少年、お姉さんとぶつかる。
※
廊下の明かりをつけてしまうと、敵に自分の位置を晒すことになってしまう。
だから僕は月明かりだけを頼りに、廊下をノインさんやラシャラさんを探して走り続けた。
爆発があったのは屋敷の正面側。
―――ということはお風呂場がある方向だ。
ラシャラさん、先に風呂に入るとか言ってたよな。
大丈夫かな。
なんてことを考えて廊下の角を曲がった瞬間、何か柔らかいものとぶつかった。
敵か!?
僕は瞬時に立ち上がり剣を構え―――。
「な、な、何をしてるのですか!? こんなところで!?」
「……え?」
見れば、バスタオルを体に巻いただけのラシャラさんが床にしゃがみ込んで僕を見上げていた。
さっき僕がぶつかったのは彼女だったらしい。
お風呂から慌てて出て来たのか、ラシャラさんの髪はぼさぼさになっていた。
「あ―――あんまりじろじろ見ないでください、ニル様」
ラシャラさんは恥ずかしそうに身を屈める。
僕は慌ててラシャラさんの体から目を逸らした。
「す、すみません。ただ、その、どうやら招かれざる客が来たみたいだったので、ラシャラさんたちが無事かどうか確かめようと思って」
「! ……そうでした。さっきの爆発音が聞こえましたか? ノイン様が狙われているかもしれません。急ぎましょう!」
素早く立ち上がったラシャラさんはバスタオルを片手で押さえながら、ノインさんの部屋がある方へ走り出した。
僕も敵の気配を探りながらその後を追って走る。
「こんな風に誰かから襲撃されることって、最近は珍しくないんですか?」
僕が言うと、ラシャラさんはうんざりしたような顔でこっちを振り返って、
「そんなわけないでしょう。馬鹿なことを言わないでください」
「ですよね。すみません」
常識が変わってしまったのかもと思ったけれど、どうやらそうではないらしい。
ノインさんの部屋に辿り着いた僕らは、そのまま室内に飛び込んだ。
「大丈夫ですか、ノイン様!」
ラシャラさんが叫ぶ。
が、当のノインさんは案外落ち着いた様子で部屋の椅子に腰かけていた。
彼女は慌てっぱなしの僕らに微笑みかけると、
「二人ともありがとう。……私は心配ありません。それよりもラシャラ、服をお召しになったら? 私のを貸してあげましょうか?」
ラシャラさんの顔が一瞬で真っ赤になったのを、僕は目撃してしまった。
「い、いえ、私は、あ、いや、そんな、ノイン様のお洋服を着るなど、いけません!」
しどろもどろになりながらラシャラさんが言う。
「ですが、そんな恰好で歩き回るのはいけませんよ。部屋着がありますからお着替えになって」
「……は、はい」
降参したように、小さな声でラシャラさんが返事をした。
―――――百合の波動を感じるッッッ!!
「ニルさん」
「は、はい?」
気づけばノインさんがじっと僕の顔を見つめていた。
「いつまでラシャラを見ているつもりですか。ラシャラが着替えられませんわ」
「あ、はい! そうですよね! すみません!」
僕は足首が引きちぎれるような勢いで回れ右をした。




