんは表情を明るくした。
「そうですか。では、私が先に入らせてもらいますね」
「……お風呂好きなんですか?」
「好きなんです。一緒に入りますか?」
「い、いえ、僕は遠慮しときます」
「冗談ですよ。それでは」
そう言い残しラシャラさんは台所を出て行った。
さて、僕はどうしよう。
そういえば今日の分の素振りがまだだったな。適当な棒を見つけて、一応やっておくか―――。
「!」
嫌な気配がしたのはその時だった。
殺気にも似た圧迫感。
僕は一度呼吸を整え、気配のした方へ急いだ。
※
僕は明かりの消えた廊下に身を屈めながら、暗くなった庭の様子を窓から眺めた。
複数の影が蠢くのが見えた。
気配は屋敷を取り囲むように動いていく。
統率の取れたその動きは、きちんと訓練を受けた人間がする動作に見えた。
……まあ、僕はプロの傭兵でもなんでもないんだから、そんな人間が感じたことなんてあてにはならないんだろうけど。
しかし、敵意を持った集団が屋敷に現れたということだけは間違いない。
さて、どうする?
誰から倒す?




