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21 蜜

――今どんな風にお前の目には俺が映ってる?



「目障りなんだろ、俺の事」


「…………そんな事、言ってねぇよ」




「俺が言えた義理じゃないのに

お前からそんな態度取られるの、結構……堪える」


「それって、あの男からそうされてるようで?」


一之瀬は苦々しく言う。





「……先生?」



「……だから」


「何?」


強い口調で聞き返される。


「お前だからだ」


「え……」



頭を上げようとしない俺に業を煮やして

一之瀬が俺を揺さぶる。


「どういう意味?オイって……!?」



俺の顔を見るなり、その声を詰まらせた。


「見る……な」



「……なんで、そんな顔してるんだよ」


俺の両腕を掴んだまま

声のトーンが落ちた。


「ズルイだろ、アンタ。

くそっ!こっちが忘れようとわざわざ

愛想尽かれる為に努力してんのに、

何で無駄にさせんの?」



腕に食い込む指先が痛い。


「黙ってクラス落ちさせてよ。

こっちは目の届く範囲でアンタいたら

クラスの連中がいようと俺、襲いそうに

なるの必死に我慢してんだぜ?

分かんないのかよ!」


尚も腕に力を込める。


「なんで……こんな時に涙なんか見せんだよ」


「意味なんか無い。勝手に出てるんだ」


「意味なく涙なんて出ねーって!

それに、辞めるってなんだよ、そんなに

俺のそばにいるのも嫌かよ」


「ちが……怖いんだ、お前がいなくなるのが

また大事な奴が目の前からいなくなるのが怖いんだ」


「身代わりでも大事?

……身代わりだから大事?」


更に言おうとする一之瀬を遮って

俺は話しだした。



一度もコイツに話したことのない過去を洗いざらい。


隠すことはもう何もない。



「七嗣は俺の幼馴染だった。

ソイツを好きだという奴が現れ、

親友の立場以外でその横にいれる存在に

危惧を抱いた―――


そして事故が起きて、九方と知り合った時、

初めて『七嗣の事好きなんだろ』と

指摘されて戸惑ってたんだ」


淡々と二条の病気の事、七嗣の事その全てを。


「……七嗣がいなくなって、

もう後はメチャクチャだった。


喪失感があまりに強くて、

正直好きだの何だのとか考える余裕とか全然なくて。


お前を最初に見た時、懐かしさが込み上げてきた。

あまりの嬉しさに……俺はそれが

アイツへの想いからくるものばかりと

思い込んでいた。

……実際それもあったから、余計」


「…………」


「ずっと考えていた、ずっと。


七嗣と俺はこんな関係になりたいと

本当に思っていたんだろうかって」



一之瀬は無言で俺を見ていて

俺も真っ直ぐにその視線を受け止めた。



「だから、気が付くのに時間が掛かった」


目の前の人物の表情が変わる。



「……お前だからだと思う。

お前と会って本当の恋をした」



その顔は明らかに驚きを示す。



「え……今、何て?」


「お前のことが……って言った」


「小さくって聞こえないから」


「今更過ぎて、言えない」


「今更でも後更でも良いからちゃんと言ってよ。

聞きたい、アンタのその口から」





「好きなんだよ、一之瀬。お前が」







途端、頭ごと一之瀬に抱きしめられた。



「あーもー!クソッ!

アンタが好きだ好きだ好きだ好きだ!!」


「一之瀬?」


一之瀬の言葉が上から降る。


「どうやったって、やっぱり好きなんだ」



「俺は……」


「黙って。辞めるとか言わせねぇから

俺が好きなら、一緒にいたいはずだろ?」


「それでは示しがつかない」


「誰に対して?自分?俺?」


「両方だ」


髪の毛を荒々しくかき乱されたかと

思うと、噛み付くようなキスをされた。



息が出来ない。


「も……」


「辞めないって、俺に誓えよ」


飲み込めない唾液が漏れる。


「ん……っ!わか……ら、離せっ」


両手で押し、やっとコイツを引き離した。

肺活量全部使い果たしたのではないかと

思うほどの、疲労感。


自然、息が上りそのまま一之瀬を見上げる

形となる。


  


「あ、あのさぁ……先生、ヤバイってその顔。

ここが学校だからって油断しすぎじゃね?

