表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サモン・タイム!~勇者と七人の道連れを添えて~  作者: 鰐鯨
なにがどうして異世界生活
23/23

ヒザン村にて 6


 山賊の女の方はレクシー、男の方はグレイソンというらしい。

 ちょうど服やらなにやら、身なりを変えられるものまで盗んであったのは都合がよかった。

 適当に見繕った服を着させると、山賊から村人に職業変更(ジョブチェンジ)したように見た目の印象が変わる。


 レクシーは少し癖のある桃色のセミロングヘアを後ろ頭で結んでいる。

 目付きが悪いため引っかかる部分はあるものの、引き締まっていながらも中々グラマラスな体型だ。

 大変けしからんです。好き。

 村娘感のあるスカートを穿いたためか、ワイルドな山賊衣装時より大人しい印象になった。

 俺のような男なら簡単に釣れる程度の容姿だし、情報集めには適した人物だろう。


 グレイソンは細身だが背が高い。髪はブロンドで短髪。顔立ちもまぁ、普通。特色がない。

 村人というか農家の人間っぽい服装になったせいか、麦わら帽子でも被せたら似合いそうな……。

 いや想像したらなんか案山子っぽくなるな。

 容姿が並みって点はともかく、背丈が無駄にでかいせいで悪目立ちする。

 あんまり探らせるような斥候任務には向いてないかもしれないが、選り好みは出来ない。


 二人の身なりを褒めるようにさりげないボディタッチをしつつ。


 盗賊(シーフ)の固有能力(アビリティ)『盗賊の極意』より、技能(スキル)目印(マーキング)』を使用。


 『アイアンブラッド』内じゃあ気になった場所、人物などを指定して場所を記憶するための探索系技能(スキル)だ。

 ダンジョン内で迷わないようにする、仲間とはぐれないようにする手段としても使うが……討伐対象(ターゲット)として記憶するために使うこともよくある。


 そんな技能(スキル)をこの二名にも使っておく。

 これでこいつらがどこにいてもいる方向などは判別出来るはずだ。


 二人から視線を外し、顔を思い浮かべると光が差すような感覚を覚えた。

 その方向へ向くと山賊コンビがいる。

 なんとなくの使用感を確認もできた。『目印(マーキング)』はしっかり機能しているようだな。


 俺を裏切ったなら、絶対に逃がしはしない。必ず仕留める。

 まぁ、これは余計な情報だ。こいつらに教える必要はない。


 さて、こいつらには俺に代わって情報収集に勤しんでもらう予定だ。

 戦闘までは望んでいない。あくまでも情報集めを中心にしてもらう。


 探らせるにしてもインターネットやテレビ、ラジオのある世界じゃない。

 自分たちで見聞きして情報を集めなければいけないわけで、当然移動する範囲も馬鹿広い。

 ひいては各地へスムーズに移動するための裏道を模索する必要があるだろう。


 普通に関所を通って国境を渡らせるのも手だが、その場合は通行税やらで金がかかるし頻繁な出入りは目に付いて危険視されかねない。


 身分を偽っていけばどうだ?

 例えば商人のように移動する職業なら不審には思われにくいだろう。

 とはいえ、バチバチに各地で戦争してる国に入るわけだから、当然入国審査はあるし厳しいものだろう。


 疑わしきは罰せられる。なら疑われないレベルにすればいい、が……。

 商人に扮するとしてだ。

 聞かれたことに詰まらず答えさせるには、金勘定から商品知識、何を扱いどこで仕入れ誰に販売するのを目的とするのか、までは当然覚えなきゃいけないよな。


 うん、無理だ。

 そもそも商人でもない俺たちが一からそんな知識を身に着けるなんて出来るはずがない。

 よしんば出来てもどれだけ時間が掛かるやら。


 兵士に扮するのは?

 成功したとして、戦争中なのだから戦場に回されるかもしれない。却下。


 貴族に扮しては――絶対無理。


 お色気作戦、あるいは金で買収……俺なら引っかかる。

 金に埋もれながら美人なねーちゃんにたぶらかされたい人生だった。

 本音はともかく、この手だと関所に関わる人間を何人も買収しなきゃいけないし、何度も使える手でもない。

 どう考えても費用に対して結果が伴わないから論外。


 駄目だな。考えるほどに国境を正攻法で移動出来るビジョンが浮かばない。

 時間をかければ出来る手も増えるだろうが、魔術王国(ディザニア)強化人造体(おれたち)という手駒を得ている。

 ジヴァ帝国優勢の戦況をひっくり返される可能性がある中で、あまり呑気な手は打てない。


 ……クラウスとガウディールはやけにあっさりディザニアのために戦うことを承諾していた。

 恐らく、俺と同様に技能(スキル)の使い勝手をどこかしらで確認していたのだろう。

 問題なく戦えると判断したからこそ戦争への参加を受諾した。


 となれば、奴らが前線に出張ってくるのは遠くない未来だ。

 奴らが戦況を変える前に先んじて動ける体制を作っておきたいところだが。


 ん? 待てよ、そういえば! 熱血バカ(ガウディール)の暑苦しさで思い出した!

