邂逅
……有を空じたところ無となる無を空じたところ有となる輪廻をさまよう者は誰かアミトースは無限無量であり無始からの誤謬により無限者から排除された有限の群は有限である種々の存在形態の闇をさまようそれは無限者自身に他ならない消滅への恐怖即ち無明が滅すれば無明を原因とした汝が蛇人種の保存意志であるところの行も生じず行により生命体が残そうとする設計識も残さない設計識により形成される概念への考えと肉体への衝動が生じないあるものはアミトースの願だけだけである思考器官の脳肉体の眼耳鼻舌身の感覚器官が汝が種の保存意志を反映せず種の衝動を軸にした感覚対象との接触も無く感受も生じず汝の種の保存意志に基づく感受作用が無いので苦楽の傾向が無く苦痛と快楽の傾向が無いので誘惑に負けず苦痛への恐怖もないかくしてアミトースとの契約により汝は歓びの下僕となる快楽への執着であるところの渇愛が無ければ種の保存に必要な快楽を感じる対象との接触であるところの快楽を感じる行為の繰り返しも生じず性行為も生じずかくして汝は完全なるアミトースの兵士であり死を恐れない勇猛なもの金剛のごとき不滅の智慧をもって身をよろい障礙より身を護りアミトースが目覚めるまで戦い続ける蛇人の戦士となりこの聖戦に身を投ずるのだ死力を尽くして戦えそうすれば歓喜浄土はこの世に降りて来る善男子まさに死すべし……
部屋中に黒き翼を拡げた「さまようもの」の言葉ではない、これら膨大な映像情報の連鎖塊は、時間においては刹那、ほぼ時間を介在させずに私の脳に転送された。
私の爬虫類脳は脳神経発火の電子信号のレベルは限界を超え、情報量が多すぎて処理が追いつかずに一瞬でパンクして意識を失った。
溶暗…
気づいたら建築角度のおかしい建物内にいた。すべて星空のような黒曜石の床、柱、天井。しかし、三次元空間にはありえない角度で構成されている。ティンダロス種の犬だったら駆け回るであろうその建築物は見るものを狂気に誘うには十分な景観だった。
倒れていた私は、ひんやりした床から起き上がると、辺りを見廻した。
「気がついた?」
無邪気な声が聞こえた。
振り返ると、色黒の少年が黒檀のように真っ黒な目でこちらを眺めていた。




