反逆者、覆面を被る。
※
というわけで。
いや、何がどういうわけかは分からないが。
恐らくは僕とメフィも『リュウビ』という組織に組み込まれたのだろう。僕らの知らない間に、クロの頭の中で。
そういうわけで――僕らは『リュウビ』の隠れ家にやって来たのだった。
それは、ロニ区の中心街から少し離れた、港町の地下にあった。
「街の地下には下水道や地下鉄、その他諸々の導管が通ってるんだ。その中で地図に載っていない、例えば建設途中で破棄されたような場所を利用させてもらってるってわけさ」
管の中に家をそのまま突っ込んで居住区に改造したような施設で、電気やガスなど生活に必要なものも全て完備されていた。
ここまで来るのにマンホールの下に潜ったり地下鉄の線路を横切ったり、とにかく複雑な道を通ってこなければならなかった。
多分、僕一人なら絶対に迷子になっていただろう。
「それじゃ、普段君はここで生活しているの?」
「いや、俺は俺で別の住処があるから。ま、その話はここではナシだ。あとで教えてやるから」
広い部屋の中心に置かれたソファに腰かけながら、クロは言った。
「……?」
しかし、いまいち意図が分からないな。
どういう意味だ?
「あのな」
と、クロが僕に顔を寄せる。
「ロニ家に偽装してもらった戸籍があるんだよ。そっちの方は『リュウビ』の連中に話してねえん
だ。俺はただ、『リュウビ』の指揮官であり謎の存在『クロ』……ということさ」
そういえば、あの『リュウビ』の構成員もクロの正体は誰も見たことがないとか言っていたような。
「じゃあ、今日初めて姿を見せるわけだね?」
「そういうことさ。そしてニルは俺の優秀な部下ってことになる」
ふわあ、とメフィがあくびをした。
「御託はもういいよ、クロ。そんなことよりも、お前は今まで姿を隠してやってきたわけだろう? どうしてわざわざ正体を現すような真似をするんだ。それともそのサングラスですべてを隠せると思っているのか?」
「これだと何かマズいか?」
「マズいだろう。『リュウビ』というのはナパ人の組織なのだから」
「ふうん、そうか。ま、それも確かにそうだな。ナパ人はシュニ人の言うことに従いたくはない――その通りだろうな。だからこんなものも必要になる」
クロはソファから立ち上がり、僕らに背を向けて壁際に歩み寄った。
そんなクロの様子を見ながら、メフィが訝しげな顔をする。
「……何をする気なんだろうな?」
「さあ?」
「ありがちなのは、顔の皮をめくったら真の顔が出て来るとかそういうやつだよな」
「はあ……?」
「なんだその顔は。本当だぞ、嘘じゃないぞ。大泥棒はそういう技を持っているんだ」
「ふうん……」
「さあ待たせたな。これなら隠し通せるだろう」
クロが僕らの方を振り返る。
その顔は覆面で覆われていた。
あの、『リュウビ』の構成員が被っていたものを少し派手にしたようなデザインの覆面で。