 

 誰にも気付かれずに国境を通り抜ける術を知ってそうな人間、いるぞ!

 出来れば関わりたくないけど! 背に腹は代えられない。


 思い出した途端、頭の奥でハッハッハァって高笑いが聞こえた気がする。

 あの人さらいの自由竜導教団(ヘクト・エルヴァーダ)とかいう連中なら裏道事情にも詳しいだろう。


 せっかく賜ったご尊布だ。入信希望と言えば潜入は出来るし、悪いようには扱われないはず。

 レクシーとグレイソンを送り込んで各地への抜け道ルートを探らせれば、ジヴァ帝国のみならず周辺国家への出入りも出来るようになるかもしれないな。


 エルヴァーダありきの空飛ぶ移動方法かもしれないが、そこは調教者(テイマー)の国。

 魔獣を操れる人間はそれなりの数いるはずだ。

 調教者(テイマー)を一人味方に引き込めれば問題はなくなる。


 この山賊二人のどちらかに調教者(テイマー)になってもらうってのも一つの手だが。

 それはおいおいの話だ。

 ともあれ、方向性としては一旦定まった。


「レクシーとグレイソン。一旦俺らは村に戻るが、ヒザン村にお前らを連れてはいけない。

捕まりたいなら着いてきてもいいけどな。

だから明日の朝にウロヴラに向かえ。『竜の巣』って宿屋があるはずだから、そこで落ち合おう。

今後のことはそこで話す」


「了解。でもさ、あたしらがあんたを裏切って逃げたらどうする?」


「そん時はそん時だ。俺にお前らを縛る力はねぇ。

とはいえ、裏切ったらもうお前らに容赦はしない。

俺に心が痛むような真似、させないよな?」


「怖いこと言いますねぇ。大丈夫ですよ、俺らは裏切ったりしませんて」


「不意打ちで殺しにかかった奴の台詞には()()があるな」


「いやいや、もう旦那を裏切ったりしません。多分ね?」


 グレイソンが自嘲気味に笑う。

 こいつ、まだ懲りてなさそうだ。


「はは、その通りさ。あんたは強い。それは嫌ってほどわかってるからね。

従う以上はあんたがボスだ。で、ボス。ひとまず活動資金が欲しいんだけど?」


 レクシーが手を差し出す。

 図太い女だ。でもそういうところも嫌いじゃない。フォーリンラブ。


 俺は頂いた――もとい報酬として貰った金を分けてやった。

 取り分は減るが、金は目的じゃなく手段だ。

 失うんじゃなくこいつらに投資すると思えばそこまで心苦しいわけじゃあない。

 でもその分の価値は見せてもらわないとな。


 その日は船の中で一泊過ごした。

 そして翌日の朝、山賊組が先に出発してウロヴラに、俺とシェシェらは山賊の奪った持っていける範囲の盗品を持ってヒザン村へと向かう。


 同じほどの時間がかかり、日が高くなった頃にようやくヒザン村へと戻ることが出来た。

 持ち帰ってきた盗品をおっさん(ゴーラン)に渡すと満足そうに頷いて褒めてくれる。


「おお! おめぇってやつは大したもんだ! いや、最近の若い奴は根性が足らんと思っていたが……お前さんのようなやつがいてくれて俺は嬉しいぜ!」


「ふふん、もっと褒めてもいいんダヨ!」


 ド馬鹿(シェシェ)が大威張りしている。

 確かに荷物運び程度はしてたけど、こいつが誇らしげにしてるのなんか腹立つんだよな……。


 あとホネコ、ホネミ、ホネリーヌが互いに抱き合い泣いているような素振りを見せる。

 少し離れて戻ってきただけで大げさな……。

 というか一々演技が激しいんだよなぁ。こいつら生前に演劇同好会にでも入ってたの?


