──*──*──*── リング上
一切の意識を手離し、反護を使ったマオの周りに流れていた空気の流れが変わる。
一切の感情も無くし、無感情となったマオは俯いていた顔をゆっくりと上げる。
瞳に光は宿っておらず、数え切れない程多くの命を奪って来た者の目に変わっていた。
ウォーミングアップのようにリング上でトントントン…と軽く低いジャンプを繰り返したマオは、リング上を蹴ると先程とは比べ物にならない程の速さで動く。
マオの防衛本能は、己の敵だと認識したランユクルの息の根を止める事にあった。
その目的を達成する為に、反護したマオは、ランユクルへ一切の手加減も容赦もなく斬り掛かる。
先程よりも数十倍も素早くなったマオの人間場馴れした化け物並みに尋常ではなくなった速さにランユクルも顔を歪ませた。
最早、ランユクルの目にはマオの動きがスローモーションでは見れなくなっていたのだ。
マオが繰り出す有り得ない連続攻撃をかわす事が困難となったランユクルは、攻撃を受け流そうとするが、隙のない連続攻撃には受け流しも出来ない。
ランユクルはマオの繰り出す容赦のない剣技の連続攻撃を受けるサンドバックと化していた。
あまりの連続攻撃の衝撃に耐えられなくなった魔法でコーティングされた木剣は柄部分だけを残して粉々に砕け散ってしまった。
これでマオの攻撃の手が休まると思ったら大間違いで、手ぶらとなったマオは素早く体術へ切り替えた。
セロから教わり、身体に叩き込まれて鍛え上げられたあらゆる体術を駆使してランユクルへ襲い掛かる。
“ 敵を殺す ” という実に単純且つ明確な目的を達成する為だけにマオは拳や足を振るう。
完全にマオ専用のサンドバックと化してしまったランユクルの意識は既に何処か遠く彼方へに飛んでいた。
──*──*──*── リング外
セロフィート
「 そろそろ止めないと失格となってしまいますね 」
セロフィートは生活を豊かにする為に生み出された便利魔法──古代魔法を発動させた。
マオの動きを止め、無惨にもサンドバックと化してしまった酷い姿のランユクルと共にリング外へ落とす。
マオがランユクルを殺してしまわないようにとセロフィートは、場外したヒラギロにもちゃっかりと使っていた重力魔法を掛けて動けないようにした。
試合を観戦している観戦客達やドミ判ぱんコ実じっさ況きょうん者しゃにも自し然ぜんな流ながれでリング上じょうから落おちて場じょう外がいとなったように見みせている事こともあり、誰だれにも疑うたがわれる事ことはなかった。
場じょう外がいして倒たおれているマオとランユクルへ駆かけ寄よったド審しんミ判ぱんコ実じっさ況きょうん者しゃが10カウントを取とり始はじめる。
マオの場ば合あいはルール変へん更こうに依よって “ 場じょう外がいした時じ点てんで負まけが確かく定てい ” となっている為ため、ド審しんミ判ぱんコ実じっさ況きょうん者しゃが10カウントを取とっているのは、意い識しきを失うしない気き絶ぜつしているズタボロとなったランユクルに対たいしてのみだ。
観かん戦せん客きゃく達たちからも「 ありゃ駄ダ目メだな… 」とか「 死しんでんじゃねぇのか? 」とか「 酷むご過すぎるぜ… 」という心しん配ぱいする声こえや同どう情じょうする声こえがチラホラと聞きこえて来くる。
審判実況者:ドミコ
「 ──静せい粛しゅくにしてくださ~~~い!
ランユクル選せん手しゅは生いきておりま~~~す! 」
ド審しんミ判ぱんコ実じっさ況きょうん者しゃの報ほう告こくに観かん戦せん客きゃく達たちから歓かん喜きの声こえが上あがる。
審判実況者:ドミコ
「 皆みな様さま、静せい粛しゅくにしてくださ~~~い!
場じょう外がいしたランユクル選せん手しゅは10カウントを取とりましたが試し合あい続ぞっ行こう不ふ可か能のうと見みなします。
マオ選せん手しゅに関かんしましては、ルール変へん更こうがありました通とおり、場じょう外がいした時じ点てんで負まけと見みなされます!
よって──、決けっ勝しょう戦せん第だい4試し合あいは両りょう者しゃ共ともに場じょう外がいという事ことで “ 引ひき分わけ ” とさせて頂いただきま~~~す!! 」
ド審しんミ判ぱんコ実じっさ況きょうん者しゃが宣せん言げんすると観かん戦せん客きゃく達たちからは不ふ平へいの声こえやブーイングが激はげしく飛とび交かう。
審判実況者:ドミコ
「 ──静せい粛しゅくにしてくださ~~~い!!
これは決けっ定てい事じ項こうです!!
皆みな様さまの異い論ろんは認みとめられま~~~ん!
決けっ勝しょう戦せん最さい終しゅう試し合あいを始はじめます。
チーム【 サムシング・グレート 】大たい将しょうのセロフィート選せん手しゅ,チーム【 矢や薙なぎ 】大たい将しょうの矢や薙なぎ選せん手しゅはリング場じょうに上あがってくださ~~~い!! 」
ド審しんミ判ぱんコ実じっさ況きょうん者しゃに呼よばれた矢や薙なぎが階かい段だんを上あがり、リング場じょうの上に立たつ。
セロフィートはセノコンとマオキノへ「 お前まえセノコン,達たちマオキノ、マオを回かい収しゅうしなさい 」とだけ言いうと階かい段だいを上あがり、リング場じょうの上に立たった。