いじわる
【☆★おしらせ★☆】
あとがきにとても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
「この米がいいわね。軽くつけられている甘酸っぱさが、全体を味を引き締めてる漢字がするわ」
イカをもぐもぐと食べているアイリス。
頬をリスのように膨らませている彼女は、残り一貫になったイカをじっと見つめていた。
「それにこの上に乗っているイカの食感もいいわね。歯ごたえがあって、でもぷつりとかみ切れることもできて……」
もう一貫を平らげたアイリスが、もの悲しそうな顔をする。
イカをもう一皿頼んでやると笑顔になった。
かわいいな、こいつ……。
「生の魚って……こんなに美味しいんだね。今後は港町の依頼を積極的に受けに行こうかなぁ」
「生魚はきちんと寄生虫の処理ができる環境がないと、お腹下したりするぞ。もし食べるなら、地元の漁師のおっちゃんあたりから詳しい話を聞いておくといいと思う」
「うあ……お腹下すのかぁ。それならタイラーにここに連れてきてもらった方がいいかな……」
びんとろとサーモンをペロリと平らげた彼女は、そのまま液晶のレーンに流れている品の中から気になったものをタッチして注文し始める。
あ、文字が読めないせいで普通にさび入りを……まあいっか、面白いことになりそうだし。
「お肉、美味しいです……使われているソースも香辛料も、初めて食べます。……もう一皿頼んでもいいですか?」
どうやらルルはあぶりカルビが気に入ったようだ。
初めて食べる生魚より、慣れ親しんだ肉の方がおいしさも伝わりやすいのかもしれない。
「せっかくだし魚も食べてみたらどうだ?」
「むむ、そうでした……では、タイラーさんと同じものをお願いします」
「あっ、私の注文方法を!」
「ウィドウさん……先人の知恵に倣うのは魔術師として当然のたしなみ。この食べ方であれば失敗はしなさそうですので、真似させていただきました」
「よくよく考えてみると真似されても何かが減るわけじゃないし……一緒に食べよっか」
「はいっ!」
別に喧嘩するわけでもなく、一緒に俺と同じものを食べることにしたようだ。
ウィドウはさっき大量に注文してたと思うんだが……そういえば彼女、何皿ぐらい食べれるんだろうか。
ものすごい会計になったらどうしよう……ちょっとびびってきた。
二人の視線を感じながら注文パネルとにらみ合う。
こうなってくるの俺の注文力が試されることになってくるわけだが……変に冒険せず、無難にいかせてもらうか。
はまちとえびを三皿ずつにしよう。
俺は甘エビの方が好きなんだが、二人に配慮してゆでた通常のエビにしておくこととする。
アイリスが頼んだイカと、ウィドウが頼んだまぐろにあぶりチーズカルビにタコ、釜揚げシラス軍艦がやってくる。
統一感がなさすぎてめちゃくちゃカオスな状態だ。
「何かと思って頼んでみたんだけど……これ全部ちっちゃい魚なのか」
「うわっ、目がいっぱい……なんだかちょっと怖いかもしれないです」
「……(もぐもぐ)。――うん、でも味は悪くないよ! こっちの綺麗なのもいただこうかな」
いつの間にやら完全に箸の使い方をマスターしていたウィドウはそのままタコを口に含み……。
「――っっっ!!?」
……あ、そうだ。
ウィドウの寿司、さび入りのままになってたんだっけ。
「なんだこれ、辛……鼻が、鼻が痛いっ!」
熱いお茶を飲んでなんとか痛みを紛らわそうとするウィドウ。
つらそうな彼女を見ていると罪悪感に駆られたが、それ以上にわさびの洗礼を受けている彼女がかわいくてちょっとにやけてしまう。
……あれ、俺ってもしかして性格悪い?
――いや、かわいい子にいじわるをしたくなる的なあれに違いない。そういうことにしておこう。
「それはわさびって言ってだな……あ、ちなみにこっちのかつおの上に乗ってるのはショウガって言って……」
こうして俺達の初めての寿司は無事終わり、結局四人で六十皿くらい食べたところで、ひとまず店を出ることにしたのだった。
変に見栄を張って回らない寿司にしなくて良かった……これなら一日観光するくらいなら、なんとかなりそうだ。
寿司を食ってから、そのまま適当にぶらついていく。
飯を食べたこともあり、皆少し眠そうなので散歩をすることにした。
「タイラーさん、皆何か四角い魔道具をしきりにいじってますけど、あれはなんなんですか?」
「あれはスマホだな。簡単に言えば世界中の情報にアクセスしたり大陸を横断できる距離の人と連絡を取ったり、暇も潰せたりする優れものだ」
「そ、そんなものを暇潰すに使うだなんて……日本人の技術力が恐ろしいです……」
「ねぇ、これだけ優れた技術があるとなると、キャメロン王国が日本に侵略されたらひとたまりもないんじゃないか?」
「いやーするつもりなんかさらさらないと思うよ。というかできないしな」
少なくとも異世界に軍隊を送ることができるのも俺だけだし。
俺もそもそも国家間の交流の窓口とかになる気もさらさらない。
異世界交流は『戦乙女』の皆とするくらいで十分だ。
あんまり重い責任を持つのは嫌なのだ。
身軽でいたいとか言ってたら、最近の若者はとか言われちゃいそうだけど、それでも嫌なものは嫌なのである。
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