俺が何も出来ないって思ってんだろ」


「こんな時に“先生”って呼ぶな」


「何?まだ背徳感あんの?」



「当たり前だ。生徒に手を出すとか、

もうそれでけでも」


「あーそこは悩まなくていいし。

実際、手を出してるのは俺だから」


「…………」


「そこで顔真っ赤にならないでよ、俺までつられるだろ」


自分で顔色とか簡単にコントロール

できるならそうしてる。



「なぁ……保健室、行こ」


一之瀬は指先を絡めてそんな事を言ってきた。


「断る」


「何で?ギシギシうるさかったから?

あの音がイイんじゃん。自分だって

メチャあの音に煽られてたくせに」


それは、耳に舌を入れながら言う言葉か。


「本来あそこはそういう場所では無い。

前もお前が無理やり連れ込んだんだろ」


「あーそうだっけ?」


白々しく言う言い方に横目で睨む。


「大体あの時、外に声が漏れるからって

お前に口抑えられながらで、こっちは息が苦しかったんだ」


「じゃ今度は抑えたりしないから」


「お前は他の奴に、

俺の声が聞こえても良いんだな?」


「――嫌だ」


「じゃ無理だろ。

お前相手に、俺は声を抑えれる自信なんかない」


一之瀬をみると何故か呆れたよな顔で俺を見ている。


何かおかしなことを言っただろうか?


「……なんていうか、

アンタいちいち言う事、可愛んだよ……

どうしてそこまで授業の時と違う?

此処では俺ですら怖いくらいなのに」


「先生の顔とプラベートは違うだろ」


「生徒と恋人とは違うって事?」


「…………」


「核心になると黙るの悪い癖だよ。

じゃさ、何て呼べばいいの?

やっぱ【十朱】?」


「下の名前呼べよ」


「それって、ベッドの中限定?」


一之瀬の頭を叩く。


「調子に乗るな」


殴った手首を取られそのまままた、キスをされた。


「……二人限定の時、使うね」


「当然だ」


いきなり、ひ~~~~っ、とか

変な奇声を上げて再び抱きついてきた一之瀬を

もう一度、ポカリと殴った。




「服を脱がすな!!」










後日。



「まんまと俺は騙されたんだな」


「はて。何を仰ってるのか、俺にはサッパリ」


ここはあの隠れ家的ショットーバー、

横には九方。


「あのマスターお前の叔父さんらしいじゃないか」


「何でバレてんだ?」


あの後、カウンターで突っ伏していた俺を

気の毒に思ったのか、マスターは

そっと“あれで可愛い甥っ子なんですよ”と

人のいい笑顔で教えてくれたのだ。


「……嘘は言ってないんだが。

でも結局、お前はアイツを選んだんだろ?」


「ああ」


「ま、真偽はどうであれ

騒いでも泣いても人の気持ちは変えようがない。


時には無駄だと分かっていても

足掻きたくなるけど、お前が幸せだと

今思っているなら、取り敢えずそれで良い」


「九方」


「愚痴は聞かないけど、こうやって

飲みに付き合ってくれれば

そのうちチャンスが又あるかもしれないしな」


ニヤリと笑って言ってくれたその言葉を受け、

俺も一緒に笑って見せた。


真意がどうかとか追求する必要はない。


それは俺ではどうしようもないことであり、

九方も恐らく望んではいないだろうから。



本当にこの男には、救われてばかりいる。


いい友人で、親友……悪友か。



いつかお前に何かあった時は

今度は俺が助けになりたいと

胸の中で思ったのは、



今は秘密だ。



此処までお付き合い頂きありがとうございます。

普段、本を読まないのでとても分かりずらい文章にイライラされたのでは

と思います……スミマセン。

イラストも間に合っていないようですし(笑)


この話はもともとマンガで七嗣×二条がメイン。語り手が十朱でした。

平行して九方×十朱(一之瀬は登場なし)

プロットを元に変更しました。



そのうち後日編等を自サイトでやろうかなと思っています。



又、男×女小説の続きに戻ります。


それでは、またどこかで~^^

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