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2.どんなドレスにする?

「オティーリエ様に拝謁させていただきまして、自分がいかにその魅力に合わない服を作っていたのか痛感いたしました。

 これこそ、オティーリエ様の魅力を存分に引き出すドレスにございます。」


そう言って、ロザリーがささっと描いたスケッチをオティーリエに差し出した。

オティーリエを見た瞬間に降りて来たインスピレーションのままに描き出した自信作。


「そのようなことはございませんわ。

 ロザリーのドレスはどれもとても素敵でしたもの。

 それでは、拝見させていただきますね。」


ロザリーが差し出したスケッチブックをヨハンが受け取って、オティーリエに手渡す。

それから一歩下がったヨハンは、完全に無表情だった。

内心、笑っているのを必死に表に出さないようにしている。

と、いうのを、オティーリエは敏感に察した。


このような場面で、ヨハンにそのような対応をさせるなんて、いったいどのようなデザインだろう?と、そのスケッチを見たオティーリエは、内心、驚愕した。

表には出さないけど。


表には出さないけれど!


『主はこれを着るのか?

 それは楽しみだ。』

『いえ、さすがにこれは着れません。

 もっと無難なデザインに変更していただきます。』


大胆、と言えば大胆。

斬新、と言えば斬新。

確かに、清らかさと可愛らしさを兼ね備えてはいた。

しかし、オティーリエの頭に浮かんだ単語は。


奇抜。


だった。


トップスは胸元も背中も大きく開いていて、と言うより、お腹も出ていて、むしろ布面積はビキニの水着もかくや、というほどに最小限。

その少ない布に様々な装飾が付けられていて、それで肌を隠していた。


そこまでなら、まだいい。

いや、よくないけど、いったん脇に置いて。

勢い余ったのか、なんと背中には小さな蝶の羽根のような飾りが付いていた。

それから、ボトムスは長ズボンの上に右半分を斜めに覆うようにスカートを履き、ズボンは一切柄のないものながら、スカート部分には豪奢な装飾が入っていた。


これにはヨハンとアーサーの反応も納得というものだとオティーリエは思った。


今回はお披露目の衣装である以上、フォーマルさも求められるハズなのに、フォーマルさがズボンくらいからしか感じられない。

そのズボンも、斜め半分だけスカートを上から羽織るので、フォーマルからは大きくかけ離れている。


ともあれ、オティーリエは気を取り直して。


「マダム。

 まずはお披露目当日の予定をご確認下さいませ。」

「予めお渡し出来ず申し訳ございません。

 今、お見せするものも、正式に発表されるまでご内密にお願いいたします。」


ヨハンが一枚の紙をロザリーに差し出した。


「そのように重要な物をよろしいのでございますか?」


ロザリーが驚いた様子で尋ねた。

まだ、その差し出された紙に手を伸ばしてはいない。

このあたり、さすがは上流階級の客の扱いに慣れていることが分かる。


「マダムは本人のみでなく、その場の雰囲気や状況にも合わせてデザインをされていらっしゃるとお聞きしていますわ。

 ですので、当日の予定をマダムにはお知らせすべきだと考えましたの。」


オティーリエの答えに、ロザリーはオティーリエが自分のデザイン哲学を知ってくれていたことに感激した。

そして、そのために重要機密を開示してくれることにも。

深く頭を下げて感謝を伝える。


「細やかなお気遣い、深く感謝いたします。

 承知いたしました。

 それでは、拝見させていただきます。」


それから、ロザリーはお披露目の予定表を受け取ると、読み始めた。


「まあ。

 パレードもされるのですね。

 これは領内が大いに盛り上がることでしょう。」


ロザリーが楽しそうだと明るい声で言った。


お披露目は、基本的には領内へのお披露目。

なので、まずは中央広場で演台を設けてエリオットとオティーリエが挨拶をする。

その後はオープンカーに乗って東西北の各大通りと南地区のメインストリートをパレードすることになっていた。

パレードの後はお城に戻るのだけれど、とりあえず領都に住む人達や領都の外からパレードを観に来た人達にその姿を見せることになっている。


「そうなのですわ。

 ですので、今回は新たな流行を発信するのではなく、ホルトノムル侯爵令嬢に相応しい、落ち着いた印象のドレスをお願いしたいと考えておりましたの。」


にこやかに微笑んで注文をする。

やんわりと、そのデザインはお断りです、ということを伝えつつ。

ロザリーはその意を正確に汲み取って頷いた。


「オティーリエ様のご意向は承知いたしました。

 少々残念ですが、このデザインは取り下げさせていただきます。」


少々どころではなく、かなり残念そうにロザリーは言うと、次のデザインをさらさらさらっと描いた。

ロザリーは誰が相手でもロザリーでした。

常にインスピレーションを大切にデザインをしているのですが、令嬢達には、少々冒険が過ぎたようです。

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