冬の気付き
サブタイトルで分かるかもしれませんが、今回はツバサ視点。
誰かが世界を動かそうとしている。
店の中で死んだように眠る子供、エリーを見ながらにわたしは悟った。
店の外では何か、とてつもない事が起ころうとしているのだと。
わたしはあの日から世界を閉じた責任として、永遠に切り取られたこの世界を見つめるという道を選択した。
エリーをこの店で見守りながら、同時に三周目迎えた世界を見つめ続けている。
規則的にループしていくかと思いきや、二周目と三周目はまだ不安定で、魂の時間のみがループする。身体が付いては行かず、一周目で子供だった人間の身体は成長を遂げた。
しかしながらに、この全てが止まった空間に居るわたしにおいては、何も変わらない。
「エリー、この世界は開こうとしているよ」
答えが返って来る訳でもないのに話し掛けてみる。
九十九くんが居なくなってから、この店にはわたし1人だ。
正確にはエリーと2人だけど、意識があって行動しているのはわたし1人。
実質この空間で生きているのは1人なのだ。
寂しいと思った事がない訳ではない。
今だって十分に寂しい。
でも、
孤独に負けて逃げ出す事は出来ない。
この子を置いて店から出る事は出来ない。
この空間を手放す事はーー決して出来ない。
この店の店主は今、わたしだ。
それはSHOPと言う名のこの店……空間との暗黙の契約だった。エリーを眠らせたあの日から。
だからわたしはここに縛られ続けなくてはならない。