少年、塔へ向かう。
覆面の男は、覆面越しにも分かるくらい唖然とした表情で、地面に倒れこむ治安警察の一部隊を見つめていた。
「あ、あんたたち、何者なんだ……?」
「通りすがりの住所不特定無職(男性・年齢不詳)だ」
「そして私はその契約者でぷりちーでぐらまらすな悪魔、メフィちゃんだ」
「……何者なんだ……?」
微妙な空気が辺りに漂う。
わ、笑うところだったんだけどな。
気まずくなった僕は、一度咳払いをした。
「と、とにかくさ、僕は君の望み通り助けてあげたわけだ。あとは君の自由だ。どこまででも逃げるがいい」
「いや、そういうわけにはいかない。これもすべてクロの計画の内なんだ。任務を放棄するわけには……」
「クロ?」
僕が訊き返すと、男は息を呑んだ。
「わ、忘れてくれ。あんたには関係ない話だ」
「そのクロってやつがトラックをビルに突っ込ませた張本人なの?」
「……そうだ」
観念したように男が言う。
「よし。じゃあ、そのクロって男のところに案内して欲しい」
「そ、それは無理だ!」
「どうして? それともあれかい、君は命を助けてもらった恩を返せないって言うのかな?」
男は凄い勢いで首を振った。
「そうじゃない! クロの正体は誰も知らないんだ! 俺達『リュウビ』はただ、あいつの命令に従うだけで……」
と、その時、男の腰に装着されている機械から声が聞こえて来た。
『こちらクロ。Dの5番、ポイントB地点に向かい撤退を援護しろ』
「……その機械は何? えーと、Dの5番さん」
「と、トランシーバーだ。クロからの命令を受信している」
「では、今現在もそのクロという人物は、お前たちに逐一指示を出しているのか?」
口を挟んできたのはメフィだ。
男が頷く。
「そ、そうだ」
「だとすれば、そいつはこの状況が確認できるような場所に居ると考えるのが自然だな」
メフィが僕の顔を見上げる。
その琥珀色の瞳が怪しく光った。
「……クロの位置が分かったの、メフィ?」
「さあな。だが、この街全体が見渡せるような場所なんて限られるだろう。例えば―――」
そう言ってメフィはある地点を指さし、言った。
「例えば、あの廃墟の塔とかな」
かつてナパ人の繁栄があったあの廃墟の街並み。
その中心にそびえたつ塔。
確かにあそこからなら、中心街が一望できるだろう。
「なるほどね。大体わかった」
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