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この二週間、色々あったせいで、まさかおばあちゃんから手紙が来ていたことを知らなかった。内容はこうだ。
『元気そうで何より。
中々連絡をくれないから死んだのかと思ったわい。お金を入れておいたから好きに使うように。
それと、学園の地図を送ってほしいんだが出来るかい? 宜しくたのんだぞ』
恐ろしいほどの大金が入っていて、怖くなった。
二週間は、セーフだろうか。
流石にアウトだろう。あたしは返事を急ピッチで書こうと思ったが、地図を持っていない。図書館の隠し部屋の存在も気になるし、調べてから送ることにした。
「学校探検? 楽しそーう」
「秘密の部屋とかあったら、探してみたくない?」
テストが終わり、あれから色んな人と仲良くなった。特にシャルとは趣味が合うし、気も合うし、料理も好きらしくしょっちゅう話すようになった。
「学園の地図って何処にあるかな」
「さあ。見せてもらうことはあったけど、持ち出し厳禁らしいくて、校内にも貼ってないよね」
「持ち出し厳禁!?」
「うん。部活動の場所が分からなくて先生に見せてもらったことがあって、その時にそう言ってたよ」
地図って普通用意しておくべきじゃないのか。そんなことをするなんて、やっぱりやましいことがこの学園にはあるとしか思えない。おばあちゃんは結構正義の味方の可能性がある。
「よし、ならあたし達で地図作ろうよ! 誰も持ってないものを持ってるって凄くない?」
「確かに〜楽しそ〜! やるやる!」
よし、何でも楽しんでくれる人で助かった。流石あたしと気が合うくらいの友達。こんなことで楽しめるなんて才能だよ。
「じゃあまずは一階から」
あたし達はノートを持ってきて一階から大雑把に教室を四角で描いて地図を作っていった。
一階には保健室、職員室、トイレ、一年生の教室、中庭があった。
そして、二階。
二階は何が重要かというと、図書館があるのだ。そう、あの隠し部屋がある図書館だ。
あたしは扉の前に立ち、小声でシャルに話しかける。
「あのね、図書館には実は隠し部屋があるの」
「か、隠し部屋……!?」
「そう、この間シルビアが使っているところを見たから、これは確実。誰にもバレないようにそこを探し出そう」
「おお〜、わくわくして来たよ!」
図書館は二階で半分以上のスペースを取る、この学園最大の部屋だ。
「図書館の端の方に多分隠し部屋があるから、そこまで行こう」
「え、ねえ。アスカ、あれって、」
「し、シルビアぁっ」
「バレないようにしないと」
そう言った側から、シルビアは顔を上げてあたし達の方を見たではないか。
「ねえ、シャル、隠し部屋どの辺にあるかちょっと確認してくれない?」
「一人で?」
「うん。シルビアってなんか天才でこっちの考えに気づかれたら怖いし、馬鹿の二人が図書館に来るとか怪しいし、探すついでに良い感じの本探しといて」
「わかった。こっちは任せて」
そんな作戦を立てて、あたしはシルビアの隣に座った。
「何読んでるの?」
「えっ? まさかこちらに来るとは。あの方はお友達ですか?」
「うん。シルビアって恋愛小説好きでしょ? あたしもこの世界来てから読んだけど、意外と面白くてさ〜。今何の本読んでるの? オススメ教えてよ」
「わ、私は……」
「どしたの?」
中々口を開かないシルビア、それどころかあたしとは一切目を合わせない。
「シルビア?」
顔を覗き込もうとすると、本で顔を隠してしまった。しかしそれはあたしへの手助けだった。
「百合の花園? 有名なの?」
「え、あっ」
「どんな本?」
「し、知らないんですか!? 界隈では有名だと聞いていたのに!」
思ったよりもデカめの反応が来てびっくりした。ここは図書館だ。それを彼女も知らないはずがない。
静かな場所に木霊する声。恥ずかしそうにお辞儀をして謝罪する彼女の耳は赤い。
「それ、恋愛小説で有名なの? 有名どころは読んだはずなのに知らなかったなぁ」
おばあちゃんの家にいる時に読んでいたし、寮に何故か大量の本があったので暇つぶしに読んでいたのだ。スマホがないこの世界ではとてもいい娯楽である。
「アスカはこういうジャンルは読んでいないのですか?」
「それってそもそもどんなの?」
「同性愛の、本は……」
ドーセーアイ。どーせーあい。どうせ愛?
──ど、同性愛……?