「おかえりダリオ! 大丈夫だった?」


 ただいまフラン。

「かわいい、好き」


「へぇっ!?」


 照れたように顔を赤くするフランシス。

 この顔は万病に効く。

 じゃなくて、しまった。つい本音が。


「驚いたか? ただいま」


「もう、急にからかわないでよ!」


 少し照れ臭そうにそっぽを向くフランシス。

 癒される。ド馬鹿(シェシェ)と同じ生き物だとは思えない。

 あいつも見た目は良いはずなのに性格でマイナスに振り切れてるんだよなぁ。


「そういや、連れてった山賊共はどうしたんだ?」


「実はですね、ゴーランさん。どうも血の匂いに惹かれた魔獣に襲撃されまして。

あいつらのアジトに押し寄せてきた際に……その……」


「確かに、戦闘後だったからな。獣に好まれる香水はたっぷり染み付いてたろうよ。

まぁ、連中も散々好きにやってきたんだ。報いを受けたのさ。お前さんが気に病むこたぁねぇよ」


「それだけではなく、奴らのアジトもその際に破壊されてしまって……」


「え、そんなことあ――へぶっ!?」


 俺の裏拳が会話に入ろうとしてきたド馬鹿(シェシェ)の頭にクリーンヒットする。


「おっと、ごめんねシェシェ。手が当たっちゃったみたいだ」


 笑顔の圧で黙っていろと伝えると、ド馬鹿(シェシェ)がおでこを抑えながらこくりと頷いた。


 俺はおっさん(ゴーラン)に奴らのアジトが洞窟で、魔獣の襲撃で崩落を起こして外に運び出しておいた盗品しか持ってこれなかった、もうアジトの原型はなくなってしまったなど適当に報告する。

 幸いにもおっさん(ゴーラン)はその話を信用してくれた。


 ……あの山賊のアジトはいざという時の隠れ蓑程度にはなるかもしれないし、なによりあの構造。

 さすがに機械的、魔術的なことはわからないが、魔術塔(ゼノア)を作った技術の系譜であれば調べる価値が大いにある。


 技術が同じものなら魔術塔(ゼノア)を介さず元の世界に戻る手段が見つかるかもしれない。

 まぁ、あの技術を解明できる知恵者の力を借りる必要はあるがそれはおいおいで良いだろう。


 今は点を集める時だ。可能性を感じるものはひとまず抱えておこう。

 いずれ線を描いた時、それが形になるかもしれないしな。


「今回はお前さんらが来てくれて助かった。また何かあれば頼らせてくれ」


「ええ、またなにかあれば依頼を出してください」


 今回の依頼達成の証をゴーランから貰い、休憩もほどほどに俺達はヒザン村を後にする。

 並んで歩きながら、仕事が終わった解放感と達成感に浸った。


「いやー、大変だったネ!」


「そうだねぇ。よく生きてたよ私……」


「フランも頑張ってたヨ! あれは将来が楽しみダネ!」


「本当? そう言ってくれると嬉しいよ」


 女子組が笑っている。それを見て骸骨(スケルトン)共も心なしか楽しそう――。


 じゃねぇよ!!

「じゃねぇよ!!」


「ん?」

「急にでっかい声出さないでヨ! びっくりするヨ!」


「おい、ド馬鹿(シェシェ)。お前なんで仲間面して普通に一緒に帰ろうとしてんだ?」


「私、仲間でショ?」


「山賊退治まではな? そういう話だったろ」


「つれないこと言わないでヨ! 私たちもう熱い魂で繋がった兄弟(ブラザー)じゃないかヨ!」


「勝手に兄弟にすんじゃねぇ!」


「まぁまぁ、ダリオ。いいんじゃない? 仲間は多い方が楽しいよ、きっと」


 そうは言うけどな、こいつろくでもないぞ。

「可愛い上に天使かよフランシス」


「て、天使?」


「あ、すまん。つい本音が被って。まぁ、放っておいたらなにするかわかったもんじゃないしな。

わかったよ。ただし、お前が食う分の飯代はお前の自腹だ。それでいいな?」


「…………うん」


「納得を感じられない」


「あのネ、ダリオ」


「なんだ?」


「働いて返すので給料前借及び借金の制度を要求します。

どうしようもない時だけどうにか肩代わりしてくださいお願いします」


「なんで飯の話の時だけそんな本気になれるんだお前……」


「ひもじいのは嫌ダヨー!! お願いダヨ!!」


「わかったよ、譲歩してやる! ただし限度額は決めるからな!」


 ふてぶてしくも付いてくることになってしまったシェシェも含めて、ホネ三体にバンディ、山賊コンビにフランシスと中々大所帯になってきた。

 さて、ひとまず生活基盤を整えつつ、山賊コンビに情報を集めさせて今後の行動を決めていくとしよう。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