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テストも終わって、平穏な日々が戻ってくる、と思いきやこの学園のビッグイベントが近付いていた。
「舞踏会?」
どうやらこの学園では、一学期の終わりに舞踏会をするらしい。それは平民と貴族の交流も兼ねたものでもあり、何かと伝統的らしいのでほぼ強制参加だという。
そんな舞踏会について、シャルは嬉しそうにあたしに語ってくる。
「ラストダンスでペアになった人は、永遠に結ばれる噂があるんだよ。だから、事前に踊る相手を決めるその申し込みが絶えないってわけ」
「ほー二年三年になったらどうするのそれ」
「しらない。あくまで噂だしねぇ。アスカは皇女様誘うんでしょ?」
「誘わないけど?」
「え?」
「え?」
「じゃあ、誰誘うの?」
「誰も誘わないけど」
「ええ!?」
シャルの大声が耳につんざく。
「だってあたし、踊れないし。てか同性で踊るものなの?」
「確かに。相手がいない人は友達同士で踊ることもあるらしいよ! 噂だけど! それでも誘わないの?」
「だからあたし何にも踊れないって。舞踏会で踊るダンスってアレでしょ? ゆっくり踊るアレでしょ?」
「その舞踏会のために、体動かす授業は全部社交ダンスになるんだよ!? 大丈夫踊れるよ!」
「はあ……!?」
「皇女様、朝から忙しそうだよ。断るので」
「まだ舞踏会まで遠いでしょ? なんでこのタイミングで」
「他のクラスではダンスの授業始まってるんだろうね。いいな〜あたしも早く覚えたーいー」
ダンス。出来ない人からしたらかなり苦痛なのだ。あたしは体が硬いし、どちらかと言うともっと激しいスポーツ、バスケとかバレーとか、サッカーの方が好き。
「シャルは踊りたい人とかいるの?」
「えーほら、一組のイケメンのジャック様とか〜、あと、皇女様の護衛やってたクロイド様とか、平民だと一組のリオって人がイケメンだよね〜」
「顔ばっか見てさ」
「アスカだって皇女様顔でしょ?」
「中身だって!」
全く、シャルは何もわかっていないんだから。
「でも同性でも惚れるの分かるなあ、あんなに可愛い顔してるもんね。幼馴染だっけ?」
「うーん、一応、ね……?」
「うだうだしてると取られちゃうよ。なんで皇女様が引っ張りだこって、最初なら誰も相手がいないし、可能性があると勘違いした人間が寄ってくるの!」
「ふーん」
この世界だと、皇女様は誰と踊るんだろうか。特に攻略対象の誰かと仲が良いというわけではなかった気がする。
時折、誰かと話しているのは見るが、一番仲がいいのは多分クロイドだし、彼と踊るのだろうか。それとも、まだ会ってない攻略キャラのバロンといつの間にか仲良くしているのだろうか。シルビアの動向を全て追えてる訳じゃないから、何も知らない。
「あ、皇女様来たよ!」
「はいはい」
「人の誘いを断り続けるのは流石に疲れますね。何の話をしていたんですか?」
「皇女様は最後に踊る相手決まりましたか? 今その話をしていて」
「なるほど」
シルビアは少し困ったような顔をして頭を振った。
「実はまだ決まっていなくて」
「踊りたい人とかはいないんですか?」
「踊ってもいいと思う方はいるんですけどね」
「ふーん」
目が合うと微笑まれる。それに驚いて思わず顔をそらしてしまったが、めちゃくちゃあたしの顔を見ている気がする。気の所為だよな?
「皇女様、あの舞踏会って同性の友達同士で踊ってもいいんですよね?」
「はい、例年そのような方はいると聞いていますよ」
「やりたいんだけど、そもそもさ、ダンスを仮に同性同士で踊るなら、どっちかが男用のフリ覚えなきゃでしょ? あたし覚えられるかなぁ。自分のでさえ手一杯になりそう」
全く、シャルはなんてことを聞いてくれるんだ。
「苦手なら、貴方が無理に覚える必要もないと思うんです。パートナーがきっと覚えてくれますよ」
「わざわざそこまでしてあたしと踊りたいって人いるのかなあ、踊らなくても仲の良さは変わるわけではないしね。ってか踊る人決まってないのにこんなこと話してても仕方ないよね。あたしってば気が早いんだから〜」
「いえ、きっと、相手は見つかると、思います」
そんなに励まされても。あたしダンスなんて一ミリも出来ないカッチカチのゴーレムなんだから。でも、そうだな。
「っもしよろ──」
「そうだね! あたし頑張って探してみるよ! ありがとうシルビア!」
ダンスの授業もあるらしいし、あたしが上手くなる可能性は大いにある。それにヒップホップとかと違って、緩やかに踊るだけだし、初心者にも簡単そうだしね。
「な、なに?」
シャルの呆れた顔があたしの視線に突き刺さる。
な、なんかした? そんな顔で見られても困るんですけど。
「なんにも」
大きくため息をつく二人。あたしは除け者にされた気分になって、ちょっと不機嫌になった。