「は……い……?」
今度は、私がたじろぐ番だった。
「ど、同性愛ってどういう……いや、そういうことだよね」
「…………」
「あたしは勿論容認派だよ」
「ここは図書館ですが、恋バナでもしますか」
「図書館で……!?」
このタイミングで同性愛の本を読み出すのは、凄く気まずい。あたしのこと好きになった? でも理由が分からない。それより、ニコの方が好きになる要素がある。何処かで惚れたんだろうか。勉強会とかで?
「恋とは、どういうものでしょうか」
「ええ……? 恋は……恋、か」
「誰かを好きになったことはありますか?」
「そんな余裕今まで無かったからな、どうだろ。シルビアは恋をしてるの?」
「分かりません……分かっていたら、こんな風に本を読んでいないのです」
案外、深刻そうな顔をするシルビア。あたしは乏しい、恋愛漫画や恋愛小説で読んだ知識を総動員する。
「その人のことを抱きしめたい〜とか、話したい〜とか、極端な話付き合いたい〜とか、思ったりしたらかな」
「貴方は私にそう思いますか?」
「あー……あたしの場合は違うような? 恋寄りではないファンっていうか、シルビアのことは好きなんだけど、その、好きだよ?」
「ありがとうございます」
「シルビアのその気持ちはどうなの?」
「そうですね……。私のこの気持ちはまだ恋とは呼び難いのかもしれません。その人の変わった一面を見たいという気持ちは、恋でしょうか」
「ええ〜……? まあ、まだ興味があるくらいかなあ? あたしも詳しくないよ?」
「ただの友達に向ける感情ですかね?」
「ああ、そうかも。結構恋愛と友情って似てたりするし」
実際、明日香ちゃんが他の人と仲良くて嫌だ〜とか、言われることもあったしな。もしそれが恋愛でも当てまるし、これは友情だしそんなの気遣ってらんないよ。
「そうですか。では友情かもしれませんね」
「うんうん。解決したようで良かったよ」
「では、その上で相談ですが、友達なんて増えなくてもいいと思うんです。一人一人の関わりが減ってしまうし、段々と疎遠になってしまうし」
「……うーん。疎遠になったらなったで仲良くなかっただけかなあ。友達が多くても、本当に仲が良い友達、いわゆる親友とかさ、関係値が深い人が出来ると思うよ!」
「親友になる前に、疎遠になるのは嫌ですよ」
「こっちが仲良くしたかったら、頑張って話しかけるしか無いよね」
「そうですか……」
じっとあたしの顔を見つめるシルビア。
あ、これもしかして、あたしのことかな。いや勘違いしたくないし、そう思わないでおこう。
「最近、友達が増えていましたね」
「うん、結構増えたね」
「貴方が他の人と話すのを見ると、悲しい気持ちになりましたが、ただ私の努力不足だと今わかりました」
「あ、いや、あたしも話しかけられなくてゴメンね。これからはあたしも出来るだけ沢山話しかけれるようにするから!」
しっかりとあたしのことについてシルビアは相談していたみたいで胸が痛い。
そもそもこの子は友達と呼べる人が少なかったのを忘れていた。ちゃんと話しかけてあげよう。
「そうだ、前話してたお願いは貴方の身体を調べることでいいでしょうか?」
「え、それは、ちょっと……」
「お風呂に入れてくれた人に今更何を恥ずかしがる必要があるんですか?」
「意識があるのと無いのとでは違うの!」
「身体に付けられた呪いを調べたいんです。明日の放課後、今日でもいいですが、空いてますか?」
真剣な表情でそう迫られてしまったら断りにくい。
「ええ……なら、明日かなあ。今日はシャルといたし」
「そうですね。では明日の放課後は保健室に集まりましょう。先生に許可を取っておきます」
「あ、はい……」
そのタイミングでシャルが本を借りたようで、あたしの肩を叩いた。
「ごめん、もう行くね」
「はい。では明日」
そうしてあたし達は図書館を出た。
「どうだった?」
「隠し部屋は分からなかった、魔法使って開けてるんだと思う。あと、一つ違和感があって、気の所為かもしれないけど、ね?」
「うん」
「この大きすぎる図書館に対して、下の教室が少なすぎる気がするの。あくまで気がする、だけど。もしかしたら地下っていうか一階に続く部屋があるのかもしれない。」
「なるほど……」
「気の所為かもしれないよ。でも、一階の廊下の長さからしておかしいような気もする」
「ありがとう! 謎を見つけてしまった感があるね」
「うん。だからなんだって気もするけど」
「いいや、大きな一歩だよ。じゃあ次は三階にでも行きますか」
そうしてあたしは大雑把な地図を完成させ、少しの考察と情報をまとめ、おばあちゃんに手紙を送った。




