お寿司
【☆★おしらせ★☆】
あとがきにとても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
俺達が向かったのは、日本中にチェーン展開をしている某有名回転寿司店だった。
回らない寿司だと財布がピンチだからな。
魔術師タイラーはいつだって金欠なのである。
「イラッシャイマセー」
「わっ、板が喋ったわよ!?」
合成の音声ソフトで生成されたような生気のない声が聞こえてくると、アイリスがビクッと身体を動かす。
テレビを初めて見て中に人がいると勘違いしてた昔の人みたいなリアクションである。
四人でテーブル席に座る。
冷水の方が無難な気もしたが、ここはジャパニーズスタイルということで緑茶を飲むことにする。
「何だこれは、光る壁を謎の物体が流れていく……」
最近の回転寿司屋は、レーンの上に寿司を置かないことも増えてきた。
その代わりにテーブルの脇に取り付けられた液晶に、寿司ネタの映像がゆっくりと流れているのだ。
下手に液晶を弄って注文するより、こっちの方がわかりやすくていいだろう。
こっちをタッチしても、注文はできるからな。
「これが……スシなのね。上に乗っているのは……これが本当に、魚なの……?」
液晶を見つめながら、アイリスが呆然とつぶやいている。
海に面している街とはかなり距離が離れているため、基本的にイラの街に魚は入ってこない。
食べることができてもせいぜい塩漬けか干物くらいで、それでも高級品の割に味がいまいちと一部の好事家達しか食べないようなしろものだ。
なのでアイリス達は、生まれてから一度も生きている魚を見たことがない。
なので寿司ネタを見ても、いまいちピンと来ていないようだった。
「タイラーさん、生の魚って本当に食べても大丈夫なんでしょうか? お肉って基本的に加熱しないと食中毒になったりすると思うんですけど……」
「問題ないぞ。寿司屋の魚は生でも大丈夫なんだ。ほれ、見てみろ」
俺の指し示す向かいの席では、jk達が寿司をもぐもぐと食べていた。
それを見て絶句するルル。
ここでは今までの常識が通じないとわかり、完全に言葉を失っている。
「まあ最初は無理なら、魚以外が乗ってる寿司も食べられるから。加熱したお肉とか卵焼きとか、ほら、他にサイドメニューなんかもあるから」
「わかりました、自分にできるところからやっていこうと思います!」
「ウィドウ達の方はどうだ?」
「私は……そうね、これにしようかしら。白くて綺麗だし、食べやすそう」
アイリスがイカを指さす。
俺は彼女の指をそっと持ち、そのままタッチパネルに触れる。
するとさび抜き/さびありの表記と注文する皿数を決めるよう文字が飛び出してきた。
「た、タイラー、なんか急に動いたわよ!?」
「落ち着いてくれ、これは寿司の頼む量なんかのオプションを設定する画面なんだ」
「……なるほどね。それならまずは少なめでお願いするわ」
少なめなんてものはないんだが、とりあえず一皿だけ注文しておくことにする。
寿司を嫌いになられるのも嫌なので、まずはさび抜きからスタートだ。
「ウィドウは何頼む?」
「私は……とりあえずタイラーと同じのにするよ」
俺はびんとろとサーモンを二皿ずつ頼む。
ルルの方はまず寿司に慣れさせるため、あぶりカルビから頼んでみることにした。
「タイラー、あれはコップよね?」
「そうだな。日本で使われているコップで、湯飲みというんだ」
「ユノミ……」
上に大量に並べられている湯飲みを一人一つずつ手に取りながら、しげしげと眺める。
もうちょっと高級店だと一つ一つに大量の魚偏の漢字が書いてあるやつとか置かれてたりするんだが……せっかくだし日本土産に、そういうやつをプレゼントしてもいいな。
「これは日本の茶を飲む時に使うものなんだ。というわけでお寿司が来る前に、皆でお茶を飲もう」
「あら、お茶ならある程度はわかるわよ」
「ただ日本で飲まれているのはイラとは違って緑茶って言ってだな……」
緑茶の説明をしながらお湯の入れ方をレクチャーしているうちに、液晶がぴこんと電子音を鳴らす。
そしてものすごい勢いで寿司の皿が流れてくると、目の前でピタリと止まった。
「これが……」
「スシ……」
全員の前に並ぶ皿。
緑茶を入れ終えてから、次は寿司の食べ方実践編に突入する。
「まずこれが箸だ。こいつを使って寿司を食う。そしてこいつが寿司に使う調味料のしょうゆ。こいつを上にたらりと垂らして、そのまま箸で食うのがジャパニーズトラディショナルスタイルってやつだ」
そういって容器の上部についているポンプをプッシュしながら、しょうゆをネタの上にかけていく。
「……あ、ちなみにルルの寿司は肉だから醤油をかけずにそのままいってくれ」
「なんでですか、私にもしょうゆかけてください!」
「このしょうゆは、魚ネタを食べるものにしか許されていないんだ……」
「残念です。それを知っていれば、私も勇気を出して魚を頼んだのに……」
本気で悔しがっているルルを尻目に、食事の用意が整う。
三人は慣れない箸に手間取りながら寿司をなんとか口の中に入れ……
「「「美味しい(です)!!」」」
と、満面の笑みを浮かべるのだった。
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